30 / 69
相良仁、異世界へ転職!
魔法使いとの遭遇戦
しおりを挟む
「町長からの依頼を解決する為の者をお貸しします。本来門外不出ですが事情が事情ですので」
「その代わり情報をお伝えすれば宜しいですか?」
「それで構いません。恐らくはシカたちが戻っていった方角で何かが行われている可能性がありますのでそちらを探して見ると良いでしょう。ベアトリスさんはあの調子だと動けないと思いますから、今のうちに探しに行くのが正解かもしれませんね。色々迷っているようですから」
ティーオ司祭の言葉に頷き二人でお茶を飲み干した後立ち上がり、司祭が本棚の一つを手前に引く。すると本棚が扉が開くような感じで動き壁に扉が現れる。そこを開けると教会の裏手の中庭に出た。司祭は空を見上げて周囲を確認してから中指と親指を口に銜え口笛を吹く。
少し間があってから左側に黒い点が現れ、こちらに飛んで来て司祭の頭の上に着地した。よく見ると小さな竜が乗っており、大きな丸い目で周囲をキョロキョロし始め俺を見つけると停止する。
「ティアム、今日は彼に付いて散歩しておいで」
「ぐあ」
そう言われると口を大きく開き答えてから俺の方へと飛んで来る。伝説の生き物である竜をこんな町中で見れるなんて驚きを隠せない。竜神教だから竜が沢山居るんだろうか。
「竜は基本的に一人しか子を成せません。ですがその代わりとても強力なんですよ? 人間がこの子を捕らえるのは不可能ですし、例え捕らえたとしても同族の竜に死ぬまで追い掛け回されるので普通はしません」
「大事な方じゃないんですか?」
「竜神教と言うくらいですからね。丁重に扱ってください」
「何に気を付ければ良いんですか!?」
「機嫌を損ねない様にして頂ければ。竜の子だからと侮ってはいけませんよ? とても賢いですから」
後頭部にしがみ付いたティアムが大きく頷いたようで頭に顎が当たって痛い。あまり遅くなると危ないからと司祭に送り出され、中庭の奥の出口から真っ直ぐ進んだ先にある山の方へと向かう。まだ夕方まで時間がある筈なのに、真っ直ぐ進むにつれて暗くなってきているような、そして肌寒さが増しているような感じがしていた。
段々と自分でも歩く速度が遅くなっていくのが分かる。野生の勘が働き先に進むのを躊躇わせているんだろうな……だが行かなければならない。この件を放置しては進めないし、引き返して放置すればベアトリスを始め多くの人が居なくなってしまう気がした。
知らない世界に着てやっと出来た繋がりだ。自分が進むことで皆との繋がりを保てるなら、例え危険を冒すとしても足を止める訳にはいかない。俺は覚悟を決めて怯えた速度を元に戻す。
「おやまぁ。警告したのに鈍感なのかにゃ?」
森の中に女性の声が木霊する。語尾ににゃってここメイドカフェか? 秋葉原のアトラクションなのか? と現実逃避してみたが、そんなものを掻き消す様に辺りが霧に包まれ始めた。呼吸をした瞬間、甘ったるい匂いがしたので急いで口と鼻を手で塞ぐ。
「可笑しい……香りは一瞬で即動きを止められる筈なのに動いている? お前何者にゃ?」
その言葉を聞いて答えるはずも無い。とは言えこのままでは相手の正体を見る前に息が止まってしまう。その前に距離を取らないと……幸い微風ではあるが風下ではなく風上に居るし、霧の広がりは遅いので教会までは行っていない筈だ。後は俺の息が抜けられるまで続くかどうか。
「最初ただの間抜けかと思ったが……人間は大変だけどジワジワ支配してやるにゃ!」
白い霧はピンク色が混じり出し濃くなっていく。俺は一か八かその場から全速力で移動する。霧は大分広がっていて走ってもまだ抜けない。息がしたくて肺が藻掻いているのが分かる。限界か……!?
「ぬあっ!」
最後は全力でダイブし霧から抜けられるよう祈りながら前転する。パワーが上がり肉体労働をこなし続けた結果、体力もアップしていたようで何とか霧の範囲から脱出成功した。直ぐに深呼吸して肺に酸素を送り込む。
「逃がさないにゃ」
覚悟を決めたので逃げる予定は無いが、少しは状況を改善しないと逃げるだけしか選択肢が無い。魔法が使えればこの霧を吹き飛ばしたり出来たんだろうが、無い場合は月並みながら肉体労働しか無いな。俺は覚悟を決めて霧の範囲を調べるべく走り始めた。
徐々に広がっているだけで霧は俺に向かって伸びてこない、となると術者はピンポイントでコントロールしたりは出来ないだろうから、中心地点に居るに違いない。ぐるりと走ってから急ブレーキを掛け直ぐに息を大きく吸い込んで真っ直ぐ突っ切る様に走り出す。
「あらまぁ無謀だにゃ魔法使いの領域に入って肉弾戦をしようなんて」
読み通り中心地点に居た。皮のジャケットに皮の胴鎧、膝まである白のスカートを履いたツインテールの少女が仁王立ちして杖を握っている。どうやらあれの先から霧は出ているようだ。俺は少女を直接攻撃せず、その杖目掛けて突っ込みながら盾を背中から下ろす。
「キャッ!」
杖を回転させ霧を増やし身を隠そうとしたが、俺は思い切り盾を振り回し杖の先に付いている水晶玉を強打した。少女は堪えようとしたが俺の力が予想以上に強く体が泳いだ挙句杖を手放した。俺はそれを思い切り蹴って走り去る。息がもう限界だった。
「その代わり情報をお伝えすれば宜しいですか?」
「それで構いません。恐らくはシカたちが戻っていった方角で何かが行われている可能性がありますのでそちらを探して見ると良いでしょう。ベアトリスさんはあの調子だと動けないと思いますから、今のうちに探しに行くのが正解かもしれませんね。色々迷っているようですから」
ティーオ司祭の言葉に頷き二人でお茶を飲み干した後立ち上がり、司祭が本棚の一つを手前に引く。すると本棚が扉が開くような感じで動き壁に扉が現れる。そこを開けると教会の裏手の中庭に出た。司祭は空を見上げて周囲を確認してから中指と親指を口に銜え口笛を吹く。
少し間があってから左側に黒い点が現れ、こちらに飛んで来て司祭の頭の上に着地した。よく見ると小さな竜が乗っており、大きな丸い目で周囲をキョロキョロし始め俺を見つけると停止する。
「ティアム、今日は彼に付いて散歩しておいで」
「ぐあ」
そう言われると口を大きく開き答えてから俺の方へと飛んで来る。伝説の生き物である竜をこんな町中で見れるなんて驚きを隠せない。竜神教だから竜が沢山居るんだろうか。
「竜は基本的に一人しか子を成せません。ですがその代わりとても強力なんですよ? 人間がこの子を捕らえるのは不可能ですし、例え捕らえたとしても同族の竜に死ぬまで追い掛け回されるので普通はしません」
「大事な方じゃないんですか?」
「竜神教と言うくらいですからね。丁重に扱ってください」
「何に気を付ければ良いんですか!?」
「機嫌を損ねない様にして頂ければ。竜の子だからと侮ってはいけませんよ? とても賢いですから」
後頭部にしがみ付いたティアムが大きく頷いたようで頭に顎が当たって痛い。あまり遅くなると危ないからと司祭に送り出され、中庭の奥の出口から真っ直ぐ進んだ先にある山の方へと向かう。まだ夕方まで時間がある筈なのに、真っ直ぐ進むにつれて暗くなってきているような、そして肌寒さが増しているような感じがしていた。
段々と自分でも歩く速度が遅くなっていくのが分かる。野生の勘が働き先に進むのを躊躇わせているんだろうな……だが行かなければならない。この件を放置しては進めないし、引き返して放置すればベアトリスを始め多くの人が居なくなってしまう気がした。
知らない世界に着てやっと出来た繋がりだ。自分が進むことで皆との繋がりを保てるなら、例え危険を冒すとしても足を止める訳にはいかない。俺は覚悟を決めて怯えた速度を元に戻す。
「おやまぁ。警告したのに鈍感なのかにゃ?」
森の中に女性の声が木霊する。語尾ににゃってここメイドカフェか? 秋葉原のアトラクションなのか? と現実逃避してみたが、そんなものを掻き消す様に辺りが霧に包まれ始めた。呼吸をした瞬間、甘ったるい匂いがしたので急いで口と鼻を手で塞ぐ。
「可笑しい……香りは一瞬で即動きを止められる筈なのに動いている? お前何者にゃ?」
その言葉を聞いて答えるはずも無い。とは言えこのままでは相手の正体を見る前に息が止まってしまう。その前に距離を取らないと……幸い微風ではあるが風下ではなく風上に居るし、霧の広がりは遅いので教会までは行っていない筈だ。後は俺の息が抜けられるまで続くかどうか。
「最初ただの間抜けかと思ったが……人間は大変だけどジワジワ支配してやるにゃ!」
白い霧はピンク色が混じり出し濃くなっていく。俺は一か八かその場から全速力で移動する。霧は大分広がっていて走ってもまだ抜けない。息がしたくて肺が藻掻いているのが分かる。限界か……!?
「ぬあっ!」
最後は全力でダイブし霧から抜けられるよう祈りながら前転する。パワーが上がり肉体労働をこなし続けた結果、体力もアップしていたようで何とか霧の範囲から脱出成功した。直ぐに深呼吸して肺に酸素を送り込む。
「逃がさないにゃ」
覚悟を決めたので逃げる予定は無いが、少しは状況を改善しないと逃げるだけしか選択肢が無い。魔法が使えればこの霧を吹き飛ばしたり出来たんだろうが、無い場合は月並みながら肉体労働しか無いな。俺は覚悟を決めて霧の範囲を調べるべく走り始めた。
徐々に広がっているだけで霧は俺に向かって伸びてこない、となると術者はピンポイントでコントロールしたりは出来ないだろうから、中心地点に居るに違いない。ぐるりと走ってから急ブレーキを掛け直ぐに息を大きく吸い込んで真っ直ぐ突っ切る様に走り出す。
「あらまぁ無謀だにゃ魔法使いの領域に入って肉弾戦をしようなんて」
読み通り中心地点に居た。皮のジャケットに皮の胴鎧、膝まである白のスカートを履いたツインテールの少女が仁王立ちして杖を握っている。どうやらあれの先から霧は出ているようだ。俺は少女を直接攻撃せず、その杖目掛けて突っ込みながら盾を背中から下ろす。
「キャッ!」
杖を回転させ霧を増やし身を隠そうとしたが、俺は思い切り盾を振り回し杖の先に付いている水晶玉を強打した。少女は堪えようとしたが俺の力が予想以上に強く体が泳いだ挙句杖を手放した。俺はそれを思い切り蹴って走り去る。息がもう限界だった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる