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第二章・アイゼンリウト騒乱編
第31話 冒険者、嬉しい助っ人と鎧を得る
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「コウ殿」
俺はビッドのうきうきした姿を見て微笑み席を立つと、姫が俺の前に来て改まって片膝をつき、右掌を左胸にあてて頭を下げた。
「ちょっ、姫!」
「どうか貴方様のお力をお貸しください」
「解ったって。俺は俺たちを放っておいてくれたらそれでいいんだから。さっさと解決してしまおう」
「有り難き幸せ。貴殿の心の広さの前には我が心の何と狭き事」
畏まり過ぎだよ幾ら何でも。俺はむず痒くなったので姫を立たせてビッドと共に三人で城を出た。
宰相は特別任務と言うていにしてお供達には別の仕事を指示した。お供の中に何かが居るかもしれないという判断は流石だ。
その配慮を無駄にしないよう俺たちは素早く城を出る。追手が来るかもしれないが森などに入ってしまえばこっちのもの。撒いてしまえば良い。
「おっと旦那方、そんな急いで何処へ行くのかな? 肉を仕入れるならウチにしておきなよ! 安くしとくぜ?」
「何を言ってるんだ全く……しかしそんな軽装で物事にあたるとは、軽率だなコウ」
俺とビッド、そして姫が城から出て門をを潜り城下を急いで通り過ぎようとした時、不意にとても懐かしい声が耳に届いた。
俺はまさかと思い足を止めて声の主を探していると、この町の隣り合った肉屋と武器屋の前を見て駆けだし、二人の手を取った。
「ダンティスさん! リードルシュさん!」
「いやはやまさかこんな事になるなんてな」
「全くだ。いつの間にかこんな大事に係わる事になっているとは。流石俺が剣を託した奴だけの事はある」
リードルシュさんは正面から見えるくらいの大きさのリュックを背負い、青白い布のシャツのスラックス、剣を腰に差しマントを付け革靴を履いていた。
ダンティスさんは皮の鎧を着て初めて会った時に持っていた包丁を、二本背中交差させるようにして背負っていた。
まさか宰相の言っていた助っ人と言うのはこの二人何だろうか。だとすれば何故アイゼンリウト人であり宰相の知人でもある人が隣の国の住民に……。
「成り行きでこんな状況になってしまいました。お二人は何故ここに?」
「正体をばらすのがこんなに早いとは、流石の俺の獣の勘も働かなかったよ」
「俺は武器屋に変わりは無いがな。アグニスと先代の王の剣を鍛えた縁があって、平穏の為に情報をくれてやっただけだ」
ダンディスさんは詳しくは教えてくれなかったものの、隣の国を混乱に陥れる為に居るとは思えないし、あのリードルシュさんが友人とする人だから今は敢えて問わないでおこう。ファニー以外でこの世界に来てから最初に気持ちの良いやり取りをした人だし、俺も疑いたくはない。
「二人が力を貸してくれるなら百人力です!」
嬉しさのあまり大きめの声でそう言うと、ダンティスさんとリードルシュさんは顔を見合わせ笑った。それに対して気恥ずかしくなり俺は後頭部を擦り誤魔化すように笑う。
「そんならその期待に応えさせてもらうしかないねぇ」
「だな。これで役に立たなければこんな国にわざわざ来た甲斐もないからな」
「有難う御座います!」
俺は本当に嬉しかった。意外ではあったが、この世界に来て人として挨拶や必要事項以外で初めてやり取りした人たちだったから、余計にそう思うのだろう。
「コウ、その二人は?」
「コウ殿、宜しければご紹介を」
ビッドとイリア姫も急に足を止めて別方向に走った俺を遠くで見ていたが、警戒しながら近くに来てそう言った。
「ご挨拶が遅れました。私はアイゼンリウトの元軍人ダンティスと申します。姫君、そしてドラフトの剛戦士殿、以後お見知りおきを」
ダンティスさんは敬礼しつつ挨拶した。肉屋のダンティスさんとはまた違う顔を見て驚く。まさかこの国の元軍人だったとは……だから宰相の助っ人なのかと納得した。
「俺はリードルシュだ。姫とは小さい頃に会った覚えがある。見知りおかんでも構わない。俺はコウのお抱え鍛冶屋だからな。雇い主がくたばると食いっぱぐれるので助太刀に来たにすぎない」
リードルシュさんはそっけなく挨拶するも、最後の方は冗談めかして言っていた。
「リードルシュさんそれは?」
姫とビッドがダンティスさんとリードルシュさん、それぞれと握手を交わした後、俺はリードルシュさんが背負っていたリュックに目が行って尋ねた。
「おいおい忘れたのか?お前に前に言ったものを持って来てやったのだ」
嬉しそうに微笑みながらリュックを下ろし中のものを出すと、それは黒くツヤのある鎧だった。
「お前用にあつらえた鎧だ。剣と良く合う」
そう言うと鎧をばらして俺の体に付けてくれた。リードルシュさんらしい、無骨ながらもシンプルで余計な飾りのない動きやすい鎧だった。
「籠手と肩に胸、腰回りに脛と膝に足の甲を保護するプレートという構成だ。軽鎧の部類に入るが、材質は重鎧を凌駕する」
「え!? それはまたエライ値が張りそうな感じが……」
「当たり前だ。剣と良く合う素材に粗末なものを使えるか。剣と素材は少し違うが、ミスリルと隕鉄の混合で出来ている。値が付けられん」
リードルシュさんは腕を組んだまま胸を張った。それは困った。そんな代金を今は支払えない。
「リードルシュ殿。その請求書は私に下さい。コウ殿の身に付けるものなら是非」
姫は俺とリードルシュさんの間に割って入ってきた。有り難いけど後が怖そうだ。
「姫よ、これは俺とコウとの契約だ。俺はこいつの為だけに心血を注いだのであって、お前達王族にでは無い。それに代金を払うと言ってもそれは民の税でだろう? それを良しとする男ではあるまいこいつは」
「勿論」
俺も胸を張って言った。こうなったらクエストをガンガンこなさないとな。その為にもこの件を早く解決しなくては。
「おい、時間は惜しいんだ。さっさと行こうぜ!」
「いやそれは良いけどビッドさん、アンタその布の服とスラックスだけで行く気か?」
「あ」
ダンティスさんのツッコミにビッドは間抜けた声を出して一同笑いに包まれた。
その後俺達は武器屋に立ち寄り、ビッドさんに会う軽鎧とハンマーを手に入れ、道具屋で薬草や毒消しなどの回復剤を手に入れた。こうして準備が整い、俺達はファニーと会った洞窟の近辺へと向かう。
俺はビッドのうきうきした姿を見て微笑み席を立つと、姫が俺の前に来て改まって片膝をつき、右掌を左胸にあてて頭を下げた。
「ちょっ、姫!」
「どうか貴方様のお力をお貸しください」
「解ったって。俺は俺たちを放っておいてくれたらそれでいいんだから。さっさと解決してしまおう」
「有り難き幸せ。貴殿の心の広さの前には我が心の何と狭き事」
畏まり過ぎだよ幾ら何でも。俺はむず痒くなったので姫を立たせてビッドと共に三人で城を出た。
宰相は特別任務と言うていにしてお供達には別の仕事を指示した。お供の中に何かが居るかもしれないという判断は流石だ。
その配慮を無駄にしないよう俺たちは素早く城を出る。追手が来るかもしれないが森などに入ってしまえばこっちのもの。撒いてしまえば良い。
「おっと旦那方、そんな急いで何処へ行くのかな? 肉を仕入れるならウチにしておきなよ! 安くしとくぜ?」
「何を言ってるんだ全く……しかしそんな軽装で物事にあたるとは、軽率だなコウ」
俺とビッド、そして姫が城から出て門をを潜り城下を急いで通り過ぎようとした時、不意にとても懐かしい声が耳に届いた。
俺はまさかと思い足を止めて声の主を探していると、この町の隣り合った肉屋と武器屋の前を見て駆けだし、二人の手を取った。
「ダンティスさん! リードルシュさん!」
「いやはやまさかこんな事になるなんてな」
「全くだ。いつの間にかこんな大事に係わる事になっているとは。流石俺が剣を託した奴だけの事はある」
リードルシュさんは正面から見えるくらいの大きさのリュックを背負い、青白い布のシャツのスラックス、剣を腰に差しマントを付け革靴を履いていた。
ダンティスさんは皮の鎧を着て初めて会った時に持っていた包丁を、二本背中交差させるようにして背負っていた。
まさか宰相の言っていた助っ人と言うのはこの二人何だろうか。だとすれば何故アイゼンリウト人であり宰相の知人でもある人が隣の国の住民に……。
「成り行きでこんな状況になってしまいました。お二人は何故ここに?」
「正体をばらすのがこんなに早いとは、流石の俺の獣の勘も働かなかったよ」
「俺は武器屋に変わりは無いがな。アグニスと先代の王の剣を鍛えた縁があって、平穏の為に情報をくれてやっただけだ」
ダンディスさんは詳しくは教えてくれなかったものの、隣の国を混乱に陥れる為に居るとは思えないし、あのリードルシュさんが友人とする人だから今は敢えて問わないでおこう。ファニー以外でこの世界に来てから最初に気持ちの良いやり取りをした人だし、俺も疑いたくはない。
「二人が力を貸してくれるなら百人力です!」
嬉しさのあまり大きめの声でそう言うと、ダンティスさんとリードルシュさんは顔を見合わせ笑った。それに対して気恥ずかしくなり俺は後頭部を擦り誤魔化すように笑う。
「そんならその期待に応えさせてもらうしかないねぇ」
「だな。これで役に立たなければこんな国にわざわざ来た甲斐もないからな」
「有難う御座います!」
俺は本当に嬉しかった。意外ではあったが、この世界に来て人として挨拶や必要事項以外で初めてやり取りした人たちだったから、余計にそう思うのだろう。
「コウ、その二人は?」
「コウ殿、宜しければご紹介を」
ビッドとイリア姫も急に足を止めて別方向に走った俺を遠くで見ていたが、警戒しながら近くに来てそう言った。
「ご挨拶が遅れました。私はアイゼンリウトの元軍人ダンティスと申します。姫君、そしてドラフトの剛戦士殿、以後お見知りおきを」
ダンティスさんは敬礼しつつ挨拶した。肉屋のダンティスさんとはまた違う顔を見て驚く。まさかこの国の元軍人だったとは……だから宰相の助っ人なのかと納得した。
「俺はリードルシュだ。姫とは小さい頃に会った覚えがある。見知りおかんでも構わない。俺はコウのお抱え鍛冶屋だからな。雇い主がくたばると食いっぱぐれるので助太刀に来たにすぎない」
リードルシュさんはそっけなく挨拶するも、最後の方は冗談めかして言っていた。
「リードルシュさんそれは?」
姫とビッドがダンティスさんとリードルシュさん、それぞれと握手を交わした後、俺はリードルシュさんが背負っていたリュックに目が行って尋ねた。
「おいおい忘れたのか?お前に前に言ったものを持って来てやったのだ」
嬉しそうに微笑みながらリュックを下ろし中のものを出すと、それは黒くツヤのある鎧だった。
「お前用にあつらえた鎧だ。剣と良く合う」
そう言うと鎧をばらして俺の体に付けてくれた。リードルシュさんらしい、無骨ながらもシンプルで余計な飾りのない動きやすい鎧だった。
「籠手と肩に胸、腰回りに脛と膝に足の甲を保護するプレートという構成だ。軽鎧の部類に入るが、材質は重鎧を凌駕する」
「え!? それはまたエライ値が張りそうな感じが……」
「当たり前だ。剣と良く合う素材に粗末なものを使えるか。剣と素材は少し違うが、ミスリルと隕鉄の混合で出来ている。値が付けられん」
リードルシュさんは腕を組んだまま胸を張った。それは困った。そんな代金を今は支払えない。
「リードルシュ殿。その請求書は私に下さい。コウ殿の身に付けるものなら是非」
姫は俺とリードルシュさんの間に割って入ってきた。有り難いけど後が怖そうだ。
「姫よ、これは俺とコウとの契約だ。俺はこいつの為だけに心血を注いだのであって、お前達王族にでは無い。それに代金を払うと言ってもそれは民の税でだろう? それを良しとする男ではあるまいこいつは」
「勿論」
俺も胸を張って言った。こうなったらクエストをガンガンこなさないとな。その為にもこの件を早く解決しなくては。
「おい、時間は惜しいんだ。さっさと行こうぜ!」
「いやそれは良いけどビッドさん、アンタその布の服とスラックスだけで行く気か?」
「あ」
ダンティスさんのツッコミにビッドは間抜けた声を出して一同笑いに包まれた。
その後俺達は武器屋に立ち寄り、ビッドさんに会う軽鎧とハンマーを手に入れ、道具屋で薬草や毒消しなどの回復剤を手に入れた。こうして準備が整い、俺達はファニーと会った洞窟の近辺へと向かう。
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