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3カ国会談 パート1
しおりを挟むシュヴァリエは目を覚ますと目の前にはゴブリンがいた。
「やっと気がついたのね」
シュヴァリエはタプポの村のとある家のベットで横たわっていた。
「私をどうするのですか・・・」
シュヴァリエはか細い声で怯えていた。
「動けるのなら帰っても構わないわ。でも、もう少しここでゆっくりと体を休めることを勧めるわ」
ゴブリンは諭すように優しい笑顔で微笑みかける。
「え・・・どう言うことですか?」
シュヴァリエは思いがけない言葉に動揺をしている。
「ここでゆっくりと休んでから人間の町へ帰ったほうが良いと言ったのよ」
「私を殺さないの・・・」
「なんで殺さないといけないのかしら?」
「だって私たちはゴブリンキングを討伐に来たのよ。私たちの同胞はあなたたちにひどいことをしたわ」
「それはクリムゾン様から聞いています。でも、あなたも酷い目に遭わされたようですね。そんなあなたをクリムゾン様は助けるように言ったのです」
「・・・あ・あ・ありがとうございます」
シュヴァリエはゴブリンたちの優しさと殺されないという安堵から涙が溢れ出た。
「もう、安心していいのよ。ゆっくりと休みなさい」
「本当にありがとうございます」
ゴブリンはシュヴァリエを優しく抱きしめた。
「フラーゴラさん、どこへ逃げるの?なんで私たちだけ別方向へ逃げているの?」
ディスピアは不安げに尋ねる。
「実は、モルカナ様とガロファー夫妻からあること頼まれたいたのです。もし、人間たちが攻めてきたら、ある人物にダグネスちゃんを預けてほしいと」
「えっ!私はみんなと同じ場所に逃げるんじゃないの?」
「はい。ダグネスちゃんをずっとゴブリンの村で育てるのはダグネスちゃんの将来にとって良くないとモルカナ様は思うようになっていたのです。最初はアザレアさんは猛反対していましたが、モルカナ様とガロファーさんの説得で最後はアザレアさんも納得してくれました」
「私はずっとみんなと一緒にいたいよぉ~」
ディスピアにとっての両親は人間ではなくガロファーとアザレアである。だからずっと一緒にいたいと願う。
「みんなそう思っています。しかし、ゴブリンと人間が共存するのは難しい問題です。それに、モルカナ様はダグネスちゃんにもっと広い世界を見て欲しいと願っています」
「やだよぉ~みんなと一緒に居たいよぉ~」
「人間たちが攻めて来た以上は一刻の猶予もないのです。無事に人間たちを追い出すことができたら、みんなダグネスちゃんに会いに来られるはずです。永遠の別れではないのです」
「・・・」
フラーゴラの真剣な表情にディスピアはグッと自分の気持ちを抑える。
「この先に獣人国家バリアシオンとハイドランジア国の国境線上に最果ての町フォーチューンがあります。そこはどこの国家に属さない独立した町です」
最果ての町フォーチューンは、獣人国家バリアシオンに行くための関所のような町である。フォーチューンで手続きを済ませると獣人国家に入国をすることができるが、人間の力を遥かに凌駕する獣人国家に行く人間など皆無である。
「その町に私は行くのですか・・・」
力の抜けた声でディスピアは問いかける。
「はい。フォーチューンには種族の差別はありません。人間・亜人種が共存しているので人間に慣れるには一番良いとモルカナ様は判断したのです。それに、フォーチューンにはモルカナ様の知人がいます。その方にダクネスちゃんのことは話しているそうなので問題はありません」
「みんな私に会いにきてくれるの・・・」
「もちろんです。その町は人間・亜人種が共に暮らしているので、私たちも会いに行くのが簡単なのです。アザレアさんもだから納得してくれたのです。みんなが無事に生きていれば、必ず会いに行きます」
「わかった。私フォーチューンへ行くよぉ~。みんなと離れ離れになるのは嫌だけど・・・私は人間だから仕方がないよね」
「みんなダグネスちゃんのことが大好きなのです。だから、人間としての人生を歩んで欲しいのです。そして、いつか種族など気にせずに一緒に暮らせる時代を築きましょう」
「うん。またみんなと一緒に暮らせるように私が世界を変えてみせるよ」
ディスピアは辛い気持ちを抑えて、子供ながらに精一杯の笑顔を見せた。そして、心に誓ったのである。みんなと一緒に暮らせる世界を作りたいと。
ここはデンメルンク城の大きな会議室である。大理石で出来た大きなテーブルには三つの席が用意されていた。そして、会議室のテーブルの上座の後ろには5つの台座がり、その台座には全裸の手足のないダルマのようの男が展示物のように置かれている。
もちろん上座に座っているはロード国王。ロード国王の左右には国王の専属メイドのルクバーと王国騎士団総大将のフォルスが立っている。
そして残りの二つの席の一つにアルストロメリア国のグリム・リィーパー国王が座り、もう一つの席には、椅子に座らずにまるまると太ったタナトスに座るシメーレ王女がいた。
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