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ゴブリンの少女ルティア パート4
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喧嘩をしていた男達はヒーリンを舐め回すようにやらしい目つきで見ながら股間に手をあてて激しくこすり出す。この場所に綺麗な姿をした女性が入ってくることは少ないので、服を着ている姿でも彼らの性欲は頂点に達する。
「早くこの場から立ち去れ!」
ケルトは男たちに叫ぶ。男達の股間には大きなシミが滲み出て、満足した表情をしてこの場を後にした。
「お前達も早く行け」
歪な生き物の裸を見て下半身丸出しの男たちも逃げるようにその場を去っていく。
スラム街の住人は、スラム街に許可をもらって入ってきた者に絶対に手出しはしない。それは、スラム街で生きて行く為の絶対のルールである。スラム街の住人はミレニアム教会の施しと国の僅かの援助によって最低限の生活することができるのでルールを破ることはない。
スラム街の住人の大半は、仕事もせずにただスラム街で廃人のように生きている。そして少数の者が王都の住人が嫌がる汚い仕事している。さっき群がって来た男達は前者である。
「ケルトお兄様、ゴブリンの女の子の状態を確認しましょう」
「そうだな。まだ生きているよな・・・」
2人は歪な生き物を見て絶句した。
「なんてひどいことするのだ!」
ケルトの口からは血が滴り落ちてきた。ケルトは怒りを抑えるために歯を食いしばり拳を強く握る。それでも怒りは収まることはない。ケルトの青い瞳からは涙がこぼれ落ちてくる。
「私の言っていたことは本当でしたでしょ。モナークは嫌なことがあると『亜人館』に行き、まだ幼いゴブリンを蹂躙してストレスを発散しているのよ」
「俺が模擬戦でモナークに勝ったからこの子は犠牲になってしまったのか・・・」
ケルトは跪き歪な生き物に頭を下げる。ヒーリンはケルトを後ろからそっと抱きしめる。
「ケルトお兄様のせいではありません。これはモナークの性癖であり、このことを黙認している国王のせいであると私は思っています」
「ロード王はこの事を知っているのか?」
「もちろんです。それに・・・」
ヒーリンは何かを言おうとしたが唇をかみしめて言葉を発するのを辞めた。
「どうしたのだ。何を言おうとしたのだ」
「これは・・・氷山の一角に過ぎないのよ。犠牲者はゴブリンだけでないわ。人間にも同じような事をしていると聞いているわ」
「そうか・・・また詳しく聞かせてくれ。まずはこの子の治療をしてくれ」
「もちろんよ。でも・・・私の魔法ではある程度の損傷は治せたとしても、元の姿に戻すことはできないわ。それに、外見だけでなく精神的なダメージも相当なものよ」
ヒーリンの『称号』は『治癒師』である。『治癒師』はその名の通りに治癒魔法に長けて力を持っている。
「そうなのか・・・でも多少は元に戻るのだろう?このまま死なせるわけにはいかない。少しでも元の状態に戻せるように頑張ってくれ」
「気休め程度にしか戻すことはできないわ。この肉の塊のような腫れ上がった顔・・・多分眼球は潰れているわ。そして鼻も潰れている・・・歯も全て折れてしまっているかもしれないわ。それに乳首の損傷に、性器の裂傷もかなりひどいわ」
『治癒師』の『称号』を持っているものは医師として働く者が多い。ヒーリンも医師になるために勉強中なので凄惨な死体はたくさん見ているので冷静に分析できる。
「どの程度なら治すことができるのだ?」
「初期治療のみだわ。変に触ると元に戻らなくなるわ」
「・・・元に戻るのか?」
「私には無理よ。でも聖女様なら治せるはずよ」
「アルカナ王女様のことか?」
「もちろんよ。聖女様といえばアルカナ王女様しかいないわよ」
「アルカナ王女様はまだ6歳になったばかりだぞ。お前でも治せないのに本当に治せるのか?」
「アルカナ王女様の力は、国家機密事項だからケルトお兄様に詳しく教えることはできませんが、アルカナ王女様ならゴブリンの女の子も元の姿に戻せるはずよ。問題なのはどうやってゴブリンの女の子をアルカナ王女様のもとへ連れて行くかだわ」
アルカナは『聖女』の『称号』を授かり3歳の頃から魔法の教育を受けている。そして、5歳になった時に王都にあるミレニアム教会の総本山であるミレニアム大聖堂に預けられて治癒魔法の英才教育を受けている。
ミレニアム大聖堂の一角には、治癒魔法のスペシャリストを育てる施設がありデンメルンク王国で治癒関係の『称号』を得た者だけが入ることができる施設である。治癒師は有事の時には絶対に必要な戦力であり、グロワール王立学園とは別のカリキュラムで治癒師を育てているのである。
ミレニアム大聖堂で治癒師の教育を受けることができるのは8歳からである。しかし、アルカナは5歳の時に入学することが許されたのである。そして、ヒーリンもミレニアム大聖堂で治癒師としての教育を受けている学生なのである。
「シンシ教皇にお願いできないのか?」
「もちろん、シンシ教皇にお願いするつもりでいるわ。このような悪行もシンシ教皇もご存知のはずだから協力はしてくれるはずよ。でも、アルカナ王女様の側にはいつも王族専属メイド『五芒星』のシェダルが付いているのよ。シェダルの許可なくアルカナお嬢様に近づくには不可能なのよ」
「ゴブリンの女の子の治癒の許可などでないというわけか・・・」
「そうね。それに、この痛ましい姿のゴブリンを神聖なるミレニアム大聖堂に連れて行けば大きな騒ぎになるはずよ。できるだけ目立つ行動は避けたいわ」
「そうだな・・・・いや、待てよ。明日はグロワール王立学園の卒業式だ。そして、俺とモナークは卒業生の代表として演説を行うことになっている。そのあとは国王から卒業生への祝辞になっているはずだ。国王が来るからミレニアム大聖堂の学生や聖職者達も参列をするはずだ。明日ならチャンスはあるかもしれないぞ」
「確かにそうかもしれないわ。アルカナ王女様が参列するとの情報もないはずよ。明日ならみんなの目を盗んでアルカナ王女様にお会いすることができるかも知れないわ。あとはシェダルをどうするかだわ・・・」
ケルトとヒーリンは考え込むのであった。
「早くこの場から立ち去れ!」
ケルトは男たちに叫ぶ。男達の股間には大きなシミが滲み出て、満足した表情をしてこの場を後にした。
「お前達も早く行け」
歪な生き物の裸を見て下半身丸出しの男たちも逃げるようにその場を去っていく。
スラム街の住人は、スラム街に許可をもらって入ってきた者に絶対に手出しはしない。それは、スラム街で生きて行く為の絶対のルールである。スラム街の住人はミレニアム教会の施しと国の僅かの援助によって最低限の生活することができるのでルールを破ることはない。
スラム街の住人の大半は、仕事もせずにただスラム街で廃人のように生きている。そして少数の者が王都の住人が嫌がる汚い仕事している。さっき群がって来た男達は前者である。
「ケルトお兄様、ゴブリンの女の子の状態を確認しましょう」
「そうだな。まだ生きているよな・・・」
2人は歪な生き物を見て絶句した。
「なんてひどいことするのだ!」
ケルトの口からは血が滴り落ちてきた。ケルトは怒りを抑えるために歯を食いしばり拳を強く握る。それでも怒りは収まることはない。ケルトの青い瞳からは涙がこぼれ落ちてくる。
「私の言っていたことは本当でしたでしょ。モナークは嫌なことがあると『亜人館』に行き、まだ幼いゴブリンを蹂躙してストレスを発散しているのよ」
「俺が模擬戦でモナークに勝ったからこの子は犠牲になってしまったのか・・・」
ケルトは跪き歪な生き物に頭を下げる。ヒーリンはケルトを後ろからそっと抱きしめる。
「ケルトお兄様のせいではありません。これはモナークの性癖であり、このことを黙認している国王のせいであると私は思っています」
「ロード王はこの事を知っているのか?」
「もちろんです。それに・・・」
ヒーリンは何かを言おうとしたが唇をかみしめて言葉を発するのを辞めた。
「どうしたのだ。何を言おうとしたのだ」
「これは・・・氷山の一角に過ぎないのよ。犠牲者はゴブリンだけでないわ。人間にも同じような事をしていると聞いているわ」
「そうか・・・また詳しく聞かせてくれ。まずはこの子の治療をしてくれ」
「もちろんよ。でも・・・私の魔法ではある程度の損傷は治せたとしても、元の姿に戻すことはできないわ。それに、外見だけでなく精神的なダメージも相当なものよ」
ヒーリンの『称号』は『治癒師』である。『治癒師』はその名の通りに治癒魔法に長けて力を持っている。
「そうなのか・・・でも多少は元に戻るのだろう?このまま死なせるわけにはいかない。少しでも元の状態に戻せるように頑張ってくれ」
「気休め程度にしか戻すことはできないわ。この肉の塊のような腫れ上がった顔・・・多分眼球は潰れているわ。そして鼻も潰れている・・・歯も全て折れてしまっているかもしれないわ。それに乳首の損傷に、性器の裂傷もかなりひどいわ」
『治癒師』の『称号』を持っているものは医師として働く者が多い。ヒーリンも医師になるために勉強中なので凄惨な死体はたくさん見ているので冷静に分析できる。
「どの程度なら治すことができるのだ?」
「初期治療のみだわ。変に触ると元に戻らなくなるわ」
「・・・元に戻るのか?」
「私には無理よ。でも聖女様なら治せるはずよ」
「アルカナ王女様のことか?」
「もちろんよ。聖女様といえばアルカナ王女様しかいないわよ」
「アルカナ王女様はまだ6歳になったばかりだぞ。お前でも治せないのに本当に治せるのか?」
「アルカナ王女様の力は、国家機密事項だからケルトお兄様に詳しく教えることはできませんが、アルカナ王女様ならゴブリンの女の子も元の姿に戻せるはずよ。問題なのはどうやってゴブリンの女の子をアルカナ王女様のもとへ連れて行くかだわ」
アルカナは『聖女』の『称号』を授かり3歳の頃から魔法の教育を受けている。そして、5歳になった時に王都にあるミレニアム教会の総本山であるミレニアム大聖堂に預けられて治癒魔法の英才教育を受けている。
ミレニアム大聖堂の一角には、治癒魔法のスペシャリストを育てる施設がありデンメルンク王国で治癒関係の『称号』を得た者だけが入ることができる施設である。治癒師は有事の時には絶対に必要な戦力であり、グロワール王立学園とは別のカリキュラムで治癒師を育てているのである。
ミレニアム大聖堂で治癒師の教育を受けることができるのは8歳からである。しかし、アルカナは5歳の時に入学することが許されたのである。そして、ヒーリンもミレニアム大聖堂で治癒師としての教育を受けている学生なのである。
「シンシ教皇にお願いできないのか?」
「もちろん、シンシ教皇にお願いするつもりでいるわ。このような悪行もシンシ教皇もご存知のはずだから協力はしてくれるはずよ。でも、アルカナ王女様の側にはいつも王族専属メイド『五芒星』のシェダルが付いているのよ。シェダルの許可なくアルカナお嬢様に近づくには不可能なのよ」
「ゴブリンの女の子の治癒の許可などでないというわけか・・・」
「そうね。それに、この痛ましい姿のゴブリンを神聖なるミレニアム大聖堂に連れて行けば大きな騒ぎになるはずよ。できるだけ目立つ行動は避けたいわ」
「そうだな・・・・いや、待てよ。明日はグロワール王立学園の卒業式だ。そして、俺とモナークは卒業生の代表として演説を行うことになっている。そのあとは国王から卒業生への祝辞になっているはずだ。国王が来るからミレニアム大聖堂の学生や聖職者達も参列をするはずだ。明日ならチャンスはあるかもしれないぞ」
「確かにそうかもしれないわ。アルカナ王女様が参列するとの情報もないはずよ。明日ならみんなの目を盗んでアルカナ王女様にお会いすることができるかも知れないわ。あとはシェダルをどうするかだわ・・・」
ケルトとヒーリンは考え込むのであった。
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