終焉の姫と聖女の姫

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ゴブリンキング討伐 パート1

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 6年前ディスピア王女を殺害後ハーレクィンは『八咫烏』のアジトへ戻り暗殺の成功をルーラに告げた。


 「任務完了ご苦労様です。報酬は後日お渡しします。ところで、ゾルダートの姿が見えませんがいつもの場所へ向かれたのですか?」

 「実はゾルダート様の事でご報告があります。内密の話になりますので表の馬車まで来てもらってよろしいでしょうか?」


 白い仮面のハーレクィンの表情は読み取ることはできないが、いつもと少し様子が違うと感じたルーラは、静かに頷きハーレクィンと共に表に止めてある馬車まで付いて行く。

 
 「ゾルダート様は馬車の荷台の中に居ます。ルーラ様の目で確認してください」


 ルーラは馬車の荷台の中へ入る。荷台の中に入ると鼻にツンっとくるアンモニア臭とドブくさい異様な匂いが充満していた。そのその匂いを発しているのはゾルダートであった。ゾルダートは、電池の切れたおもちゃのように微動だもせずに荷台の奥に座っているが、ゾルダートのズボンには大きなシミとお尻のあたりが少し膨らんでいた。それは糞尿であった。

 ゾルダートの黒い仮面の隙間からは、糸を引くようにヨダレと鼻水が滴り落ちていた。その光景は見たルーラはすぐに荷台から出て、ハーレクィンに問い詰める。


 「何があったのだ?なぜ、ゾルダートほどの武人がこんな姿になっているのだ」


 いつもは冷静なルーラだがかなり動揺をしている。


 「私にもわかりません。ディスピア王女を殺害後ゾルダート様は、急にのたうち回って苦しみ出しました。そして、のたうち回り続けること1時間が経過した頃に意識を失って倒れてしまったのです。それで、私達は意識を失ったゾルダート様を馬車に乗せてアジトに戻ることにしたのです。しばらくするとゾルダート様は意識を取り戻したように見えたのですが、荷台の奥にずっと座ったまま動かずに、あのような状態になったのです。ゾルダート様はほとんど動くことはありませんが、お腹が空くと赤ん坊のように大声で泣いて叫びます。トイレは自分ですることができずに垂れ流しの状態です。私たちはゾルダート様をどうすればいいのか困っているのです」

 「これはディスピア王女の呪いではないのか?」

 「私もそのように考えましたが、まだ生まれたばかりの赤ん坊にこのようなことができるとは思えません。それに、高度な魔術師でもゾルダート様をこのような状態にする事は不可能です」

 「そうだな・・・しかし、なぜゾルダートがこのようなになったのか解明はしないといけない。ゾルダートは私に預からせてもらいます」

 「お願いします。どうか・・・ゾルダート様を救ってくだい」

 「できる限りのことはするつもりです」


 ハーレクィンは馬車の荷台の中へ入っていき、ゾルダートの黒い仮面をそっと外した。ゾルダートは白目をむいて口を大きく開けている。ハーレクィンはハンカチを取り出して、ゾルダートの顔のヨダレ・鼻水・目ヤニを綺麗に拭き取って、両手でゾルダートの頬を触る。そして、そっと自分の唇をゾルダートの唇に重ね合わせた。そして、ハーレクィンはゾルダートに仮面をつけて直して、別れの言葉を呟いて荷台から降りて行った。


 王の間にて・・・


 「国王様、無事王女暗殺を完了致しました」

 「よくやった。後は遺体を回収してゴブリンの仕業に工作するだけだな。遺体の場所はどこだ」


 ルーラはディズピア王女の暗殺場所を報告する。


 「よし、後はケーニヒからの連絡待ちだな」

 「はい。数日後には王女様がハイドランジア国に姿を見せないと連絡があるはずです。連絡があり次第捜索されると良いでしょう。遺体はゴブリンや魔獣によって荒らされていると思いますので、手筈通りにゴブリンキングに襲われたと報告をあげると良いと思います」

 「そうだな。ところで自分の姪を殺したゾルダートはどうしている。さぞかし苦しい思いをしているだろう。ガハハハ・ガハハハ」


 ロード国王は悔しがるゾルダートの顔を思い浮かべて嬉しそうに笑う。


 「実は・・・王女様を殺害後ゾルダートの体に異変が起きたのです」

 「どういうことだ!」

 「見ていただければわかるでしょう。できれば牢屋を貸していただけないでしょうか?そこへゾルダートを運びたいと思います」

 「牢屋だと・・・ゾルダートの身に何が起こったのだ?」

 「詳しくは見ていただければわかります。お部屋を汚したくありませんので牢屋が最適だと思います」

 「わかった。使用を許可する」

 「ありがとうございます。すぐにゾルダートを運びますので1時間後に牢屋まで来てください」


1時間後牢屋に入れられたゾルダートの姿を見てロード国王は絶句した。


 「これは・・・どういうことだ!」

 「見ての通りです。ゾルダートは王女を殺害後このような状態になったのです。原因は不明です」

 「これは『終焉姫』の能力なのか・・・」


 ロード国王はガクガクと震えながら小さく呟いた。


 「シュウ・・エンヒ?それはどういうことですか?」


 ディスピアの『称号』を知っているのはロード王、シンシ教皇、『神の巫女』のミカエルだけである。


 「本当にディスピアを殺したのだな!」

 「間違いありません。部下が王女のお腹が真っ二つになるのを見ています」

 「信用できるのか!」


 ロード国王の顔は血の気が引いてかのように青白くなっている。そして、落ち着きをなくして牢屋の前をうろうろしている。


 「はい。これまでも完璧な仕事をしてきました。今回も当然完璧に仕事してきたはずです」

 「そうか・・・怒鳴り散らしてすまない」

 「いえ。気にしていません。それよりもシュウエンヒメとはどういう意味なのでしょうか?」

 「実はディスピアの『称号』の鑑定は行われていたのだ。そして、ディスピアの『称号』は『終焉姫』という世界を滅ぼす悪魔の『称号』の持ち主だったのだ」

 「それで殺害を決意したのですか・・・」

 「そうだ。『終焉姫』の『称号』の能力はどのようなモノかわかっていない。もしかしたら『終焉姫』の能力でゾルダートはあのような姿になったのかもしれない」

 「確かにそのような仮説は立てることができると思いますが、ディスピア王女はまだ生まれたばかりの赤子です。しかも、死んでいるのです。私はその仮説は信憑性はないと思います」

 「わかっておる。しかし、それしか考えられんぞ。何度も聞くが本当にあいつを殺したのか?」

 「間違いありません。信用できないのであれば、今から死体を取りに戻らせましょうか?」

 「そうしてくれ。アイツの死体を見ないと納得がいかない」

 「当初の予定とは違いますが、今すぐに死体を取りに戻らせます。ゴブリン達に荒らされていないことを祈ります」


 ルーラはハーレクィンに指示を出してディスピア王女の死体を回収させに行かせた。
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