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ゴブリンキング討伐 パート9
しおりを挟む「これで神聖な決闘の承諾は成立したわね。では、殺し合いを始めしょう」
怪物王女が動き出す前にケルトが素早く怪物王女に向かって剣を突き刺した。ケルトの動きはあまりにも早すぎて、遠巻きで2人を見ていた騎士達はケルト動きをとらた者はいない。しかし、怪物王女の動きはさらにケルトの上をいき、軽々とケルトの突きを交わした。
「俺の突きを交わすとはさすが怪物だな」
ケルトの動きは常人の数倍の速さがある。それを可能にするのが『英雄』の称号の力である。
「『英雄』の称号は確か・・・三光を使いこなせる能力があるのよね」
「そうだ。『覇王』の称号だとレベル3と同等の能力を有している。俺の動きを簡単い避けるとは信じられない」
『覇王』の称号にはレベルが5まで存在すると言われている。初めはレベル1で一光を使うことができる。一光とは白い光のオーラのことであり、白いオーラを使用することで身体を強化することができる。身体強化は普通は魔法で強化するのだが、『覇王』の称号を持つものは一光で身体を強化して魔法で強化するよりも数段上の強化をすることができる。
「ふふ・・・戦いはまだ始まったばかりだわ。そんなに簡単に私を倒せると思っていたのかしら?」
怪物王女は余裕の笑みを浮かべてケルトに笑いかける。
「火炎球」
ケルトは余裕の笑みを浮かべている怪物王女に向かってすかさず火炎球は放つ。怪物王女の頭上には小さな火炎球が現れ、怪物王女にぶつかる頃には直径3mほどの大きさに膨張して怪物王女を炎に海へ引きずり込む。
「これが二光の力ということね」
炎の海に飲まれた怪物王女は顔色変えずに淡々と答えた。
『覇王』レベル2で使うことができる二光とは赤いオーラを使用することで魔法の威力をあげ、なおかつ自在にどこからでも自由に魔法を稼動させることができる。通常の魔法は自らの体の一部に魔力を集めてそこから放出するのが基本である。
「なぜ火炎球が効かないのだ・・・」
「私も身体強化のオーラを使っているのよ」
「それはわかっている。だが、二光のオーラで作り上げた火炎球を喰らって平気なわけがないだろう」
ケルトいう通りである。いくら一光の身体強化を図っても二光で強化した魔法を完全に無効化するのは不可能である。
「あなたの私へ認識が間違っているのよ。これでも喰らいなさい」
怪物王女はそう言うとケルトの頭上に火炎球を作り出した。しかし、ケルトの火炎球とは違いいきなり3mほど大きな火炎球が現れたのである。
「なんだこれは・・・」
ケルトの上に現れた火炎球はみるみると大きくなり直径10mくらいなり、遠巻きで2人の戦いを見ていた騎士たちは火炎球の熱さと破壊力を恐れてさらに遠くへと逃げて行く。
ケルトは今までに見たことない火炎球の大きさに驚愕してすぐには動き出すことはできなかったが、危険を察知して全速力で後退する。
「爆発しなさい!」
怪物王女は指をパチンと鳴らすと10mもある火炎球は激しい炎を撒き散らしながら爆発した。
火炎球が爆発を起こし火山が噴火した時に発生する噴煙のような黒煙があたり一面を包み込み、視界がゼロになってしまった。
徐々に黒煙が薄れていき、黒煙が消えた時にはケルトがいた場所には大きなクレータのような窪みができていて、窪みの一番深いところにケルトが横たわっていた。
ケルトの鎧は瞬時に爆発の衝撃で砕けちりほぼ全裸に近い状態で横たわっていて、髪の毛は燃え尽きて頭皮が剥き出しになっていて、全身にかなり酷い火傷を負っているようである。しかし、まだ死んではいないようで、静かに体をピクピクと動かしながら立ち上がろうとしている。
「それが三光の力ね」
『覇王』レベル3で使いことができる三光は黄色のオーラであり、自己治癒をすることができる。この自己治癒の力は治癒師などとは比較できないほどの治癒力を要しており、四肢の欠損など以外は治療は完全に行うことができるのである。ケルトは大爆発が起きた時に体を丸くして、一光のオーラを使い最大限に体を保護して、自己治癒にかけたのである。そして、その判断は正しくケルトは一命を取り留め、自己治癒をおこないゆっくり立ち上がった。
「その桁外れの魔法・・・お前はどんな力を持っているのだ。『覇王』レベル3以上の力を持っているのか」
ケルトは、激しい痛みに堪えながら全身の力を振り絞って声を発した。
「これほどのダメージを喰らっても、私に対して反抗的な目をするのはとても勇敢な態度だと思うわ。普通なら命乞いをするか、すぐに逃げ出すかのどちらかだわ。さすが『英雄』の称号を持つ人物は違うわね。あなたのその勇敢な姿勢に敬意を表して教えてあげるわね。私は『覇王』レベル5よ。五光を使うことができるのよ」
「レベル5だと・・・信じられない。その若さでどうやってその力を手に・・・いや、そんなことはどうでも良いだろう。レベル5のお前がなぜ?俺の命を狙うのだ。俺の命はそんなに価値はないだろう?その力があればなんでも手に入るだろう」
「あらあら、そんなに私を煽ても何も出てきはしないわよ。私の力なんてまだまだよ。世界にはもっと強い方はたくさんいるはずよ。それにあなたの命はかなりの価値があるみたいよ。『英雄』の称号を持ちそれに相応しいあなたの正義感、それが疎ましく思う存在はいるのよ」
「ロード国王のことか・・・」
「依頼主をバラすことはことはできないわ」
「・・・助けてくれ」
ケルトは噛み締めるような小さな声で言った。
「えっ!なんて言ったのかしら」
「ヒーリンだけは助けてくれ」
「私はあなたを殺しにきたのよ」
「わかっている。俺をお前には絶対に勝てない。だからもう抵抗もしない。その代わり王都にいるヒーリンだけは助けてくれ」
ケルトはまだ回復しきっていない体の痛みを堪えながら、怪物王女に頭を下げてお願いをする。
「あなたの妹を殺す依頼は受けていないわ」
「わかっている。今回のゴブリンキングの討伐でロード国王は俺に罠を嵌めたのであろう。ロード国王はお前に俺に殺す依頼を出し、そして、俺がゴブリンキングに殺されたことにして、俺のデンメルンク王国での名声を地に落ちさせたいのであろう。ついでにハイドランジア国第1王女であるヒーリンを、俺の失態の罪を取らせてロード国王に監禁されるに違いない・・・ロード国王に監禁されると言うことは人間としての尊厳を維持できないほどの苦痛を味わうコチになる」
「あら、名推理だわ。確かにあの男ならやりかねないわね」
「頼む。俺の首の代わりにヒーリンだけは助けてやってくれ。お願いだ!」
「私に勝てないとわかって命乞いをするのではなく、妹さんのことを第一に考えるなんて嫌いじゃないわよ。あなたの妹に対する思いを汲んであげてもいいわよ」
「ありがとう。シメーレ王女」
「いいのよ。あなたのような方は嫌いじゃないわよ」
「シメーレ王女、わがままついでにもう一つお願いをしたい」
「何かしら」
「今すぐでなくていいのだが、俺の父であるケーニヒの野望を止めてくれ。シメーレ王女の言ったことが真実なら、俺の父が行なっていることは、世界を破滅に導くだろう。シメーレ王女の力があれば俺の父の野望を食い止めることはできるに違いない。これは俺のためでなく世界のためにやってほしいのだ」
「それは贅沢なお願いですね。しかし、残念ながら今の私の力ではケーニヒの野望を止めることはできないわ」
「そうか・・・俺の父だけなく、他にもいろんな人物が携わっているのだな」
「そういうことね」
「それなら仕方がない。今の話は聞かなかったとことにしてくれ。さぁ・・俺の首を持っていくが良い。シメーレ王女に差し出すなら俺も本望だ。後のことは任せたぞ」
怪物王女は躊躇することなくケルトの首を刎ねた。
そこには一切の戸惑いまもなく、透き通るような美しい瞳をしたケルトの頭が転がっていた。それを怪物王女は拾い上げて、そっと瞼を下ろして瞳と閉じさせた。
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