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神の呪いを人々は祝福と呼んだ(神の悲しい過去)

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神は昔、神殿に隣接している孤児院に訪れた少女が子供たちと無邪気に遊んでいる姿に一目惚れした。
少女は神が守っているリレリアス王国の王女だった。

神はその少女に妻になって欲しかった。
神託を出すことも考えたが、それでは短くしか伝えられない。だから自分の気持ちを手紙に綴ることにした。

その心が伝わったのか、天界に来て結婚した王女は「あんなにも想ってくださりありがとうございます。光栄です」と笑顔を浮かべた。

妻を信じ切っていた神は自分の息子が《不義の子》である事実をその子が亡くなるまで疑ったことがなかった。
神の血が半分入っているにも関わらず寿命が短すぎることに絶望した神が子の魂に介入したことで判明したのだ。
もう既に恨む相手もいない神は《リレリアス直系王族は代々同じ色の髪と目が受け継がれる》という呪いをかけた。


 ◇


それから一世紀以上が経ち、金髪碧眼は王家の象徴となった。代々の皇帝やその子共は皆、同じ色をしていた。
神の心など知るよしもない人々はこれを《祝福》と呼び感激した。


神は数え切れないほどの年月存在し人々を見守ってきたが、そばに誰かがいることを考えたことがなかった。
孤独なんて感情はなかった。
しかし神は人間の、他者という、家族という存在の温かさを知ってしまった。
耐えられないほどの辛さに襲われ苦しんだ。
金髪碧眼。愛した妻と息子の色を選んだのはその血が流れる同じ色の子孫を見続けたかったのかもしれない。


 ◇


あれから何百年も経った。

金髪碧眼の王子がかわいらしいお願いを神にしてきた。
神は息子に何処か似たその子の恋を応援することにした。
なにをどうしたらいいのか、恋愛がわからない神は悩んだ。
王女のことだって、自分の立場を利用して愛を囁かせていただけだと気づいてしまったから。

そうして《相手の本当の気持ちは聞いてみないとわからない、見ただけで決めるでない》とお告げをすることにした。
王女から好意を感じて勘違いしていたのだ。
見るだけで気持ちを決めつけてしまった。

忙しい王子はなかなか神殿に来なかったから、たまたま来たその婚約者に伝えておいた。

それから、婚約者の少女はそれからは恥ずかしがりながらも愛の言葉を口にし、相手の気持ちもがんばって確認をした。
二人が初々しすぎていまいち伝わってないような気もしてやきもきしたこともあるが、神は気を長くして見守り続けた。

紆余曲折あったもののうまくいった後、仲睦まじい二人を微笑ましく思いながらその幸せが末長く続くよう願いを込めて祝福を授けた。
【《健康》寿命を延ばせる】...ささやかそうにみえて大きな贈り物を———。



[後書き]
神の話はあと2話くらい続きます。
その後、聖女ヘレネの話や、神の家族のその後の話に移ろうと思います!
神は物語に結構関わってきます。
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