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ゴブリンの少女ルティア パート6
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モナークが壇上を降りたあとに静かに来賓席から腰をあげてロード国王が席を立つ。ロード国王の前には2人の男がロード国王を先導するように歩いている。ロード国王は頭には王冠を被り、金色の鮮やかなマントを羽織ってゆっくりと2人の男の後をついて行く。
ロード国王は2mの屈強な身体をしているが、そのロード国王よりも一回りの大きな身体をしている2人の男の正体は、1人は王国騎士団の大将であり名をフォルスと言う。身長は2m20cmと騎士団で一番大きな身体を持ち後ろに歩いているロード国王が小柄に見えてしまう。フォルスは白銀のフルプレートアーマーで身を包み仮面の隙間から鋭い眼光で周囲の安全を確認しながら歩いている。もう1人の男はデンメルンク王国の宰相のウィズダムである。ウィズダムはゆったりとした黒いガウンをまとい黒のタイトなパンツを履いている。派手なアーマに身を包んだフォルスとは違いロード国王を引き立てるために目立たない格好をしているのである。
そして、ロード国王の後ろを歩いているのが、さまざまな宝石が散りばめれて真っ赤な派手なドレスを着ているのがモナークの母であり第一王妃のアプロディーテーである。
来賓室から壇上まではさほど距離はないが、兵士たちは壇上までの道のりを微動だにせずに敬礼をして立っている。
民衆たちや観覧に来ている貴族達は盛大なる拍手でロード国王を讃え『デンメルンク王国バンサイ』と大きな声で叫んでいる。
ロード国王はそのような光景を満足そうに眺めながら壇上に立ち上がった。壇上にはロード国王専用の豪華な演台と椅子が用意されていた。ロード国王は椅子には座らずに演台に手を付き演説を始めた。
「卒業生の諸君、これからはデンメルンク王国のために神から授かった『称号』に恥じない人生を送らなければならない。8年間の学生生活でお前達は自分の潜在能力を最大限に引き伸ばせるようなったはずだ!その力は自分自身のためでなくデンメルンク王国の発展のために使うことが使命であり、俺からの命令でもある。王国騎士団に入る者、地元の町や村に戻り兵士になる者、冒険者として国の安全を守る者、様々な選択肢が用意されているはずだ。その選択はお前達が自由に決めるが良い。しかし、デンメルンク王国の利益にない道を選んだ者はどうなるかはお前達なら理解しているだろう。デンメルンク王国に反旗を翻す者、俺の指示に従わない者は、家族もろとも地獄のような苦しみを味わうことになるだろう。お前達の未来は俺の手のひらの上にあることを忘れるではないぞ」
ロード国王は壇上から民衆達、卒業生達、観覧に来ている貴族達に向かって言い放った。そしてそれを静かに聞いていた全ての者たちが盛大なる拍手でロード国王の演説に賛辞の拍手と声援を送る。
全ての者達が・・・いや、2人だけ下を向き拳を握りしめて拍手をしていないものがいた。1人はケルトでありもう1人はインペラトーレである。インペラトーレは身長175cmで黒髪の長髪でサイドを刈り上げている男であり『覇王』の称号を持つ大貴族の息子である。
『覇王』の称号を授かって生まれたインペラトーレは、いつもモナーク、ケルトと比べられて非常に不愉快な思いをして8年間の学生生活を送っていた。『覇王』の『称号』を授かって生まれただけでも注目を浴びるのだが、同世代に同じ『覇王』の称号を持つ王子であるモナーク、『覇王』と同等の意味を持つ『英雄』の『称号』を持つケルトは疎ましい存在であった。
いずれ王の座をめぐってモナークと戦わないといけないインペラトーレは、己の手の内を見せたくないので、人前では無能な振りを演じて成績も卒業生の中では下の方である。そんなインペラトーレの策略にハマったロード国王とモナークはインペラトーレは相手ではないと判断し眼中にないのであった。しかし、ケルトはすぐにインペラトーレの策略に気づていた。
インペラトーレは心に仕舞い込んだ野心を抑えながらモナークとロード国王の演説を拳を握りしめて聞いていたのであった。
ロード国王の演説が終わり卒業式はなんのトラブルもなく終了した。
グロワール王立学園で卒業式が行われていた頃、人気のいないミレニアム大聖堂には顔をフードで覆われたルティアをおぶっているヒーリンの姿があった。
ヒーリンはケルトの屋敷でルティアに簡単な治療を施した後にミレニアム大聖堂に戻りシンシ教皇にルティアのことを説明していた。ヒーリンの話を聞いたシンシ教皇は、ルティアをアルカナ王女に合わせることを許可した。そして、ヒーリンはシェダルへの対策は結局思いつかなかったのでシンシ教皇に相談した。
「シンシ教皇様、この子をアルカナ王女様に治療してもらいたいのですが、アルカナ王女様の側には絶えずシェダル様がいます。ゴブリンであるこの子の治療を依頼すれば必ずロード国王様に報告されてしまいます。シェダル様をアルカナ王女様から引き離すことはできないでしょうか?」
「その必要はありません。シェダルはアルカナ王女様の護衛兼メイドとして支えています。命令には忠実に従いますが、それ以外の要件に関して一切の介入はしないはずです。なので、聖女としての役割りを全うするアルカナ王女様の行為を邪魔することはありませんし、国王様に報告することはないでしょう」
ヒーリンはシンシ教皇のこの言葉を信じて人気の少ないミレニアム大聖堂内を隠れる様に移動して、アルカナの部屋に向かったのである。
ロード国王は2mの屈強な身体をしているが、そのロード国王よりも一回りの大きな身体をしている2人の男の正体は、1人は王国騎士団の大将であり名をフォルスと言う。身長は2m20cmと騎士団で一番大きな身体を持ち後ろに歩いているロード国王が小柄に見えてしまう。フォルスは白銀のフルプレートアーマーで身を包み仮面の隙間から鋭い眼光で周囲の安全を確認しながら歩いている。もう1人の男はデンメルンク王国の宰相のウィズダムである。ウィズダムはゆったりとした黒いガウンをまとい黒のタイトなパンツを履いている。派手なアーマに身を包んだフォルスとは違いロード国王を引き立てるために目立たない格好をしているのである。
そして、ロード国王の後ろを歩いているのが、さまざまな宝石が散りばめれて真っ赤な派手なドレスを着ているのがモナークの母であり第一王妃のアプロディーテーである。
来賓室から壇上まではさほど距離はないが、兵士たちは壇上までの道のりを微動だにせずに敬礼をして立っている。
民衆たちや観覧に来ている貴族達は盛大なる拍手でロード国王を讃え『デンメルンク王国バンサイ』と大きな声で叫んでいる。
ロード国王はそのような光景を満足そうに眺めながら壇上に立ち上がった。壇上にはロード国王専用の豪華な演台と椅子が用意されていた。ロード国王は椅子には座らずに演台に手を付き演説を始めた。
「卒業生の諸君、これからはデンメルンク王国のために神から授かった『称号』に恥じない人生を送らなければならない。8年間の学生生活でお前達は自分の潜在能力を最大限に引き伸ばせるようなったはずだ!その力は自分自身のためでなくデンメルンク王国の発展のために使うことが使命であり、俺からの命令でもある。王国騎士団に入る者、地元の町や村に戻り兵士になる者、冒険者として国の安全を守る者、様々な選択肢が用意されているはずだ。その選択はお前達が自由に決めるが良い。しかし、デンメルンク王国の利益にない道を選んだ者はどうなるかはお前達なら理解しているだろう。デンメルンク王国に反旗を翻す者、俺の指示に従わない者は、家族もろとも地獄のような苦しみを味わうことになるだろう。お前達の未来は俺の手のひらの上にあることを忘れるではないぞ」
ロード国王は壇上から民衆達、卒業生達、観覧に来ている貴族達に向かって言い放った。そしてそれを静かに聞いていた全ての者たちが盛大なる拍手でロード国王の演説に賛辞の拍手と声援を送る。
全ての者達が・・・いや、2人だけ下を向き拳を握りしめて拍手をしていないものがいた。1人はケルトでありもう1人はインペラトーレである。インペラトーレは身長175cmで黒髪の長髪でサイドを刈り上げている男であり『覇王』の称号を持つ大貴族の息子である。
『覇王』の称号を授かって生まれたインペラトーレは、いつもモナーク、ケルトと比べられて非常に不愉快な思いをして8年間の学生生活を送っていた。『覇王』の『称号』を授かって生まれただけでも注目を浴びるのだが、同世代に同じ『覇王』の称号を持つ王子であるモナーク、『覇王』と同等の意味を持つ『英雄』の『称号』を持つケルトは疎ましい存在であった。
いずれ王の座をめぐってモナークと戦わないといけないインペラトーレは、己の手の内を見せたくないので、人前では無能な振りを演じて成績も卒業生の中では下の方である。そんなインペラトーレの策略にハマったロード国王とモナークはインペラトーレは相手ではないと判断し眼中にないのであった。しかし、ケルトはすぐにインペラトーレの策略に気づていた。
インペラトーレは心に仕舞い込んだ野心を抑えながらモナークとロード国王の演説を拳を握りしめて聞いていたのであった。
ロード国王の演説が終わり卒業式はなんのトラブルもなく終了した。
グロワール王立学園で卒業式が行われていた頃、人気のいないミレニアム大聖堂には顔をフードで覆われたルティアをおぶっているヒーリンの姿があった。
ヒーリンはケルトの屋敷でルティアに簡単な治療を施した後にミレニアム大聖堂に戻りシンシ教皇にルティアのことを説明していた。ヒーリンの話を聞いたシンシ教皇は、ルティアをアルカナ王女に合わせることを許可した。そして、ヒーリンはシェダルへの対策は結局思いつかなかったのでシンシ教皇に相談した。
「シンシ教皇様、この子をアルカナ王女様に治療してもらいたいのですが、アルカナ王女様の側には絶えずシェダル様がいます。ゴブリンであるこの子の治療を依頼すれば必ずロード国王様に報告されてしまいます。シェダル様をアルカナ王女様から引き離すことはできないでしょうか?」
「その必要はありません。シェダルはアルカナ王女様の護衛兼メイドとして支えています。命令には忠実に従いますが、それ以外の要件に関して一切の介入はしないはずです。なので、聖女としての役割りを全うするアルカナ王女様の行為を邪魔することはありませんし、国王様に報告することはないでしょう」
ヒーリンはシンシ教皇のこの言葉を信じて人気の少ないミレニアム大聖堂内を隠れる様に移動して、アルカナの部屋に向かったのである。
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