会社を１週間で辞めた新人がアングラパーティーの主催者でした

地下の狂宴

招待

入社してすぐに退職する冷やかしのような新入社員は、どんな業界にもいる。しかし高倍率の試験を伴う大企業と比べ、人材流動性の高いベンチャー企業ではその率は跳ね上がるだろう。

彼、遊佐祐央ゆさゆうおうもその1人だった。

即戦力の中途エンジニアとして入ってきた彼は、入社した週の金曜日に開かれた歓迎会を最後に姿を消した。

在籍わずか５日間、彼とまともに接点を持ったのは教育係の俺だけで、歓迎会の最後、酔ってもいないのに朝までの三次会を希望した彼に最後まで付き合ったのも俺だけだった。

彼には俺が担当していた社内インフラの業務を引き継ぐことになっていて、５日間で出来たのはローカルルールの共有と簡易的な業務の引き継ぎだけだった。ふつう、即戦力として採用された人間は新規プロジェクトへの参加を望む血気盛んな人間が多いものだが、彼は最初の日のランチで俺に、社内インフラ業務の担当を「僥倖」と表現した。

ライフワークバランスだとかそういうのを求めてるのならば、ウチは向かない。インフラエンジニアという席はなく、慣れればすぐに大量の残業を伴うプロジェクトへの参画を求められる。そういった事実をやんわりと示唆しても、彼は何も意に介さないようだった。

彼は能力的には非常に優秀で、４日目、僕は彼に社の膨大なアーカイブと既存システムへのアクセス権を与えた。そして彼は次の日を最後に居なくなったのだった。


消えてから１ヶ月。彼の話が社内で盛り上がったのは退職後１週間程度で、結局それはよくある人事的失策のひとつとして忘れられる運命にあった。僕も降って湧いた新規採用の準備に追われ、すでに彼のことを忘れはじめていたくらいだ。

そんな折、彼に共有した仕事用携帯のSMSに、一件のメッセージが届いた。

「ちょっと変わった乱交パーティーがあるんですが、興味ありませんか」