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相良仁、異世界へ転職!
隣町にて
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「おぉ! お主が私の妻と娘を盗賊共から護ってくれたのか! ようやってくれた!」
馬車を兵士の人に預け、奥様の後を追って門の先に会った大きな屋敷の玄関前に行くと、恰幅の良いが頭髪が少し寂しい口髭を蓄えた人が両手を広げて立っていた。笑顔で俺を出迎えてくれていたのでそのまま近付こうとしたが、腕を伸ばせる範囲に近付いた瞬間
「とんでもないです! 御無事で何よりです! 私営業……じゃない相良仁と申します!」
足を揃えて止め、九十度に頭を下げて自己紹介する。野生の勘と言うか営業で培った勘と言うか、この人只者じゃないって気がして即頭を下げざるを得なかった。ただの呑気な金持ちとは訳が違う気がビンビンする。
「初めて見る顔だが何処から来たのかね? ジン君は」
「あ、はい! 自分は近くの村からこちらへ参りました! 記憶喪失でして、記憶が戻るまで何もしない訳にも行きませんから、営生する手段を見つけるべくこちらの冒険者ギルドへお世話になるべく来た次第でございます!」
「それはまた難儀な……宜しい、私からもギルドには力になるよう言っておくでな。安心して町で暮らすと良い」
何てツイてるんだ。この人が口添えしてくれたら下からスタートとは言え大分有利に進められるぞ! 今から考えると実戦経験も無いのに無謀だったが、何とかなって良かった。ホッと胸を撫で下ろすと手に付けていた篭手を思い出し急いで取ると、旦那さんに頭を下げながら差し出す。
「ありがとうございます! あの、こちら奥様からお借りしたのでお返ししますね!」
「ん? 何だそれは」
「二人とも何をしてらっしゃるの?」
「ああ君か。この方にお礼を言っていたんだよ。何でも記憶喪失らしい」
「あらそれは大変ね。うちで雇って上げられれば良かったんだけど」
「うーむ昨日新しく雇ったばかりなんだよな」
「いえ、御口添え頂けるだけで充分です! 奥様も御嬢様も御無事でしたし!」
「で、君が貸したのかい? これ」
「ええそうよ。アリーザさ……じゃないアリーザのところへ行く途中に妙な露店があってね。その露店を出してたお爺さんが”この篭手は役に立つぞ? 是非買ってお守りにすると良い”って言われて購入したのよ。実際役に立って良かったけど、私たちには必要無いしお礼と言うには安すぎるけど」
「いえいえ頂く訳には」
「良いんだよ。我々には必要無いんだ。必要なものはあるし」
旦那さんは差し出した篭手をぐっと押した。その力の強さからしてこの人実戦経験がある人だと何となく思った。恐らく最後の必要なものはあるっていうのは、自分の得物はちゃんとあるって話だ。
「では有難く頂戴いたします!」
「うん、そうしてくれ。さ、こんなところで恩人を立たせっぱなしでは我が家の沽券に係るので中へ」
断ったが良いから良いからと強引に手を引かれ御屋敷の中に入った。中は豪華な絨毯に装飾品……と言うか豪華な物以外見つけるのが難しいような感じで富豪なんだなと確信する。この町の権力者であるのは間違いないだろう。
それから夕食を頂き空き部屋をお借りして就寝。朝日と共に目覚め、一宿一飯の恩義をと御屋敷のメイドさんにお手伝いを申し出て力仕事をした。旦那さんや奥様達が起きて来たと教えて貰い、早速挨拶してお礼を述べた。
「朝食を食べたら一緒に冒険者ギルドまで行こう。私も用事がある」
「あ、ありがとうございます!」
旦那さんと奥様、それにお嬢様と共に静かに朝食を頂き終えると片付けを手伝ってから御屋敷を後にする。
「お世話になりました!」
「命を助けて頂いたのだからこれくらいでは釣り合いが取れません。何かあったら必ず私たちを頼りなさいね?」
「有難う御座います!」
ビシッと頭を下げてお礼を述べ旦那さんと共に冒険者ギルドに向かう。馬車に乗るのかと思いきや旦那さんは近いからと徒歩でと言い、お付きも数人付いて来て僕は最後尾で移動する。
町に出ると通る度に皆頭を下げているので、ただの富豪とは訳が違うんだろうなと思いながら歩いているとあっという間に”冒険者ギルド”と書かれた看板の前に到着した。
「あらおはようございます」
ウェスタンドアを開けて中に入ると、ラウンジがありその更に奥にカウンターがあった。そこには緩いウェーブのかかったブロンドの女性が笑顔で立っていて頭を下げる。僕も釣られて頭を下げて挨拶をした。
その女性はアメリカのドラマで見るような鼻も高すぎず整った顔立ちの美人で、女性に免疫があまりない俺はドギマギしてしまいそうになる。
「ミレーユさん、こちらジン・サガラだ。私の妻を盗賊から助けてくれてね。遺骸は兵士たちに回収させている」
「それは凄いですね。何処かのギルドに所属を?」
「いいや、どうやら記憶喪失らしくてね。私としては彼に多大な恩がある。出来るだけ便宜を図ってやって欲しい」
「盗賊たちを倒したのは誰かって噂になってましたから、注目されるでしょうね。分かりました、ギルド長にも伝えておきますので」
「では盗賊の処理の件もよろしく頼む。必要であれば私のところへ来て欲しいとも伝えてくれ。ではジン、また会おう」
「ありがとうございました!」
旦那さんは護衛を引き連れてギルドを後にした。緊張の連続だったのか、頭を上げた後一息ついてしまう。
馬車を兵士の人に預け、奥様の後を追って門の先に会った大きな屋敷の玄関前に行くと、恰幅の良いが頭髪が少し寂しい口髭を蓄えた人が両手を広げて立っていた。笑顔で俺を出迎えてくれていたのでそのまま近付こうとしたが、腕を伸ばせる範囲に近付いた瞬間
「とんでもないです! 御無事で何よりです! 私営業……じゃない相良仁と申します!」
足を揃えて止め、九十度に頭を下げて自己紹介する。野生の勘と言うか営業で培った勘と言うか、この人只者じゃないって気がして即頭を下げざるを得なかった。ただの呑気な金持ちとは訳が違う気がビンビンする。
「初めて見る顔だが何処から来たのかね? ジン君は」
「あ、はい! 自分は近くの村からこちらへ参りました! 記憶喪失でして、記憶が戻るまで何もしない訳にも行きませんから、営生する手段を見つけるべくこちらの冒険者ギルドへお世話になるべく来た次第でございます!」
「それはまた難儀な……宜しい、私からもギルドには力になるよう言っておくでな。安心して町で暮らすと良い」
何てツイてるんだ。この人が口添えしてくれたら下からスタートとは言え大分有利に進められるぞ! 今から考えると実戦経験も無いのに無謀だったが、何とかなって良かった。ホッと胸を撫で下ろすと手に付けていた篭手を思い出し急いで取ると、旦那さんに頭を下げながら差し出す。
「ありがとうございます! あの、こちら奥様からお借りしたのでお返ししますね!」
「ん? 何だそれは」
「二人とも何をしてらっしゃるの?」
「ああ君か。この方にお礼を言っていたんだよ。何でも記憶喪失らしい」
「あらそれは大変ね。うちで雇って上げられれば良かったんだけど」
「うーむ昨日新しく雇ったばかりなんだよな」
「いえ、御口添え頂けるだけで充分です! 奥様も御嬢様も御無事でしたし!」
「で、君が貸したのかい? これ」
「ええそうよ。アリーザさ……じゃないアリーザのところへ行く途中に妙な露店があってね。その露店を出してたお爺さんが”この篭手は役に立つぞ? 是非買ってお守りにすると良い”って言われて購入したのよ。実際役に立って良かったけど、私たちには必要無いしお礼と言うには安すぎるけど」
「いえいえ頂く訳には」
「良いんだよ。我々には必要無いんだ。必要なものはあるし」
旦那さんは差し出した篭手をぐっと押した。その力の強さからしてこの人実戦経験がある人だと何となく思った。恐らく最後の必要なものはあるっていうのは、自分の得物はちゃんとあるって話だ。
「では有難く頂戴いたします!」
「うん、そうしてくれ。さ、こんなところで恩人を立たせっぱなしでは我が家の沽券に係るので中へ」
断ったが良いから良いからと強引に手を引かれ御屋敷の中に入った。中は豪華な絨毯に装飾品……と言うか豪華な物以外見つけるのが難しいような感じで富豪なんだなと確信する。この町の権力者であるのは間違いないだろう。
それから夕食を頂き空き部屋をお借りして就寝。朝日と共に目覚め、一宿一飯の恩義をと御屋敷のメイドさんにお手伝いを申し出て力仕事をした。旦那さんや奥様達が起きて来たと教えて貰い、早速挨拶してお礼を述べた。
「朝食を食べたら一緒に冒険者ギルドまで行こう。私も用事がある」
「あ、ありがとうございます!」
旦那さんと奥様、それにお嬢様と共に静かに朝食を頂き終えると片付けを手伝ってから御屋敷を後にする。
「お世話になりました!」
「命を助けて頂いたのだからこれくらいでは釣り合いが取れません。何かあったら必ず私たちを頼りなさいね?」
「有難う御座います!」
ビシッと頭を下げてお礼を述べ旦那さんと共に冒険者ギルドに向かう。馬車に乗るのかと思いきや旦那さんは近いからと徒歩でと言い、お付きも数人付いて来て僕は最後尾で移動する。
町に出ると通る度に皆頭を下げているので、ただの富豪とは訳が違うんだろうなと思いながら歩いているとあっという間に”冒険者ギルド”と書かれた看板の前に到着した。
「あらおはようございます」
ウェスタンドアを開けて中に入ると、ラウンジがありその更に奥にカウンターがあった。そこには緩いウェーブのかかったブロンドの女性が笑顔で立っていて頭を下げる。僕も釣られて頭を下げて挨拶をした。
その女性はアメリカのドラマで見るような鼻も高すぎず整った顔立ちの美人で、女性に免疫があまりない俺はドギマギしてしまいそうになる。
「ミレーユさん、こちらジン・サガラだ。私の妻を盗賊から助けてくれてね。遺骸は兵士たちに回収させている」
「それは凄いですね。何処かのギルドに所属を?」
「いいや、どうやら記憶喪失らしくてね。私としては彼に多大な恩がある。出来るだけ便宜を図ってやって欲しい」
「盗賊たちを倒したのは誰かって噂になってましたから、注目されるでしょうね。分かりました、ギルド長にも伝えておきますので」
「では盗賊の処理の件もよろしく頼む。必要であれば私のところへ来て欲しいとも伝えてくれ。ではジン、また会おう」
「ありがとうございました!」
旦那さんは護衛を引き連れてギルドを後にした。緊張の連続だったのか、頭を上げた後一息ついてしまう。
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