終焉の姫と聖女の姫

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ゴブリンキング討伐 パート2

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3日後・・・


 「国王様、申し訳ありません」


 ルーラは国王に跪いて謝罪する。


 「謝罪よりも死体の報告のが先だ!」


 ロード国王は玉座に座りながら足をガクガクを震わせていた。ロード国王はかなり怯えている。


 「部下に殺害現場を確認させたところ、殺害場所は綺麗に片付けられていました。しかし、何かを燃やした痕跡がありましたので、隈なく周囲を確認したところ穴を掘った形跡を確認できたので、地面を掘り返したところ無数の人間の骨と鎧などが見つかったとの事です。この骨は王国騎士団の骨だと推測されます」

 「ゴブリン達が遺体を焼いて地面に埋めたという事だな」

 「はい。ゴブリン達は自分たちに疑いがかかると思い殺害現場を綺麗に片付けて遺体を燃やして埋めたと思います」

 「そうか・・・しかし、そんなことはどうでも良いのだ!俺が知りたいのディスピアが死んだかどうかだ!」


 ロード王は声を荒げながら言った。


 「部下の報告では王女はお腹を真っ二つ切り裂いて死亡を確認したとの事です。しかし、いくら探しても赤子の骨は見つからなかったとの事です」

 「あいつは生きているのだな・・・」

 「それはわかりません。骨が見つからないだけで生きていると決めつけるのは安直だと思います」

 「なら、なぜゾルダートはあのような姿になっているのだ!もしあいつの能力なら死んでいたら効果は無効化されるはずだ」

 「常識的に考えればそうなのかもしれませんが、例外なのかもしれません。死後も能力が持続する特殊な能力かもしれません」

 「俺はあいつの骨が見つかるまでは死んだとは認めん。継続してあいつの行方を探せ」

 「それは、難しいかもしれません。ゴブリンキングが誕生したことによりゴブリン達の統率力強まっています。そして、もし国王様のおっしゃる通り王女様が生きていれば、あの森に近づくのは危険かもしれません。私どもの部下も王女の骨がいくら探しても見つからなかったことに恐怖を覚え、この件に関しては手を引きたいと言っております。私も部下の意見に賛成しております。なので、報酬はお返しします」


 ルーラも内心は王女が生きているのではないかと感じている。しかし、それは業務の失敗を認めることであるので断言する事はできない。ゾルダートがなぜあのような姿になったのかわからない以上危険を冒すことはできないとルーラは判断したのである。

 一方ロード国王もこれ以上の捜索は断念せざる得ないのである。ゾルダートほどの男を廃人にした能力を把握しないまま深入りするのは危険である。それに、そもそもディスピアは、病のため療養しにハイドランジア国に運ばれる予定だったので、ディスピア以外の者が全て殺されたと国民に知らせるわけにはいかないと判断した。なので、ロード国王は数日後にハイドランジア国の使者から、ディスピアが到着していないと報告を受けるまでは、何事もなかったかのように沈黙をしていた。

 その後、ハイドランジア国の使者からディスピアが到着していないとの報告を受けて、捜索隊を出したが1週間ほどで捜索を打ち切り、王女を含めて30人の王国騎士団が突如として行方がわからなくなったと国民に発表した。ゴブリンキングに殺されたやら国王が暗殺したのではないか?と王都ではいろいろと噂されたが、表立って国王に訴える者は誰もいなかった。

 

 ゾルダートが廃人になって『八咫烏』は大きな戦力を失ったが、『八咫烏』以上にゾルダートが廃人になって心が病んでしまった者がいた。それは ヴァルキリーである。ヴァルキリーがロード国王に嫁ぐ際にある二つの契約を交わしていた。その一つが『レア称号』の子供が生まれたらゾルダートの罪を許して自由にしてあげるという契約だった。

 ゾルダートはヴァルキリーをロード国王に奪われて、怒りを制御することができずにロード国王を斬り殺そうとした。しかし、『覇王』の称号を持つ国王を正当な理由なく殺すことは神の誓約違反の行為と神が判断し、ゾルダート体に激しい電流が流れゾルダートは意識を失った。そして、ゾルダートは国王殺害未遂で死刑を言い渡されたが、ウィズダム宰相の働きかけによりデンメルンク城の地下牢に永久監禁の刑に軽減され地下の牢屋に閉じ込められることになる。

 しかし、ゾルダートは監禁されることはなく暗部組織『八咫烏』の一員としてロード国王の下僕として使えることになった。これもウィズダム宰相の裁量である。ゾルダートは公では地下牢に閉じ込められていることになっているので、その境遇から解放することを条件でヴァルキリーはロード国王の妻となることを公で認めたのである。

 ロード国王は、ディスピアの呪いを恐れてあまり公の場に出なくなっていた。もしかしたら、自分も呪われるのではないかと怯えていたのである。しかし、1ヶ月を経過しても自分の体に何も異変が起こらないとことを知ると、安心して普段の生活を取り戻した。そして、ロード国王が最初にしたのは、ゾルダートの哀れな姿をヴァルキリーに見せることであった。

 ヴァルキリーは双子の王女を産んで体調を壊していたが、少しずつ回復をしてた矢先に、ディスピアの行方がわからなくなり、さらに体調が悪化してしまった。しかし、『レア称号』を持つアルカナが生まれたことによりゾルダートの罪が帳消しにされると喜びを糧として、徐々に体調を戻しつつあった。


 「ヴァルキー、だいぶ体調も良くなってきたみたいだな」

 「はい。1ヶ月近くもこのように寝たきりに姿になって申し訳ありません」

 「気にするな。お前はよくやってくれたぞ。俺のためにアルカナを産んでくれてありがとう」


 ロード国王は優しく微笑みかける。


 「そうね・・・」


 しかし、ヴァルキリーはディスピアのことを思うと素直に喜ぶことはできない。


 「そうだ。お前との契約を果たす時がきたぞ。ゾルダートを解放しよう。そして、お前が望むならゾルダートと共に自由に暮らすと良い」


 ロード国王は太陽のような眩しい笑顔でヴァルキリーに言った。ヴァルキリーは少し戸惑いながらもゾルダートと再び一緒に暮らせると思うと喜びを隠しきれずに思わず涙がこぼれ落ちるのであった。

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