終焉の姫と聖女の姫

ninjin

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3カ国会議 パート4

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 「その女をよこせだと!その女は俺の親愛なる弟のケルトの娘であり、俺の姪になるのだぞ。俺に姪を差し出せと言っているのか・・・俺にそんな極悪非道な行為いをさせるとはお前には血も涙も通っていないのかぁ」
 「・・・」


 シメーレはロード国王の言葉に唖然として言葉が出てこない。


 「しかしだ。どうしてもこの女が欲しいと言うなら考えてやっても良いぞ。俺も融通の効かない頑固者ではない。俺の大事なこの女をくれてやっても良いが、代わりにゴブリンキングを俺によこせ。平等に交換といこうではないか!」


 ロード国王は涙を流す演技をするが一滴も涙が流れ出ることはない。


 「ゴブリンキングは渡さないし、ヒーリン王女殿下も私が頂くわ」


 シメーレはロード国王の言葉に一切耳を傾けることはしない。シメーレの赤い瞳は闘志を燃やし一歩も引くことはしない覚悟を現していた。


 「そんなわがままが通用すると思っているのか!なんでも自分の思い通りにいくなんてないのだぞ。お前はなんて自己中心的でわがままな思考なのだ。お前の親は娘にどんな教育をしてきたのだ。呆れて言葉を失ってしまうわ」

 「シメーレ王女殿下様、なぜゴブリンキングを庇うような発言をするのですか?ゴブリンキングはデンメルンク王国にとっては由々しき亞人種なのです。あなた様の下僕に成り下がったとしても、それを放置することはできないのです。きちんと処刑をしないと国民に示しがつきません。なので、ロード国王様はゴブリンキングとヒーリン王女殿下の交換を提案しているのです」


 ロード国王の代わりにルクバーがデンメルンク王国の内情を説明する。


 「それに、まだ国民にはゴブリンキング討伐の報告は出来ていません。国民にゴブリンキングの討伐を報告する際にゴブリンキングの死体が必要なのです。そして、ゴブリンキング倒したのはシメーレ王女殿下ではなくロード国王にしたいと思っています。なのでご協力をお願いします」


 ルクバーは膝を付いて頭を下げる。


 「ルクバーさん、そちらの事情はよくわかりました。しかし、私はゴブリンキングをお渡しすることはできないのです。そして、ヒーリン王女殿下をこのままロード国王様の好きにさせることもできないのです」

 「なぜ、あなたはヒーリン王女殿下を助けるのですか?あなたはロード国王様と結託してケルト王子殿下を亡き者にしたのではありませんか?今更後悔の念でも生まれたのですか?それにゴブリンキングについても同じことが言えると思います。あなたがヒーリン王女殿下とゴブリンキングを守る意味が私には理解できません」

 「それは、ケルト王子殿下との約束があるからです。ケルト王子殿下はロード国王様がこのような行為にすること予測しておりました。なので、ケルト王子殿下は自らの死と引き換えに、私にヒーリン王女殿下ことを託したのです」

 「そういう事なのですね。では、なぜゴブリンキングを渡すことはできないのですか?」

 「詳しくは言えませんが、ゴブリンキングは殺すわけにはいきません。これは私の信念であります。人間が一方的に亜人種は敵だと決めつけて、勝手に討伐するなんておかしいと思いませんか?ゴブリンキング・・・いえゴブリンが一度でも人間に危害を加えたことがあるのでしょうか?いえ、ありませんわ。いつもゴブリンを拉致して奴隷として惨たらしい仕打ちをするのは人間ですわ」

 「確かにそうかもしれません。あなたの言い分は理解致しますが、その言葉はこの国の国民には理解し難い発言なのであります。この国にではゴブリンは悪であり敵意の対象となっています。そして、男たちにとっては性的趣向の対象物であり性奴隷としてしか見ていません。その価値観を変えることは非常に難しいのです」

 「うるさいぞ2人とも。ルクバーよ怪物王女の言い分など聞くに値しないくだらない戯言だ。ケルトの意思などどうでも良いだろう。それに亜人種など視野に入れる必要もない下等な種族だぞ。人間様が亜人種を好きに扱って何が悪いのだ。怪物王女は心も体も怪物だからわけのわからないこと言っているだけだ」


 ロード国王はルクバーの背後から威勢良く叫ぶ。


 「シメーレ、俺のことは気にするな。あの女性を助け出してくれ」


 モルカナは小さい声でシメーレにささやく。


 「何を言っているのよ。あなたもあの子も私が守るわ。それがケルト王子殿下とあなたの息子たちとの約束なのよ」

 「あの人間は納得させるのは無理だろう。ここで、2カ国相手に戦争を起こすのは得策とは思えないし、これに乗じてエールデアース帝国が介入したら、いくらお前でも防ぎようはないだろう。ここは俺の命でこの場を終わらせることにする」

 「ダメよ。私はあなたに死んで欲しくないのよ」

 「ありがとうシメーレ。久しぶりにお前と話せて嬉しかったぜ。俺が死んだ後はゴブリンの村のことは任せたぞ」


 実はモルカナは支配されていない。シメーレの作戦でモルカナは支配されているフリをしていたのである。

 モルカナはスクっと立ち上がりロード国王のもとへ歩いていく。モルカナの身長は2.5mあり、筋骨隆々のモルカナが動き出しためで、ロード国王は目をむき出しにしてビビりまくる。


 「おい、怪物王女!ゴブリンキングに俺に殺させるのか!亜人種を使うなんて卑怯だぞ」


 人間が亜人種を敵視するのは理由がある。それは亜人種には神の誓約が通用しないからである。神の誓約によって『覇王』の称号を持つ人間は命の保証がされている。しかし、亜人種にはそれは通用しないのである。だから昔から亜人種を差別の対象にしたのである。『覇王』の称号を持つ国王の意思に基づいて。



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