異世界営生物語

田島久護

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相良仁、異世界へ転職!

繋がり始める点

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ベアトリスが俺の仲間だって知ってたにしても、これじゃあ自警団なんて名ばかりの盗賊団じゃないか。団長を助けるなら直接襲撃するか一緒に攻撃していたら捕まらず逃げられたかもしれないのに。

開けた場所で誰かに見られる可能性を考えなかったりする点も含めて、この人が指揮を執ってないと荒くれ者の集団だと疑われても仕方ないような動きを容易にする。そんな人たちと一緒に居るアリーザさんは一体どういう存在なのだろうか。

あの人も村に居るのだからこの国出身では無いだろうと言うのは分かる。最初に町長の奥様と出会った時の件や防具屋の親父さんから荷物を持って行くよう頼まれた件を合わせると、アリーザさんがただ国を出て村に来た人間で無いのも分かる。

魔法の霧を利用して団長が俺を狙って来たのを考えると、まさか暗闇の夜明けの一員なのか? いや、落ち着け俺! それより今は先ずベアトリスを助けないと駄目だろう!

「ベアトリスをどうする気だ? こんな状況でそんな真似をすればお前たちも危ないんじゃないのか?」
「お前が団長を人質にとっているからだ」

 明らかにベアトリスを人質にしたのはそれ以前だろうに、と俺は呆れて溜息を吐きながら視線を落とす。すると小さな影が動いているのを見つけた。恐らくシシリーが何か仕掛けようとしてくれていると考え、直ぐに動けるよう準備をしておく。

「お、お前たち気を付けろ! 何か居るぞ!」

 団長は藻掻きながら仲間に警告する。それを聞いた兵士たちは周囲を警戒し見回した瞬間、シシリーが兵士の一人をチクリと刺した。兵士が小さな悲鳴を上げると得物を抜いたので俺は団長の足を掴んだまま兵士たちに叩き付ける。

突然の出来事に混乱し斬り払おうとした兵士を他の兵士が抑えた隙に、ベアトリスを人質に取っている兵士をシシリーが攻撃してくれた。兵士の掴んでいる手が緩んだ瞬間、ベアトリスは暴れて振り解きこちらに来てくれた。

「くっ糞っ!」
「お前たち俺を甘く見たな。これでも魔法を習得したんだ!」

「え!?」

 思い切り嘘なのだが、ベアトリスにシシリーまで自警団の団長や兵士と一緒になり驚きの声を上げてしまう。シシリーに誰も気づいて無いのでそれを利用し相手を何処かへ行かそうとしての発言なのだが、打合せしてないから仕方ない。ここはそのまま押し切る!

「そうだ。竜神教の教会に出入りしているのは知っているか!?」
「ま、まさか出入りしていたのはその為か!」

「シンラに対抗する為に身に着けた。俺の魔法はまだお前たちをチクリとしか刺せないが、その効果は何だか知りたいか?」

 ゴクリと唾を飲みこむ一同。シシリーは兎も角ベアトリスは一緒にならんで欲しいなと思いつつ、俺は怪しい顔をしながら団長の足首を掴みつつ、両掌を兵士に向けて円を描くように回し始めた。その様子に危機感を覚えたのか兵士の数人がじりじりと下がり出す。

「痛っ!?」
「く、糞ッ! 撤退だ!」

「ま、待て! 俺を置いて行くな!」

 団長を放置して兵士たちは逃げ出す。中々に薄情だなと思いつつ、あの自警団を支えているのはアリーザさんの存在なんじゃないかと思った。団長が絶対条件ならここで助けるし、ただの盗賊ならバラバラに逃げているだろうけど、一緒に素早く同じ方向に乱れず撤退して行ったのが盗賊には見えない。

となるとアリーザさんはやはり暗闇の夜明けの……

――愚かな――

「危ない!」

 シシリーは俺の背後に移動し何かを出してそれを防いでくれた。見ると氷の氷柱が落ちている。新しい魔法使いか!?

――その男を離せば見逃してやろう。だが離さぬのであれば隣の女を最初に始末する――

 今ベアトリスは手を縛られていて防ぎようがない。こちらは相手の姿は見えないが相手はこちらが見えている上に狙撃も出来る。となればここで無理して団長を確保しておくよりも安全第一だ。

「こっちの安全の保障は?」

――その男は足を怪我している。お前たちはその間に逃げれば良い――

「そっちは遠距離攻撃出来るだろ?」

――なら霧も晴らそう。それで他の人間もこちらが余計な真似をすれば視認できる――

「分かった」

 無駄に交渉を長引かせてもキレて団長共々殺されては堪らないし、交渉して来ると言う事は今直ぐこちらをどうこうしようと言う意思が無いと考え了承する。返事をしてから団長の足を離し、ゆっくりと警戒しながらその場を離れる。団長は傷めた足を引きずりながらこちらを見ずに急いで森に入った。こちらも急いで農家さんの家の陰に隠れ、ベアトリスの拘束を解いてから射線を切りつつ移動し一旦町へと引き返す。

途中でシシリーは森の家に戻ると言うので見送ってからギルドへ向かった。この件を報告すると直ぐに町長の家にと言われ向かって報告する。町長は一旦この件は預かるとだけ言い残し去っていった。ベアトリスと共に町長の家を後にし宿へと戻る。

 紋様を幾つか消したのでそれに対するアクションかと思ったが、自警団の団長まで出て来るとは。

不死鳥騎士団が消滅したのが、竜神教から離反したあの魔法使いたちの集団である暗闇の夜明けによるものだと聞いた。自警団は俺の背負っている不死鳥騎士団の盾を見て驚愕している。

今回の件ではベアトリスを縛ってまで人質にしたのも気になる。あの動きからしてただの盗賊ではないし、俺だけを確実に倒すなら団長と一緒になって霧を味方につけて森で袋叩きにした方が確実だ。それもせずにベアトリスを縛って数人で囲み外で待っていたのは、ベアトリスを攫おうとしていたんじゃないか?

「ベアトリス、ちょっと話があるんだけど」
「何?」

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