57 / 69
相良仁、異世界へ転職!
必殺技修得!
しおりを挟む
更に体を捻り落ちる先を見ると何と町まで来てしまった。その上この方向は不味いぞ! うちの宿のお風呂場、しかも女性専用の所に突っ込んでしまう! 傍からみたらラッキースケベかと思うんだろうが、そっから先を考えたら気まずくてやってられん!
「ぐぎぎ!」
歯を食いしばりさっき師匠がやっていた動作を一か八かで真似てみる。やるしかない! 自分の尊厳を護る為にも女湯になんて突っ込めるか! 失敗したら骨折程度で済むかどうか分からないが背に腹は代えられない!
「行くぞ! 風神拳!」
師匠と同じような動作、そして覆気の集約をし放つ。突き出した右拳から気と共に風が巻き起こり屋根にぶち当たる……が、上手く行ったのもそこまで。微風程度で減速したものの、厳しい鍛錬が終わったばかりで気力も体力もあっという間に限界を迎えてしまう。
「キャアアアアアア!」
屋根に突っ込み破壊しそのまま落下。複数の女性の悲鳴を湯舟の中で聞きながら、幸い裸を見たりは一切してないので意識を取り戻したら謝罪と賠償をキチンと行おう、そう考えながら意識を失った。
「起きた?」
目を開けるとそこは真っ白な天井で宿屋ではないのは分かる。俺の顔を覗き込んでいるのはベアトリスで異世界から元の世界に帰ったりもしていないようだ。どうやらまだこの世界で用があるらしい。ベアトリスと会話しようと体を起こそうとするも全く動かない。
「ジン殿、残念ながら一日は安静にしててください。貴方が幾ら頑強でも無理だ。普通の人なら全治一か月は硬いのに」
「まぁアタイたちの御蔭でもあるから感謝しなさい!」
いや君たちのお父さんの御蔭でこんな目に遭ってるんだけどね、と言いたいところだが口も動かせない。何でもかなり酷いダメージを負っていたらしいが、ティーオ司祭たちの教会まで運び魔法によって治癒をしてギリギリセーフだったらしい。何してんだあの人! 必殺技修得する前に死ぬところだったじゃないか!
「こんな時に更に残念な話をしなくてはならないのですが、私たちの憶測通り村と連絡が途絶えました。ですがそれは昨日からです。事態が悪化するにはまだ時間が掛かると思われます」
「良かったな! ジン。お前の鍛錬が無駄にならないぞ!」
全然良くない。鍛錬の成果は他で生かされるだろうし、平和になるなら今回の件では無駄になるのが一番良い。戦わないのが一番! と言いたいが瞼が自然と降りて来て体の力が抜けていく。翌朝までガッツリ眠り続けた結果、体も動かせ喋れるまでに回復し声を上げて喜ぶ。
どうやら寝ていたのは教会内の医療棟にある入院部屋だったようだ。ティーオ司祭とシスターの診察を受けオッケーが出たので一緒に教会に移動し朝食を頂く。
「いやぁ災難でしたなジン殿」
「本ッッ当にね。吹っ飛ばされるのはまだしも意識を失ってなかったら覗き魔として糾弾されるところだったんですけど!」
スープを一口頂いてからそう抗議すると、二人は視線を逸らす。何故だ……まさか!?
「我々も一応弁明はしたんですけどね」
「お父ちゃまもう帰っちゃったし」
いやいやいや可笑しいでしょ! 覗き魔が天井突き破って湯舟に落ちて気絶するとかギャグですら可笑しいって! 俺の抗議を他所に二人は食事を終えるまで視線を逸らし続けた。最悪だ……宗教は俺を救ってはくれなかったっ!
そのまま無言で朝食を終えてから、乾かしてくれていた装備一式を受け取り身に着ける。笑顔で手を振る司祭とシスターを睨み付けてから教会を後にした。だが足取りは重い。このまま町長のところに出頭した方が良いのだろうか……ベアトリス、そしてサガやカノンの前で逮捕される訳にはいかないからやはり自ら出頭した方が良いだろう。情状酌量もあるに違いない、何もしてないけど!
「す、すいません……」
覗く意図など皆無だったが状況は最悪だ。少しでも説明し事態を改善すべく自ら町長の家にいつもより時間が掛かったが到着する。門兵の人たちは慌てて中へ入って行った。恐らく凄い騒ぎになっただろうから、知らない訳が無いよな……肩を落としながらジッと待っていると、町長が慌ててこちらに来た。
暫く太陽は拝めないだろうなと覚悟を決めて両手を差し出す。町長と兵士の人はそれを見て首を傾げる。自ら罪状を口にせねばならないと思い、例の女湯の一件で来ましたと言うと爆笑された。何が可笑しいのだろうか、何も可笑しくない。
「いやぁすまんすまん。流石に下に窓が幾つもあるのに屋根を突き破って覗きをする意味が分からん。何より屋根には上り辛いように細工を施してあって屋根を這って移動と言うのも無理がある。それに気絶してたら覗き出来んしな。器物破損なら修繕すれば良いだけだし、お前の師であるゲンシ・ノガミ殿から事情は聴いている」
それを聞いて膝から崩れ落ちる。あんのアホ兄妹……からかいやがったな! いや何時もからかわれてる気がするからいつも通りか、って言ってる場合か! 抗議しに行くしかない!
「ぐぎぎ!」
歯を食いしばりさっき師匠がやっていた動作を一か八かで真似てみる。やるしかない! 自分の尊厳を護る為にも女湯になんて突っ込めるか! 失敗したら骨折程度で済むかどうか分からないが背に腹は代えられない!
「行くぞ! 風神拳!」
師匠と同じような動作、そして覆気の集約をし放つ。突き出した右拳から気と共に風が巻き起こり屋根にぶち当たる……が、上手く行ったのもそこまで。微風程度で減速したものの、厳しい鍛錬が終わったばかりで気力も体力もあっという間に限界を迎えてしまう。
「キャアアアアアア!」
屋根に突っ込み破壊しそのまま落下。複数の女性の悲鳴を湯舟の中で聞きながら、幸い裸を見たりは一切してないので意識を取り戻したら謝罪と賠償をキチンと行おう、そう考えながら意識を失った。
「起きた?」
目を開けるとそこは真っ白な天井で宿屋ではないのは分かる。俺の顔を覗き込んでいるのはベアトリスで異世界から元の世界に帰ったりもしていないようだ。どうやらまだこの世界で用があるらしい。ベアトリスと会話しようと体を起こそうとするも全く動かない。
「ジン殿、残念ながら一日は安静にしててください。貴方が幾ら頑強でも無理だ。普通の人なら全治一か月は硬いのに」
「まぁアタイたちの御蔭でもあるから感謝しなさい!」
いや君たちのお父さんの御蔭でこんな目に遭ってるんだけどね、と言いたいところだが口も動かせない。何でもかなり酷いダメージを負っていたらしいが、ティーオ司祭たちの教会まで運び魔法によって治癒をしてギリギリセーフだったらしい。何してんだあの人! 必殺技修得する前に死ぬところだったじゃないか!
「こんな時に更に残念な話をしなくてはならないのですが、私たちの憶測通り村と連絡が途絶えました。ですがそれは昨日からです。事態が悪化するにはまだ時間が掛かると思われます」
「良かったな! ジン。お前の鍛錬が無駄にならないぞ!」
全然良くない。鍛錬の成果は他で生かされるだろうし、平和になるなら今回の件では無駄になるのが一番良い。戦わないのが一番! と言いたいが瞼が自然と降りて来て体の力が抜けていく。翌朝までガッツリ眠り続けた結果、体も動かせ喋れるまでに回復し声を上げて喜ぶ。
どうやら寝ていたのは教会内の医療棟にある入院部屋だったようだ。ティーオ司祭とシスターの診察を受けオッケーが出たので一緒に教会に移動し朝食を頂く。
「いやぁ災難でしたなジン殿」
「本ッッ当にね。吹っ飛ばされるのはまだしも意識を失ってなかったら覗き魔として糾弾されるところだったんですけど!」
スープを一口頂いてからそう抗議すると、二人は視線を逸らす。何故だ……まさか!?
「我々も一応弁明はしたんですけどね」
「お父ちゃまもう帰っちゃったし」
いやいやいや可笑しいでしょ! 覗き魔が天井突き破って湯舟に落ちて気絶するとかギャグですら可笑しいって! 俺の抗議を他所に二人は食事を終えるまで視線を逸らし続けた。最悪だ……宗教は俺を救ってはくれなかったっ!
そのまま無言で朝食を終えてから、乾かしてくれていた装備一式を受け取り身に着ける。笑顔で手を振る司祭とシスターを睨み付けてから教会を後にした。だが足取りは重い。このまま町長のところに出頭した方が良いのだろうか……ベアトリス、そしてサガやカノンの前で逮捕される訳にはいかないからやはり自ら出頭した方が良いだろう。情状酌量もあるに違いない、何もしてないけど!
「す、すいません……」
覗く意図など皆無だったが状況は最悪だ。少しでも説明し事態を改善すべく自ら町長の家にいつもより時間が掛かったが到着する。門兵の人たちは慌てて中へ入って行った。恐らく凄い騒ぎになっただろうから、知らない訳が無いよな……肩を落としながらジッと待っていると、町長が慌ててこちらに来た。
暫く太陽は拝めないだろうなと覚悟を決めて両手を差し出す。町長と兵士の人はそれを見て首を傾げる。自ら罪状を口にせねばならないと思い、例の女湯の一件で来ましたと言うと爆笑された。何が可笑しいのだろうか、何も可笑しくない。
「いやぁすまんすまん。流石に下に窓が幾つもあるのに屋根を突き破って覗きをする意味が分からん。何より屋根には上り辛いように細工を施してあって屋根を這って移動と言うのも無理がある。それに気絶してたら覗き出来んしな。器物破損なら修繕すれば良いだけだし、お前の師であるゲンシ・ノガミ殿から事情は聴いている」
それを聞いて膝から崩れ落ちる。あんのアホ兄妹……からかいやがったな! いや何時もからかわれてる気がするからいつも通りか、って言ってる場合か! 抗議しに行くしかない!
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる