25 / 54
ゴブリンキング討伐 パート1
しおりを挟む
6年前ディスピア王女を殺害後ハーレクィンは『八咫烏』のアジトへ戻り暗殺の成功をルーラに告げた。
「任務完了ご苦労様です。報酬は後日お渡しします。ところで、ゾルダートの姿が見えませんがいつもの場所へ向かれたのですか?」
「実はゾルダート様の事でご報告があります。内密の話になりますので表の馬車まで来てもらってよろしいでしょうか?」
白い仮面のハーレクィンの表情は読み取ることはできないが、いつもと少し様子が違うと感じたルーラは、静かに頷きハーレクィンと共に表に止めてある馬車まで付いて行く。
「ゾルダート様は馬車の荷台の中に居ます。ルーラ様の目で確認してください」
ルーラは馬車の荷台の中へ入る。荷台の中に入ると鼻にツンっとくるアンモニア臭とドブくさい異様な匂いが充満していた。そのその匂いを発しているのはゾルダートであった。ゾルダートは、電池の切れたおもちゃのように微動だもせずに荷台の奥に座っているが、ゾルダートのズボンには大きなシミとお尻のあたりが少し膨らんでいた。それは糞尿であった。
ゾルダートの黒い仮面の隙間からは、糸を引くようにヨダレと鼻水が滴り落ちていた。その光景は見たルーラはすぐに荷台から出て、ハーレクィンに問い詰める。
「何があったのだ?なぜ、ゾルダートほどの武人がこんな姿になっているのだ」
いつもは冷静なルーラだがかなり動揺をしている。
「私にもわかりません。ディスピア王女を殺害後ゾルダート様は、急にのたうち回って苦しみ出しました。そして、のたうち回り続けること1時間が経過した頃に意識を失って倒れてしまったのです。それで、私達は意識を失ったゾルダート様を馬車に乗せてアジトに戻ることにしたのです。しばらくするとゾルダート様は意識を取り戻したように見えたのですが、荷台の奥にずっと座ったまま動かずに、あのような状態になったのです。ゾルダート様はほとんど動くことはありませんが、お腹が空くと赤ん坊のように大声で泣いて叫びます。トイレは自分ですることができずに垂れ流しの状態です。私たちはゾルダート様をどうすればいいのか困っているのです」
「これはディスピア王女の呪いではないのか?」
「私もそのように考えましたが、まだ生まれたばかりの赤ん坊にこのようなことができるとは思えません。それに、高度な魔術師でもゾルダート様をこのような状態にする事は不可能です」
「そうだな・・・しかし、なぜゾルダートがこのようなになったのか解明はしないといけない。ゾルダートは私に預からせてもらいます」
「お願いします。どうか・・・ゾルダート様を救ってくだい」
「できる限りのことはするつもりです」
ハーレクィンは馬車の荷台の中へ入っていき、ゾルダートの黒い仮面をそっと外した。ゾルダートは白目をむいて口を大きく開けている。ハーレクィンはハンカチを取り出して、ゾルダートの顔のヨダレ・鼻水・目ヤニを綺麗に拭き取って、両手でゾルダートの頬を触る。そして、そっと自分の唇をゾルダートの唇に重ね合わせた。そして、ハーレクィンはゾルダートに仮面をつけて直して、別れの言葉を呟いて荷台から降りて行った。
王の間にて・・・
「国王様、無事王女暗殺を完了致しました」
「よくやった。後は遺体を回収してゴブリンの仕業に工作するだけだな。遺体の場所はどこだ」
ルーラはディズピア王女の暗殺場所を報告する。
「よし、後はケーニヒからの連絡待ちだな」
「はい。数日後には王女様がハイドランジア国に姿を見せないと連絡があるはずです。連絡があり次第捜索されると良いでしょう。遺体はゴブリンや魔獣によって荒らされていると思いますので、手筈通りにゴブリンキングに襲われたと報告をあげると良いと思います」
「そうだな。ところで自分の姪を殺したゾルダートはどうしている。さぞかし苦しい思いをしているだろう。ガハハハ・ガハハハ」
ロード国王は悔しがるゾルダートの顔を思い浮かべて嬉しそうに笑う。
「実は・・・王女様を殺害後ゾルダートの体に異変が起きたのです」
「どういうことだ!」
「見ていただければわかるでしょう。できれば牢屋を貸していただけないでしょうか?そこへゾルダートを運びたいと思います」
「牢屋だと・・・ゾルダートの身に何が起こったのだ?」
「詳しくは見ていただければわかります。お部屋を汚したくありませんので牢屋が最適だと思います」
「わかった。使用を許可する」
「ありがとうございます。すぐにゾルダートを運びますので1時間後に牢屋まで来てください」
1時間後牢屋に入れられたゾルダートの姿を見てロード国王は絶句した。
「これは・・・どういうことだ!」
「見ての通りです。ゾルダートは王女を殺害後このような状態になったのです。原因は不明です」
「これは『終焉姫』の能力なのか・・・」
ロード国王はガクガクと震えながら小さく呟いた。
「シュウ・・エンヒ?それはどういうことですか?」
ディスピアの『称号』を知っているのはロード王、シンシ教皇、『神の巫女』のミカエルだけである。
「本当にディスピアを殺したのだな!」
「間違いありません。部下が王女のお腹が真っ二つになるのを見ています」
「信用できるのか!」
ロード国王の顔は血の気が引いてかのように青白くなっている。そして、落ち着きをなくして牢屋の前をうろうろしている。
「はい。これまでも完璧な仕事をしてきました。今回も当然完璧に仕事してきたはずです」
「そうか・・・怒鳴り散らしてすまない」
「いえ。気にしていません。それよりもシュウエンヒメとはどういう意味なのでしょうか?」
「実はディスピアの『称号』の鑑定は行われていたのだ。そして、ディスピアの『称号』は『終焉姫』という世界を滅ぼす悪魔の『称号』の持ち主だったのだ」
「それで殺害を決意したのですか・・・」
「そうだ。『終焉姫』の『称号』の能力はどのようなモノかわかっていない。もしかしたら『終焉姫』の能力でゾルダートはあのような姿になったのかもしれない」
「確かにそのような仮説は立てることができると思いますが、ディスピア王女はまだ生まれたばかりの赤子です。しかも、死んでいるのです。私はその仮説は信憑性はないと思います」
「わかっておる。しかし、それしか考えられんぞ。何度も聞くが本当にあいつを殺したのか?」
「間違いありません。信用できないのであれば、今から死体を取りに戻らせましょうか?」
「そうしてくれ。アイツの死体を見ないと納得がいかない」
「当初の予定とは違いますが、今すぐに死体を取りに戻らせます。ゴブリン達に荒らされていないことを祈ります」
ルーラはハーレクィンに指示を出してディスピア王女の死体を回収させに行かせた。
「任務完了ご苦労様です。報酬は後日お渡しします。ところで、ゾルダートの姿が見えませんがいつもの場所へ向かれたのですか?」
「実はゾルダート様の事でご報告があります。内密の話になりますので表の馬車まで来てもらってよろしいでしょうか?」
白い仮面のハーレクィンの表情は読み取ることはできないが、いつもと少し様子が違うと感じたルーラは、静かに頷きハーレクィンと共に表に止めてある馬車まで付いて行く。
「ゾルダート様は馬車の荷台の中に居ます。ルーラ様の目で確認してください」
ルーラは馬車の荷台の中へ入る。荷台の中に入ると鼻にツンっとくるアンモニア臭とドブくさい異様な匂いが充満していた。そのその匂いを発しているのはゾルダートであった。ゾルダートは、電池の切れたおもちゃのように微動だもせずに荷台の奥に座っているが、ゾルダートのズボンには大きなシミとお尻のあたりが少し膨らんでいた。それは糞尿であった。
ゾルダートの黒い仮面の隙間からは、糸を引くようにヨダレと鼻水が滴り落ちていた。その光景は見たルーラはすぐに荷台から出て、ハーレクィンに問い詰める。
「何があったのだ?なぜ、ゾルダートほどの武人がこんな姿になっているのだ」
いつもは冷静なルーラだがかなり動揺をしている。
「私にもわかりません。ディスピア王女を殺害後ゾルダート様は、急にのたうち回って苦しみ出しました。そして、のたうち回り続けること1時間が経過した頃に意識を失って倒れてしまったのです。それで、私達は意識を失ったゾルダート様を馬車に乗せてアジトに戻ることにしたのです。しばらくするとゾルダート様は意識を取り戻したように見えたのですが、荷台の奥にずっと座ったまま動かずに、あのような状態になったのです。ゾルダート様はほとんど動くことはありませんが、お腹が空くと赤ん坊のように大声で泣いて叫びます。トイレは自分ですることができずに垂れ流しの状態です。私たちはゾルダート様をどうすればいいのか困っているのです」
「これはディスピア王女の呪いではないのか?」
「私もそのように考えましたが、まだ生まれたばかりの赤ん坊にこのようなことができるとは思えません。それに、高度な魔術師でもゾルダート様をこのような状態にする事は不可能です」
「そうだな・・・しかし、なぜゾルダートがこのようなになったのか解明はしないといけない。ゾルダートは私に預からせてもらいます」
「お願いします。どうか・・・ゾルダート様を救ってくだい」
「できる限りのことはするつもりです」
ハーレクィンは馬車の荷台の中へ入っていき、ゾルダートの黒い仮面をそっと外した。ゾルダートは白目をむいて口を大きく開けている。ハーレクィンはハンカチを取り出して、ゾルダートの顔のヨダレ・鼻水・目ヤニを綺麗に拭き取って、両手でゾルダートの頬を触る。そして、そっと自分の唇をゾルダートの唇に重ね合わせた。そして、ハーレクィンはゾルダートに仮面をつけて直して、別れの言葉を呟いて荷台から降りて行った。
王の間にて・・・
「国王様、無事王女暗殺を完了致しました」
「よくやった。後は遺体を回収してゴブリンの仕業に工作するだけだな。遺体の場所はどこだ」
ルーラはディズピア王女の暗殺場所を報告する。
「よし、後はケーニヒからの連絡待ちだな」
「はい。数日後には王女様がハイドランジア国に姿を見せないと連絡があるはずです。連絡があり次第捜索されると良いでしょう。遺体はゴブリンや魔獣によって荒らされていると思いますので、手筈通りにゴブリンキングに襲われたと報告をあげると良いと思います」
「そうだな。ところで自分の姪を殺したゾルダートはどうしている。さぞかし苦しい思いをしているだろう。ガハハハ・ガハハハ」
ロード国王は悔しがるゾルダートの顔を思い浮かべて嬉しそうに笑う。
「実は・・・王女様を殺害後ゾルダートの体に異変が起きたのです」
「どういうことだ!」
「見ていただければわかるでしょう。できれば牢屋を貸していただけないでしょうか?そこへゾルダートを運びたいと思います」
「牢屋だと・・・ゾルダートの身に何が起こったのだ?」
「詳しくは見ていただければわかります。お部屋を汚したくありませんので牢屋が最適だと思います」
「わかった。使用を許可する」
「ありがとうございます。すぐにゾルダートを運びますので1時間後に牢屋まで来てください」
1時間後牢屋に入れられたゾルダートの姿を見てロード国王は絶句した。
「これは・・・どういうことだ!」
「見ての通りです。ゾルダートは王女を殺害後このような状態になったのです。原因は不明です」
「これは『終焉姫』の能力なのか・・・」
ロード国王はガクガクと震えながら小さく呟いた。
「シュウ・・エンヒ?それはどういうことですか?」
ディスピアの『称号』を知っているのはロード王、シンシ教皇、『神の巫女』のミカエルだけである。
「本当にディスピアを殺したのだな!」
「間違いありません。部下が王女のお腹が真っ二つになるのを見ています」
「信用できるのか!」
ロード国王の顔は血の気が引いてかのように青白くなっている。そして、落ち着きをなくして牢屋の前をうろうろしている。
「はい。これまでも完璧な仕事をしてきました。今回も当然完璧に仕事してきたはずです」
「そうか・・・怒鳴り散らしてすまない」
「いえ。気にしていません。それよりもシュウエンヒメとはどういう意味なのでしょうか?」
「実はディスピアの『称号』の鑑定は行われていたのだ。そして、ディスピアの『称号』は『終焉姫』という世界を滅ぼす悪魔の『称号』の持ち主だったのだ」
「それで殺害を決意したのですか・・・」
「そうだ。『終焉姫』の『称号』の能力はどのようなモノかわかっていない。もしかしたら『終焉姫』の能力でゾルダートはあのような姿になったのかもしれない」
「確かにそのような仮説は立てることができると思いますが、ディスピア王女はまだ生まれたばかりの赤子です。しかも、死んでいるのです。私はその仮説は信憑性はないと思います」
「わかっておる。しかし、それしか考えられんぞ。何度も聞くが本当にあいつを殺したのか?」
「間違いありません。信用できないのであれば、今から死体を取りに戻らせましょうか?」
「そうしてくれ。アイツの死体を見ないと納得がいかない」
「当初の予定とは違いますが、今すぐに死体を取りに戻らせます。ゴブリン達に荒らされていないことを祈ります」
ルーラはハーレクィンに指示を出してディスピア王女の死体を回収させに行かせた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。
みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる