終焉の姫と聖女の姫

ninjin

文字の大きさ
上 下
52 / 54

3カ国会議 パート3

しおりを挟む
 「さすがロード国王様、見事な配分でございます」


 グリムはロード国王に賛辞の言葉を述べる。


 「・・・」


 シメーレは呆れて何も言わない。しかし、ロード国王の傲慢な態度は想定済みなので怒りも湧いてこない。


 「これで今回の議題は終了だな。しかし、せっかく強固たる意思で繋がった3カ国が集まったのにこれで終わるのも開催国として申し訳ない。そこでだ、今から面白い余興を始めることにする。おい!例の者を用意させろ」


 ロード国王の呼びかけに応じて扉が開いた。


 「ロード国王様ヒーリンを連れてきました」


 ヒーリンは両手を縄で縛られ口には猿轡をされ全裸の状態で騎士に連れらて部屋に入ってきた。


 「今回のゴブリンキング討伐で、デンメルンク王立学院の名誉ある赤マントを授与されたにも関わらず、ゴブリンキングに無様にも殺されて、頭だけ帰ってきた不届き者がいる。そいつにはそれ相応の罰を与えないといけない。しかしだ!当の本人は死んでしまっているので罰することができない。なので、代わりにケルトの妹であるヒーリンに責任を取ってもらうことにした」

 「ロード国王様、それは最もな意見でございます。たとえハイドランジア国の王子殿下であっても、差別することなく適正な処分をするのは公平な判断であります」


 グリムはニヤニヤと下品な笑みを浮かべながらヒーリンの体を舐め回すように見ている。


 「さて、この女にはどのような処罰をするかは考えておるが、こいつはまだ生娘であるらしい。なので、まずはグリム国王に、この女に女として喜びを教えてやってもらおうかと考えておる。女としての喜びを知らずに拷問を受けて死ぬのもあまりにも可哀想であろう。これが俺の弟であるケーニヒの娘にしてやれる最大の温情だ」

 「さすがロード国王様、なんて慈悲のある言葉なのでありましょうか・・・私はその大役を引き受けることにしましょう」


 グリムは興奮を抑えきれずに今にもズボンを脱ぎ出しそうである。


 「グリム国王この女が本当に生娘であるか俺のこの指で確かめてやる」


 ロード国王は静かに立ち上がり、全裸で震えているヒーリンの元へ近寄り、またぐらに手を伸ばす。


 「ちょっと待つのよ」


 しばらく口を閉ざしていたシメーレが声を上げる。


 「なんだ。邪魔をするな!」


 ロード国王は鋭い眼光でシメーレを睨みつける。


 「先ほどから私への報酬が少ないのではないのでしょうか?」

 「はぁ~何を言っているのだ!怪物のお前に少しでも報酬を与えてやった俺の寛大なる心が理解できないのか!あまり調子に乗ると痛い目を見ることになるぞ」


 ロード国王は、後ずさりしながら目一杯の虚勢を張った。


 「痛い目・・・それは私に対する宣戦布告として受け止めてもよろしいのでしょうか?」


 シメーレは不気味な赤い瞳でロード国王を睨みつける。


 「ふざけるな!俺はお前のような小国を相手にするほど器は小さくないぞ。俺が相手にするのはもっと大きな国でないとバランスが取れないだろう。だから、今の言葉は聞き流してやる」


 ロード国王はルクバーの後ろに急いで隠れる。


 「ルクバー、何かあったら俺を全力で守れ」


 ロード国王は周りを気にすることなく大声で叫ぶ。


 「わかりました。しかし、彼女は強いですよ」


 ルクバーは静かに答える。


 「女性の後ろに隠れるなんて、なんて小心者なのですか?男性なら女性を守るくらいの心いきを見せて欲しいモノですわ」


 シメーレはタナトスから飛び降りてゆっくりとロード国王のもとへ歩き出す。


 「お前何をしているのかわかっているのか!デンメルンク王国と全面戦争になってもいいのか!」


 ロード国王はルクバーの後ろから震えながら叫ぶ。


 「私は報酬が少なすぎると言っているのよ。私が満足できるだけの報酬の配分がなされたらおとなしく国へ帰るわ」

 「何が不満なのだ。俺は寛大なる報酬を与えたはずだ。それにケルトを始末した報酬であるゴブリンの森の統治権を与えると言っただろう」


 ロード国王はシメーレにビビりすぎて、ケルトの殺害依頼まで言ってしまう。そして、その言葉を聞いたヒーリンがシメーレの方を怒りに満ちた表情で見た。


 「この場でそれを言うかしら?私がケルト王子殿下を殺害したのならヒーリン王女殿下を罰するのはおかしいのではないのですか?」


 シメーレは呆れ顔でロード国王に詰め寄る。


 「やかましい。ゴブリンキングであろうが怪物王女であろうが、ケルトが失態を犯したことに間違いはない!だから、あの女を罰する値するのだ。そうだろグリム王」

 「そ・そ・そうでございます」


 グリムは一度下げたズボンを戻し、巻き添いを喰らいたくないがロード国王に意見する事もできず、とりあえず同意した。


 「グリム国王様、発言には責任を持たなければいけませんわ。もし、あなたもロード国王様の意見に賛同するのであれば、私はあなたも敵だと認定させていただきます」


 シメーレの不気味な赤い瞳で睨まれたグリムは蛇に睨まれた蛙のように死がよぎった。



 「シメーレ王女殿下様、あなたは何がお望みなのかしら?」


 ロード国王とグリムがビビり倒しているのを見て、仕方なくルクバーが口を開いた。


 「私は領土などは全く興味はありませんのよ。しかし、同じ女性が虐げられるのは黙って見過ごすわけにはいきません。なので、ヒーリン王女殿下を私にくれませんか?」


 ヒーリンはシメーレの言葉に耳を疑った。「兄を殺しておきながら自分を助ける?」と心の中で思っていた。

 ルクバーはシメーレの言葉を聞いてロード国王に耳打ちした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...