終焉の姫と聖女の姫

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ゴブリンキング討伐 パート5

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 「ロード国王、ゴブリンキング討伐の準備が整いました」

 「そうか・・・ついにあの森に入る時が来たのだな」

 「はい。モナーク王子がゴブリンキングの討伐を名乗りでましたので、避けることはできませんし、いつかは真相を究明するためにあの森に入らなければいけません」

 「そうだな。あんなバカ息子でも役に立つ時があるのだな」


 ロード国王は、いまだに元の姿に戻らないゾルダートを見て、ディスピアの呪いの恐ろしさにビビっている。どのような呪いか解明していない状態で、ディスピアが生存している可能性のあるゴブリンの森へ挙兵は慎重に行わないといけない。しかし、モナークが自分の意思でゴブリンキングの討伐を勝って出たことにより、何が起こってもモナークのせいにできるので、ロード国王は喜んでモナークのゴブリンキングの討伐に賛同したのである。


 「願ってもないチャンスだと思います。しかも、モナーク王子がゴブリンキング討伐すると聞いて、ユスティーツ国のシメーレ王女が協力の要請を願い出ました」

 「怪物王女かぁ・・・」

 「はい。4カ国同盟を裏切りエールデアース帝国に情報を漏らしていたアストラガルス国を一夜で滅ぼし、エールデアース帝国の3大将の1人バトルクライを撃ち倒したと聞いています。シメーレ王女の活躍によりしばらくはエールデアース帝国も大人しくしているでしょう。今がゴブリンキングの討伐に絶好のチャンスと言えると思います」


 ゴブリンキングを討伐しなかった理由は3つあった。1つはディスピアの呪いを恐れていたことこれが最大の原因である。2つ目は大国であるエールデアース帝国との紛争にある。西側の大陸の大部分を支配するエーデルアース帝国は絶えずどこかの国を紛争を起こしている。エールデアース帝国と直接面していないデンメルンク王国であるが、エールデアース帝国の存在はとても脅威である。なので近隣諸国で4カ国で同盟を組みエールデアース帝国に対処していた。3つ目はゴブリンキングの存在である。ゴブリンキングは人間を襲うことはないので脅威な存在ではないが、自分たちの種族を守るためならその強大な力で人間を駆逐する。ゴブリンキングなど大したことはないと言うものが多い中、ロード国王は未知の存在であるゴブリンキングを侮ることなどしない。


 「確かにそうだな。モナークと怪物王女を使ってゴブリンの森を捜索させるのが安全かつ合理的だ。ついでにゴブリンキングを倒してくれたらもうけものだ」

 「そうでございます。もしディスピアの呪いが発動すれば、じゃまな存在のシメーレ王女を廃人にできるますし、発動しなければディスピアがゴブリンの森にはいないと判断がつきます。そして、モナークか怪物王女がゴブリンキングを倒してくれれば、国民達に良い知らせを報告することができます。どのように転んでもロード国王にとって良いことばかりでしょう」

 強大な力を持つ怪物王女ことシメーレ王女の存在は、各国のパワーバランスが崩れてしまう脅威な存在になっている。


 「そうだな。それで怪物王女はもう来ているのか?」

 「はい。奥の部屋に待たせています。お呼びしましょうか?」

 「呼んでこい。怪物王女にはゴブリンキングの討伐以外にやってもらいたいことがあるのだ」

 「かしこまりました」






 「アルカナはなぜゴブリンの女の子を匿ったのですか?」

 「それはゴブリンの少女の闇を見て救ってあげたいと思ったのでしょう」

 「闇・・・ですか?詳しく教えなさい!」

 「はい」


 シュダルはアルカナと同じくらいの小さな女の子に経緯を説明した。


 「それは本当なのですか?」

 「はい。アルカナ王女様には『診断』の能力あります。『診断』の能力はその人の身体の状態以外にも様々な情報を読み取る力があります。その人の過去の記憶そして未来の成長を知り得ることができるのです」

 「そうだったわね。これは面白いことになりそうだわ」

 「はい。私とアルカナ王女様と一緒にあの少女を見守りたいと思います」

 「今後が楽しみですわ。シェダル、私の期待に応える働きをするのよ。私はいつでもアルカナを殺すことができるのですから」

 「もちろんです。私はテナーブル様の期待に応えるように努めさせていただきます」

 「もうそろそろ時間だわ。またアルカナのことを聞かせてね」

 「かしこまりました」


 シェダルは謎の少女に跪き頭を下げる。そして謎の少女はいなくなった。



 「シェダルちゃんおはよう!ルティアちゃんはちゃんと眠れてましたかぁ」


 アルカナは無邪気な笑顔でシェダルに挨拶をする。


 「アルカナ王女様、おはようございます。ルティアさんは昨夜もかなりうなされてなかなか寝付くことはできませんでした。しかし、精神安定剤を服用してからは落ち着いて眠られたようです。まだまだ心のケアが必要だと思います」

 「私の魔法で記憶を消してあげたいけど・・・でも、それじゃぁだめだよね」

 「はい。嫌な記憶を消してあげるのは簡単です。しかし、ルティアさんが忘れたくない大事な記憶も消してしまいます。彼女は6年もの間『亜人館』で奴隷として過酷な環境で育ち過酷な労働を強いられてきました。そんな過酷な6年間を生きてきた支えが家族に会いたいという思いです。しかし、モナークの非道な行為によってルティアさんは家族への思いさえも心に閉じ込めてしまい、モナークの残像に怯える体になってしまったのです。私たちの役目はルティアさんの失った家族の記憶を蘇らせて無事に家族の元へ帰すことにあると思います」

 「そうだよね・・・私がルティアちゃんを元に戻すよぉ~。でもどうしたらいいのよぉ~。いくら『聖女』の能力でも心の傷は浄化できないよぉ~」


 アルカナは頭をポコポコ叩きながら考えが浮かばないか試している。


 「アルカナ王女様、頭を叩いても良いアイディアは浮かんできまんよ」

 「じゃぁ~どうしらいいのよぉ~」


 アルカナは頬を膨らませて拗ねている。


 「簡単です。ルティアさんとお友達になってあげればいいのです」

 「お友達?」

 「はい。そうです。時間はかかると思いますが、アルカナ王女様がルティアさんが心から信頼できるお友達になることができれば、ルティアさんの閉ざされた心も開かれると思います。それに、アルカナ王女様もお友達が欲しいでしょ」

 「うん。お友達が欲しいですぅ~」


 アルカナはとても嬉しそうな顔をしてルティアのいる隣の部屋に走っていった。




 
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