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第二章・アイゼンリウト騒乱編
第59話 冒険者、反撃の狼煙をあげる。その頃城の入り口では
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王は苦々しい表情を浮かべながら息を整える。今は王が自分で選んだ通り城の上は曇っていても世界は朝。夜のような回復力は望めない。イーリスもアリスもそれがあるからこそ無理をさせたくなかった。だがこのまま行ければ押しきれるのではないか?
俺はそう考え確実に倒すべく、アリスに支えられながら目を閉じ深呼吸して短時間により回復するよう集中する。
王の誤算は色々あるだろう。王自身の問題としては慢心が一番大きい。こちらに対する値踏みが甘かったと思う。
俺の誤算としては、思ったほど俺の体力が上がっていなかった。嬉しい誤算はダンディスさんとリードルシュさんの戦果だ。以前の光景が目に焼き付いていて自分で背負い過ぎてしまったが、二人の経歴を考えれば俺に劣る筈は無い。二人が目覚めてくれたお陰でじわりじわりと王には響いていった。
俺は体力が無いとは言え、力と魔力は一般人よりも僅かに高い。王の太刀筋やクセを見抜く為に完全に受けに徹し、自らの体力を削りながら王を消耗させ魔族へ変身させるまでに至った。
そして魔族へ変身すれば全てが総合的に上がる代わりに、エネルギーを消費した筈だ。幾ら生贄を吸収したとは言え、無尽蔵では無いからこそ蓄えるべく吸収した訳で。
王はそれに気付いているかどうか解らない。恐らく初めて変身したんじゃないかな。加減も解らずただ大きな力やスピードを使っているように思えたから。
持て余し悪戯に体力を消耗し、ダンディスさんとリードルシュさんの早さによる攪乱と攻撃により更にそれは加速度的になっていった。まさに効果的な戦い方だ。
「クソォ雑魚共め……」
王はついにダンディスさんとリードルシュさんを見失い始める。確かに一撃喰らえば終わりだが、当たらなければ良いだけの話。二人はそれを可能にしていた。
だがそんな素晴らしい二人にも限界が近付いている。俺は戦況を冷静に把握しながら自分の体の確認をする。内臓の痛みは取れないものの息は整った。二人から貰った魔力で体は動く。
「アリス、イーリス有難う。そろそろ」
「いってらっしゃい!」
「ご武運を」
二人は俺に肩を貸して立たせるとそう言って送り出してくれた。恐らくこれがラストの攻撃になる。消滅させてしまえば蘇りはしないだろう。切り札を使うタイミングを計る為に、もう少し掻きまわす必要がある。そう決めて黒隕剣を握りしめ、王の前へ進む。
・
「くぉらぁあああ!」
その頃城の入口では、ビッドとビルゴそしてリムンが骸骨兵や魔族相手に戦い、三人のコンビネーションはなんとか完成していた。今はビッドが奮戦しており、魔族や骸骨兵を粉砕している。
「お父、元気だった?」
「ああ……いや元気では無かったな」
ビッドからみて親子は少しずつ会話が出来るようになっていた。ぎこちなさは残っているものの。ビルゴはお前が居なかったから元気では無かった、と言いたかっただろう。だが置いて行った自分が、そんな言葉を口にする権利はないと自重しているようだった。
ビルゴは思う。恐らくあの冒険者の言う通りだろう。自分は死にかけては居たが死んではいなかった。王や魔族の良い様に利用されたにすぎない。それでも妻が蘇ると言われれば、それにすがる他なかった。貧しくとも幸せだったあの頃に戻れると、可能性が少しでもあればと。
だが現実は当たり前のようにそれを否定した。今ある幸せを、娘を置き去りにするのではなく父親として娘を幸せにしてやる、それこそが大事だと気付かせてくれた。
「アタチならもう大丈夫だから。おっちゃん良い人だのよ」
「そうか」
ビルゴとしてはそう言われると、少し悲しくなった。置き去りにした父としては当たり前の罰だろうとも思った。リムンの姿をみるとあの冒険者の影がちらつく。その影響で今の娘がある。娘も手助けを経て一人で歩いている。それは父がいなくても大丈夫だと言われた気がして何とも言えない気持ちにまたなる。
だがそれでも少しくらい取り返したくて、挽回の機会と考え戦いに馳せ参じた。娘を守り通す、そうビルゴは自らに気合を入れ直した。
「では行ってくる」
「いってらっしゃい! お父!」
明るい声が背中を強く押してくれる。この言葉だけで万騎に値する。例えキリが無くとも、その果てまで潰しつくす。覚悟がビルゴをより強くした。
「ビッド交代だ」
「あ、兄者」
「娘を頼む」
ビッドからハンマーを貰い、ビルゴは魔族と骸骨兵を駆逐する。その様を見ると一体どちらが悪役なのか分からなくなるほど凄まじい暴れようで、ビッドは唖然としてしまう。
「ビッドのおっちゃん、少し休んでも良いだのよ?」
ビッドは恐怖からではない、少しずつ心を開いてくれた小さな姪のもじもじした姿と声に、感激した。こんな情けない自分を認めてくれた。許してくれた。少しでも。それだけで涙が出る。
ビッドは振り向かずにいた。涙を見せなくない。だが肩が震えていたのでばれやすい。
「だ、大丈夫だ。それより魔力と体力をしっかりと回復してくれ」
「うん、もう大丈夫だのよ。二人とも無理しないでね」
ビッドはその言葉だけで十分だった。今までの借りを、罪を償うのにその言葉があれば例え地獄の王ですら叩きつぶして見せる。そう誓えるほどに。
ビッドとビルゴの連携により、リムンは一度結界を張ったきり出番が無かった。本当はコウの元へ駆け付けたいが、そうもいかない。父と叔父が自分の為に戦ってくれているのが解るから、いつでも二人をフォローできるようにしつつミレーユに渡された本を読む。
まだ使えない魔術も、いつか冒険の旅に出た時に使えるようになりたい。そう、この戦いが終われば、私達は旅に出る。冒険の旅に。
そうリムンが期待に胸を膨らませながら、本を読んでいると轟音と共に凄まじい爆風が起こる。少し吹き飛ばされたが、影に護られる。父と叔父が護ってくれたのだ。
「何が起こったんだ!?」
「気を付けろ……!」
俺はそう考え確実に倒すべく、アリスに支えられながら目を閉じ深呼吸して短時間により回復するよう集中する。
王の誤算は色々あるだろう。王自身の問題としては慢心が一番大きい。こちらに対する値踏みが甘かったと思う。
俺の誤算としては、思ったほど俺の体力が上がっていなかった。嬉しい誤算はダンディスさんとリードルシュさんの戦果だ。以前の光景が目に焼き付いていて自分で背負い過ぎてしまったが、二人の経歴を考えれば俺に劣る筈は無い。二人が目覚めてくれたお陰でじわりじわりと王には響いていった。
俺は体力が無いとは言え、力と魔力は一般人よりも僅かに高い。王の太刀筋やクセを見抜く為に完全に受けに徹し、自らの体力を削りながら王を消耗させ魔族へ変身させるまでに至った。
そして魔族へ変身すれば全てが総合的に上がる代わりに、エネルギーを消費した筈だ。幾ら生贄を吸収したとは言え、無尽蔵では無いからこそ蓄えるべく吸収した訳で。
王はそれに気付いているかどうか解らない。恐らく初めて変身したんじゃないかな。加減も解らずただ大きな力やスピードを使っているように思えたから。
持て余し悪戯に体力を消耗し、ダンディスさんとリードルシュさんの早さによる攪乱と攻撃により更にそれは加速度的になっていった。まさに効果的な戦い方だ。
「クソォ雑魚共め……」
王はついにダンディスさんとリードルシュさんを見失い始める。確かに一撃喰らえば終わりだが、当たらなければ良いだけの話。二人はそれを可能にしていた。
だがそんな素晴らしい二人にも限界が近付いている。俺は戦況を冷静に把握しながら自分の体の確認をする。内臓の痛みは取れないものの息は整った。二人から貰った魔力で体は動く。
「アリス、イーリス有難う。そろそろ」
「いってらっしゃい!」
「ご武運を」
二人は俺に肩を貸して立たせるとそう言って送り出してくれた。恐らくこれがラストの攻撃になる。消滅させてしまえば蘇りはしないだろう。切り札を使うタイミングを計る為に、もう少し掻きまわす必要がある。そう決めて黒隕剣を握りしめ、王の前へ進む。
・
「くぉらぁあああ!」
その頃城の入口では、ビッドとビルゴそしてリムンが骸骨兵や魔族相手に戦い、三人のコンビネーションはなんとか完成していた。今はビッドが奮戦しており、魔族や骸骨兵を粉砕している。
「お父、元気だった?」
「ああ……いや元気では無かったな」
ビッドからみて親子は少しずつ会話が出来るようになっていた。ぎこちなさは残っているものの。ビルゴはお前が居なかったから元気では無かった、と言いたかっただろう。だが置いて行った自分が、そんな言葉を口にする権利はないと自重しているようだった。
ビルゴは思う。恐らくあの冒険者の言う通りだろう。自分は死にかけては居たが死んではいなかった。王や魔族の良い様に利用されたにすぎない。それでも妻が蘇ると言われれば、それにすがる他なかった。貧しくとも幸せだったあの頃に戻れると、可能性が少しでもあればと。
だが現実は当たり前のようにそれを否定した。今ある幸せを、娘を置き去りにするのではなく父親として娘を幸せにしてやる、それこそが大事だと気付かせてくれた。
「アタチならもう大丈夫だから。おっちゃん良い人だのよ」
「そうか」
ビルゴとしてはそう言われると、少し悲しくなった。置き去りにした父としては当たり前の罰だろうとも思った。リムンの姿をみるとあの冒険者の影がちらつく。その影響で今の娘がある。娘も手助けを経て一人で歩いている。それは父がいなくても大丈夫だと言われた気がして何とも言えない気持ちにまたなる。
だがそれでも少しくらい取り返したくて、挽回の機会と考え戦いに馳せ参じた。娘を守り通す、そうビルゴは自らに気合を入れ直した。
「では行ってくる」
「いってらっしゃい! お父!」
明るい声が背中を強く押してくれる。この言葉だけで万騎に値する。例えキリが無くとも、その果てまで潰しつくす。覚悟がビルゴをより強くした。
「ビッド交代だ」
「あ、兄者」
「娘を頼む」
ビッドからハンマーを貰い、ビルゴは魔族と骸骨兵を駆逐する。その様を見ると一体どちらが悪役なのか分からなくなるほど凄まじい暴れようで、ビッドは唖然としてしまう。
「ビッドのおっちゃん、少し休んでも良いだのよ?」
ビッドは恐怖からではない、少しずつ心を開いてくれた小さな姪のもじもじした姿と声に、感激した。こんな情けない自分を認めてくれた。許してくれた。少しでも。それだけで涙が出る。
ビッドは振り向かずにいた。涙を見せなくない。だが肩が震えていたのでばれやすい。
「だ、大丈夫だ。それより魔力と体力をしっかりと回復してくれ」
「うん、もう大丈夫だのよ。二人とも無理しないでね」
ビッドはその言葉だけで十分だった。今までの借りを、罪を償うのにその言葉があれば例え地獄の王ですら叩きつぶして見せる。そう誓えるほどに。
ビッドとビルゴの連携により、リムンは一度結界を張ったきり出番が無かった。本当はコウの元へ駆け付けたいが、そうもいかない。父と叔父が自分の為に戦ってくれているのが解るから、いつでも二人をフォローできるようにしつつミレーユに渡された本を読む。
まだ使えない魔術も、いつか冒険の旅に出た時に使えるようになりたい。そう、この戦いが終われば、私達は旅に出る。冒険の旅に。
そうリムンが期待に胸を膨らませながら、本を読んでいると轟音と共に凄まじい爆風が起こる。少し吹き飛ばされたが、影に護られる。父と叔父が護ってくれたのだ。
「何が起こったんだ!?」
「気を付けろ……!」
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