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第二章・アイゼンリウト騒乱編
第28話 おっさん、解り易い悪役と会う
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「なるほど。貴方と逢ったのも天啓かもしれん」
「じゃあ!」
「ああ、貴方と共に国を建て直す覚悟を私は決めた」
「え!?」
あれおかしい。今聞き違えたか?
「え!?ではない。私にあれだけ言って決意させたのだ。責任は取ってもらおう」
「えー!?」
どういうことだ。俺は姫が自分で国を建て直すのが必要だと言った。俺の目的は俺に係わるなとも言った。どこをどう取ると俺も国を建て直すってことになるんだ!? 理解出来ない。
「理解出来ない」
呆然として思わず口に出てしまった。
「理解出来なくともしてもらおう。貴方が係わるなと言うなら、そうなれるようあの国をどうにかせねばならない。貴方が言ったように。そして私は貴方の言葉で覚悟を決めた。焚きつけたのは貴方だ。納得いったかな」
「いくか!」
「貴殿は私より年長者だ。知恵を貸して頂きたい。国を、私が愛した国を助けてほしい」
そう言うと姫は片膝を付いて胸に手を置き頭を下げた。
やっちまったなぁ……えらい状況になった。姫の言う事には一理ある。
俺が言ったんだから当然だ。問われもしないのに勝手に喋って勝手に解決策を提示した。
と言うか姫みたいに色々国の内情を見て来て政治も知ってる人が、引きこもりのおっさんである俺の話をジッッッとほぼ何も言わずに聞いていたのが可笑しいと気付くべきだった、明らかに酔ってたよ俺恥ずかしい!
語るに落ちるというのはこういう事を言うのだろうか……。参った。穴があったら入りたい……。
俺は姫達と共に国を建て直すという大事業に加担する羽目になった。姫はせっかちな性分らしく今直ぐと言って聞かないのでそのまま連行されてしまう。
これ向こうに付いたらまたどっかに幽閉されるとか無いだろうな、と疑いながらもファニーを護る為にも行くしかないと改めて覚悟を決めて同行する。
馬に空きが無い為、俺は姫と一緒にビッドは兵士と一緒に乗る流れになった。女性と一緒に乗るって言うのは気恥ずかしいし何より俺が手綱を握っても酷い目に遭う展開しか思い浮かばない。
「いだだだだ」
馬なんて乗るのも初めてなので乗り方が分からないと言う前に姫が強引に俺を前に乗せて走りだしていた。馬のリズムに合わせて腰を浮かせばいい、という有難いアドバイスを頂いたがそうすんなりは行かない。もう一人の同行者であるビッドは逆に鎧のお供を前に乗せて馬を上手く操り羨ましい限りだ。
そして途中で言われて驚いたがこの強行軍は昼夜を掛けて首都を目指すと言う。今更抗議も出来ずそのまま進んで行き、夜も明け昼になったところでうとうとし始めたが、馬のリズムとズレた時の突き上げで目を覚ましてしまい、結局修正出来ず何度も繰り返した。中々都合良くは全部が行かないものだ。
「ついたぞ」
姫の声が背後から掛かり、寝ぼけ眼をこすりながら前を見る。そこは俺が引き摺られ、閉じ込められていた所とは少し違うように見えた。
「ここが我が国アイゼンリウトの首都であるアイルだ」
そう告げられ眠たさと疲れから頷くと、姫は馬を進めて街へ入る。すると多くの住民たちから
「イリア姫ー!」
「舞踏姫バンザーイ!」
という声援が沸き起こった。凄い人気だな。これならすんなりと国を纏められるんじゃないか? と思うほどだ。
大きな門をくぐり、姫に支えられながら馬を下りてその奥の更に大きな門をくぐって中に入るとそこに現れたのは巨大な城だ。うとうとしながら夢現で入って来たけど遠くから見たらさぞかし威圧感のある城に見えるだろう。
何しろ振り返った町並みは全て見下ろす様にあるからだ。立派な城を構えているだけでなく、何処から攻められても攻めにくいように敢えて傾斜の上の方に立てたんだろと言うのが分かる。
そして兵士も町中よりも城の周りにくまなく配備している辺り、抜け目ないと言うか常に緊張感がありそうだ。
白の真下にある大きな門の前で馬を降り、更にビッドたちだけ入り口近くで待たせて姫と俺は更に奥にある部屋へと向かう。王様の部屋は頂上にあるんじゃないのかと聞くとその日によって違うらしい。とても用心深い王様なのかな。
「イリアよ、よくぞ戻った」
奥の扉をその扉の両脇に居た兵士が開けると豪華な装飾で彩られた室内の一番奥に立派な椅子に座り、豪華な冠とローブを着た老人がいた。サンタクロースの人相を悪くしたような感じだ。
「父上、ただいま戻りました」
「うむ……それが罪人か?」
一礼した後傅いたイリア姫は立派な椅子に座る老人を父上と呼んだ、つまりこの国の王様であろう人物は、汚物を見るような表情と声で俺を罪人と呼んだ。子供かコイツはと思ったが姫は表情一つ変えず
「いいえ父上。これは軍師です。この国を改革する為の」
言い放つ。俺はそれを横で聞いて目が覚めた。え!? この姫どこまで脳筋なの!? 竜を崇めて生贄をささげて安泰を望むのが大勢が占める中で、改革するなんて事を改革を一番望んでいなさそうな王の前でわざわざ披露するなんて、と混乱してしまう。
「じゃあ!」
「ああ、貴方と共に国を建て直す覚悟を私は決めた」
「え!?」
あれおかしい。今聞き違えたか?
「え!?ではない。私にあれだけ言って決意させたのだ。責任は取ってもらおう」
「えー!?」
どういうことだ。俺は姫が自分で国を建て直すのが必要だと言った。俺の目的は俺に係わるなとも言った。どこをどう取ると俺も国を建て直すってことになるんだ!? 理解出来ない。
「理解出来ない」
呆然として思わず口に出てしまった。
「理解出来なくともしてもらおう。貴方が係わるなと言うなら、そうなれるようあの国をどうにかせねばならない。貴方が言ったように。そして私は貴方の言葉で覚悟を決めた。焚きつけたのは貴方だ。納得いったかな」
「いくか!」
「貴殿は私より年長者だ。知恵を貸して頂きたい。国を、私が愛した国を助けてほしい」
そう言うと姫は片膝を付いて胸に手を置き頭を下げた。
やっちまったなぁ……えらい状況になった。姫の言う事には一理ある。
俺が言ったんだから当然だ。問われもしないのに勝手に喋って勝手に解決策を提示した。
と言うか姫みたいに色々国の内情を見て来て政治も知ってる人が、引きこもりのおっさんである俺の話をジッッッとほぼ何も言わずに聞いていたのが可笑しいと気付くべきだった、明らかに酔ってたよ俺恥ずかしい!
語るに落ちるというのはこういう事を言うのだろうか……。参った。穴があったら入りたい……。
俺は姫達と共に国を建て直すという大事業に加担する羽目になった。姫はせっかちな性分らしく今直ぐと言って聞かないのでそのまま連行されてしまう。
これ向こうに付いたらまたどっかに幽閉されるとか無いだろうな、と疑いながらもファニーを護る為にも行くしかないと改めて覚悟を決めて同行する。
馬に空きが無い為、俺は姫と一緒にビッドは兵士と一緒に乗る流れになった。女性と一緒に乗るって言うのは気恥ずかしいし何より俺が手綱を握っても酷い目に遭う展開しか思い浮かばない。
「いだだだだ」
馬なんて乗るのも初めてなので乗り方が分からないと言う前に姫が強引に俺を前に乗せて走りだしていた。馬のリズムに合わせて腰を浮かせばいい、という有難いアドバイスを頂いたがそうすんなりは行かない。もう一人の同行者であるビッドは逆に鎧のお供を前に乗せて馬を上手く操り羨ましい限りだ。
そして途中で言われて驚いたがこの強行軍は昼夜を掛けて首都を目指すと言う。今更抗議も出来ずそのまま進んで行き、夜も明け昼になったところでうとうとし始めたが、馬のリズムとズレた時の突き上げで目を覚ましてしまい、結局修正出来ず何度も繰り返した。中々都合良くは全部が行かないものだ。
「ついたぞ」
姫の声が背後から掛かり、寝ぼけ眼をこすりながら前を見る。そこは俺が引き摺られ、閉じ込められていた所とは少し違うように見えた。
「ここが我が国アイゼンリウトの首都であるアイルだ」
そう告げられ眠たさと疲れから頷くと、姫は馬を進めて街へ入る。すると多くの住民たちから
「イリア姫ー!」
「舞踏姫バンザーイ!」
という声援が沸き起こった。凄い人気だな。これならすんなりと国を纏められるんじゃないか? と思うほどだ。
大きな門をくぐり、姫に支えられながら馬を下りてその奥の更に大きな門をくぐって中に入るとそこに現れたのは巨大な城だ。うとうとしながら夢現で入って来たけど遠くから見たらさぞかし威圧感のある城に見えるだろう。
何しろ振り返った町並みは全て見下ろす様にあるからだ。立派な城を構えているだけでなく、何処から攻められても攻めにくいように敢えて傾斜の上の方に立てたんだろと言うのが分かる。
そして兵士も町中よりも城の周りにくまなく配備している辺り、抜け目ないと言うか常に緊張感がありそうだ。
白の真下にある大きな門の前で馬を降り、更にビッドたちだけ入り口近くで待たせて姫と俺は更に奥にある部屋へと向かう。王様の部屋は頂上にあるんじゃないのかと聞くとその日によって違うらしい。とても用心深い王様なのかな。
「イリアよ、よくぞ戻った」
奥の扉をその扉の両脇に居た兵士が開けると豪華な装飾で彩られた室内の一番奥に立派な椅子に座り、豪華な冠とローブを着た老人がいた。サンタクロースの人相を悪くしたような感じだ。
「父上、ただいま戻りました」
「うむ……それが罪人か?」
一礼した後傅いたイリア姫は立派な椅子に座る老人を父上と呼んだ、つまりこの国の王様であろう人物は、汚物を見るような表情と声で俺を罪人と呼んだ。子供かコイツはと思ったが姫は表情一つ変えず
「いいえ父上。これは軍師です。この国を改革する為の」
言い放つ。俺はそれを横で聞いて目が覚めた。え!? この姫どこまで脳筋なの!? 竜を崇めて生贄をささげて安泰を望むのが大勢が占める中で、改革するなんて事を改革を一番望んでいなさそうな王の前でわざわざ披露するなんて、と混乱してしまう。
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