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#31 永遠と庸子と零 ―Yoko meets Ray―
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「何って……見たまんまを言っただけよ永遠」
「確かにヨーコさんは素敵だけど……」
じじとの衝撃的な邂逅を果たしたヨーコさんに、更なる試練が課せられる。ごめんねヨーコさん、じじの娘だからこうなの、許してね。
心の中で平謝りする私に、何か思い出したように彼女は私に耳打ちする。
「ねぇ……確か永遠さん、一人っ子って言ってなかった? こんな綺麗なお姉さんがいたなんて。どうして隠してたの?」
「お、お姉さん?」
「あらっ? ……えぇ、私が永遠の姉で、神代零です。よろしくね、ヨーコちゃん」
「って、何言ってるの!?」
「だって永遠のお姉ちゃんだもの、ご挨拶するのは当たり前でしょ?」
……はぁ。ちょっと悪ふざけがすぎてるよママ。
「ヨーコさんごめんね。あのね、この人はお姉ちゃんじゃなくて……ママなの」
「へえぇそうなんだ……って、ママ!?」
「ふざけてごめんなさいねヨーコちゃん……改めまして。永遠の母歴17年! 零です! てへっ」
ほんとママには呆れてしまう。けど、こうだからツナやコーちゃんとも仲良しなのかもだけど。そんなママを見て、半ば魅了されたような顔を浮かべるヨーコさん。まるで餌を欲しがる錦鯉の如くパクパクしてるんですけど……大丈夫?
【ぅゎぁ……なんてかっこいいお母様……っ……オ、オカアサマ……?】
あらら、ヨーコさん心の声が漏れちゃってる? ってあれ……? 目がぐるんぐるんしてる!? も、もしかして『再起動』!?
「オ、オカアサマデシタカ……エェ、アマリニモオワカイノデオドロキマシタ……コノジアンニテキセツナタイオウヲトルタメ、シンキノウパッチヲアテタウエ、サイキドウヲカイシシマス……」
「ん? ヨーコちゃんってアンドロイドか何かなの?」
「あーーーーもう!!」
✳︎ ✳︎ ✳︎
ようやく再起動したヨーコさん。前と違うのは『新機能パッチ』を充てた? から、少し時間がかかったことだ。
完全に動かなくなった彼女をママと二人がかりで抱きかかえ、まさに今、リビングのテーブルに座らせたところ。
しばしの時間が経過して、自我を取り戻したヨーコさんは恥ずかしそうに、それでも『クラス委員モード』に移行して、その口を開いた。
「……申し訳ありません、取り乱してしまいました。改めて私、永遠さんのクラスメイトでお友達に――」
それをママは手をパンパンと叩いて制止する。
「はいはい、もう堅苦しい挨拶は抜き。せっかく来てくれたんだから、私としては寛いでほしいかなぁ。じゃないと、ヨーコちゃんの綺麗なお顔が見れないじゃない?」
「っ! き、綺麗だなんてそんな……」
「ママ! もういい加減にして! ヨーコさんも気にしないで、ね?」
ほんとに神代家の人たちはどうなってるんだ。すでにヨーコさんぐったりしちゃってる。今日、これから大丈夫なのかな……。
「さてとっ! じゃあママこれからお買い物してくるけど。ヨーコちゃん好き嫌いとかある?」
「いえ、特には」
「じゃあ好きな食べ物は?」
「……えっと」
ヨーコさん、そんな遠慮しなくていいんだよと背中を摩って促すと、ビクッと体を震わせて、
「……オムライス……です……」
「うんうんいいねオムライス。あ、だったらオムハヤシにしよっか? 久しぶりに」
「いいねママ! それにしよ。ヨーコさん、ママのオムハヤシ、すっごく美味しいんだよ? ツナもね、『神代風オムハヤシ』って呼んでて大好物なの。というか今では『神林』とか言ってるんだよ?」
「……はい、オムハヤシがいいです。ありがとうございますお母様「レイ」!」
やれやれといった表情を浮かべながらも、指を立ててママはその顔をグッと彼女に寄せる。
「『レイ』でいいわよヨーコちゃん」
「いいんですか? いきなりお名前でなんて……」
「もちろん! ツナちゃんなんか『レイちゃん』って呼んでるし。なんなら『レイちゃん』でも「ママ!」」
もうこれ以上ヨーコさんを困らせるわけにもいかないので、ぐいぐいとママの背中を押して買い物に出かけさせる。
「もう……じゃあ行ってくるけど、まずは汗を流してらっしゃい二人とも。着替えも用意してあるから」
「うん、わかったから。ママもはやく行ってきて!」
「はいはい、わかったわ。それとヨーコちゃん……永遠とお友達になってくれてありがとう」
と、それまでニコニコしてたママが真面目な顔で深々と頭を下げた。
「っ! い、いえ、こちらこそお友達になれて嬉しいです」
「よし! じゃあ行ってくるわね」
そう言って颯爽とママは出て行った。しかも、出かけ間際にヨーコさんに投げキッスとかしてるし。そんなママを二人して苦笑いで見送った。
「……はぁ。ほんっとにごめんねヨーコさん。ママがあんなので」
「ううん、気にしないで。きっと緊張してる私のこと、和ませようとしてくれたんだよ。でもレイさん、スラッとしてかっこいいね、すごく若く見えるし。レイさんっておいくつなの?」
「えっと、今年で35歳、だったかなぁ」
「え……えぇぇーっ! さ、35歳!? 若く見えるっていうか若いじゃない! と、いうことは……18歳で永遠さんを産んだ、ってこと?」
世間一般的には、35歳のママは珍しくともなんともないと思う。ただ『17歳の娘を持つ35歳のママ』というのは結構なレアケースだよね。ヨーコさんが驚くのも無理からぬこと。
「そういうことになるね……」
アハハハハって乾いた笑いが零れ落ちる。そんな私をよそに、きょろきょろぐるりと家の中を見回す彼女。なんか落ち着かない様子がありありとわかる。
「今気づいたんだけど……永遠さんのお家、ものすごく広くない?」
「あー……うん、確か200平米ってじじが言ってたけど……」
「……この前もそうだけど、永遠さんを知るたびに情報が大渋滞起こしちゃうね。……あ」
ちょうどヨーコさんのつま先にお掃除ロボットがこつんと当たる。この広い家を掃除するにはママと私だけじゃ大変だもん。なのでうちでは二つのお掃除ロボットが大活躍してるのだ。
「それより、一旦荷物を私の部屋に置いておくから、ヨーコさん先にシャワー浴びてきて。それからお昼、一緒に食べよ? 準備しておくから、ね?」
「え、えぇ、もう遠慮してもしょうがないっていうのが充分にわかったからお先にいただくね」
「うん! お風呂はこっちだよ?」
広い家、ましてや初めて訪れたヨーコさんはいささか不安を感じてるよね。そう思って彼女の手を握り、お風呂場へと案内する。
「じゃあごゆっくりどうぞ。あ、ヨーコさんのタオルと着替えは右側に置いてある方ね」
「うん、ありがとう永遠さん。さっぱりしてくるね」
……さて! まずはお昼のハンバーガーと冷たいお茶、準備しなきゃ!
「確かにヨーコさんは素敵だけど……」
じじとの衝撃的な邂逅を果たしたヨーコさんに、更なる試練が課せられる。ごめんねヨーコさん、じじの娘だからこうなの、許してね。
心の中で平謝りする私に、何か思い出したように彼女は私に耳打ちする。
「ねぇ……確か永遠さん、一人っ子って言ってなかった? こんな綺麗なお姉さんがいたなんて。どうして隠してたの?」
「お、お姉さん?」
「あらっ? ……えぇ、私が永遠の姉で、神代零です。よろしくね、ヨーコちゃん」
「って、何言ってるの!?」
「だって永遠のお姉ちゃんだもの、ご挨拶するのは当たり前でしょ?」
……はぁ。ちょっと悪ふざけがすぎてるよママ。
「ヨーコさんごめんね。あのね、この人はお姉ちゃんじゃなくて……ママなの」
「へえぇそうなんだ……って、ママ!?」
「ふざけてごめんなさいねヨーコちゃん……改めまして。永遠の母歴17年! 零です! てへっ」
ほんとママには呆れてしまう。けど、こうだからツナやコーちゃんとも仲良しなのかもだけど。そんなママを見て、半ば魅了されたような顔を浮かべるヨーコさん。まるで餌を欲しがる錦鯉の如くパクパクしてるんですけど……大丈夫?
【ぅゎぁ……なんてかっこいいお母様……っ……オ、オカアサマ……?】
あらら、ヨーコさん心の声が漏れちゃってる? ってあれ……? 目がぐるんぐるんしてる!? も、もしかして『再起動』!?
「オ、オカアサマデシタカ……エェ、アマリニモオワカイノデオドロキマシタ……コノジアンニテキセツナタイオウヲトルタメ、シンキノウパッチヲアテタウエ、サイキドウヲカイシシマス……」
「ん? ヨーコちゃんってアンドロイドか何かなの?」
「あーーーーもう!!」
✳︎ ✳︎ ✳︎
ようやく再起動したヨーコさん。前と違うのは『新機能パッチ』を充てた? から、少し時間がかかったことだ。
完全に動かなくなった彼女をママと二人がかりで抱きかかえ、まさに今、リビングのテーブルに座らせたところ。
しばしの時間が経過して、自我を取り戻したヨーコさんは恥ずかしそうに、それでも『クラス委員モード』に移行して、その口を開いた。
「……申し訳ありません、取り乱してしまいました。改めて私、永遠さんのクラスメイトでお友達に――」
それをママは手をパンパンと叩いて制止する。
「はいはい、もう堅苦しい挨拶は抜き。せっかく来てくれたんだから、私としては寛いでほしいかなぁ。じゃないと、ヨーコちゃんの綺麗なお顔が見れないじゃない?」
「っ! き、綺麗だなんてそんな……」
「ママ! もういい加減にして! ヨーコさんも気にしないで、ね?」
ほんとに神代家の人たちはどうなってるんだ。すでにヨーコさんぐったりしちゃってる。今日、これから大丈夫なのかな……。
「さてとっ! じゃあママこれからお買い物してくるけど。ヨーコちゃん好き嫌いとかある?」
「いえ、特には」
「じゃあ好きな食べ物は?」
「……えっと」
ヨーコさん、そんな遠慮しなくていいんだよと背中を摩って促すと、ビクッと体を震わせて、
「……オムライス……です……」
「うんうんいいねオムライス。あ、だったらオムハヤシにしよっか? 久しぶりに」
「いいねママ! それにしよ。ヨーコさん、ママのオムハヤシ、すっごく美味しいんだよ? ツナもね、『神代風オムハヤシ』って呼んでて大好物なの。というか今では『神林』とか言ってるんだよ?」
「……はい、オムハヤシがいいです。ありがとうございますお母様「レイ」!」
やれやれといった表情を浮かべながらも、指を立ててママはその顔をグッと彼女に寄せる。
「『レイ』でいいわよヨーコちゃん」
「いいんですか? いきなりお名前でなんて……」
「もちろん! ツナちゃんなんか『レイちゃん』って呼んでるし。なんなら『レイちゃん』でも「ママ!」」
もうこれ以上ヨーコさんを困らせるわけにもいかないので、ぐいぐいとママの背中を押して買い物に出かけさせる。
「もう……じゃあ行ってくるけど、まずは汗を流してらっしゃい二人とも。着替えも用意してあるから」
「うん、わかったから。ママもはやく行ってきて!」
「はいはい、わかったわ。それとヨーコちゃん……永遠とお友達になってくれてありがとう」
と、それまでニコニコしてたママが真面目な顔で深々と頭を下げた。
「っ! い、いえ、こちらこそお友達になれて嬉しいです」
「よし! じゃあ行ってくるわね」
そう言って颯爽とママは出て行った。しかも、出かけ間際にヨーコさんに投げキッスとかしてるし。そんなママを二人して苦笑いで見送った。
「……はぁ。ほんっとにごめんねヨーコさん。ママがあんなので」
「ううん、気にしないで。きっと緊張してる私のこと、和ませようとしてくれたんだよ。でもレイさん、スラッとしてかっこいいね、すごく若く見えるし。レイさんっておいくつなの?」
「えっと、今年で35歳、だったかなぁ」
「え……えぇぇーっ! さ、35歳!? 若く見えるっていうか若いじゃない! と、いうことは……18歳で永遠さんを産んだ、ってこと?」
世間一般的には、35歳のママは珍しくともなんともないと思う。ただ『17歳の娘を持つ35歳のママ』というのは結構なレアケースだよね。ヨーコさんが驚くのも無理からぬこと。
「そういうことになるね……」
アハハハハって乾いた笑いが零れ落ちる。そんな私をよそに、きょろきょろぐるりと家の中を見回す彼女。なんか落ち着かない様子がありありとわかる。
「今気づいたんだけど……永遠さんのお家、ものすごく広くない?」
「あー……うん、確か200平米ってじじが言ってたけど……」
「……この前もそうだけど、永遠さんを知るたびに情報が大渋滞起こしちゃうね。……あ」
ちょうどヨーコさんのつま先にお掃除ロボットがこつんと当たる。この広い家を掃除するにはママと私だけじゃ大変だもん。なのでうちでは二つのお掃除ロボットが大活躍してるのだ。
「それより、一旦荷物を私の部屋に置いておくから、ヨーコさん先にシャワー浴びてきて。それからお昼、一緒に食べよ? 準備しておくから、ね?」
「え、えぇ、もう遠慮してもしょうがないっていうのが充分にわかったからお先にいただくね」
「うん! お風呂はこっちだよ?」
広い家、ましてや初めて訪れたヨーコさんはいささか不安を感じてるよね。そう思って彼女の手を握り、お風呂場へと案内する。
「じゃあごゆっくりどうぞ。あ、ヨーコさんのタオルと着替えは右側に置いてある方ね」
「うん、ありがとう永遠さん。さっぱりしてくるね」
……さて! まずはお昼のハンバーガーと冷たいお茶、準備しなきゃ!
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