終焉の姫と聖女の姫

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ゴブリンの村 パート6

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 「ダクネスちゃん!ダクネスちゃん」


 私は少女と話している間はずっと目をつぶって瞑想にふけっている感じになっていたので、一向に目開けずに魔法も発動しない私を見てモルカナは心配して私に声をかける。


 「な・な・なんですか?モルカナおじちゃん」


 私はモルカナの呼び掛けで我に返った。


 「まだ、ダクネスちゃんには早かったかな?ずっと目を瞑っていても魔法は発動しないよ」


 モルカナは心配そうに私を温かい目で見ている。


 「大丈夫ですぅ。少しイメージが湧いてきたのですぅ」


 少女が教えてくえた通りになぜ炎が燃えるのかイメージした。確か火が燃えるのは『可燃物』と『酸素』と『熱』の3つが揃うと火が燃えるはず。そして、物質と酸素が結びつくことによって熱と光が発生して、この光と熱の正体が火のはず。だから火は物質でなく熱と光を出している現象のはず。


 「あれ?なんで私はこんなことを知っているのかしら?今、炎をイメージしたらスラスラと頭の中の記憶の引き出しから溢れんばかりの知識が出てきたわ」


 私はモルカナから色々教わっているが、このような初歩的な科学的知識など持ち合わせてはいなかった。しかし、自然と脳から情報が引き出されたのであった。私は深く考えるのは辞めにして火炎球を作ることに専念した。


 「ダグネスちゃん!ストップ。ストップ」


 モルカナは額から滝のような汗を流しなが私に大声で叫んだ。

 私は意識を集中するために目を閉じていたのでそっと目を開けてみた。目の前には小さな火炎球が現れていた。私の魔法は成功したみたいだ。


 「わーーい。わーーい。火炎球を作るのに成功したですぅ」


 私は初めて火炎球を作れてぴょんぴょんとうさぎのように跳ね回る。


 「ダクネスちゃん!早く魔法をリセットして」


 モルカナの様子が明らかにおかしい。私の初の火炎球の成功に喜んでいる様子には見えない。それどころか、額に汗を垂らしながら顔面蒼白で今にも倒れ込みそうである。


 「モルカナおじちゃん・・・体調が悪いのですか?」

 「そうじゃない。そうじゃない。早くこの悍ましいほどの魔力を感じる火炎球を消し去るのだ!この火炎球が爆発したらこの村は吹き飛んでしまうぞ」


 私が作った火炎球は見た目は小さいが、その小さい炎の玉の中には甚大な魔力が注ぎ込まれていて、まるで小型の爆弾のように出来上がってしまったのである。


 「どうやったら消し去ることができるの?」


 私は火炎球の作り方は教えてもらったけど消し去る方法は学んでいない。


 「イメージした火炎球が消え去ることをイメージするのだよ」

 「はーーい」

 『違うよ。炎の魔法なら炎がどうしたら消えるかをイメージするのだよ』


 また少女が私にアドバイスをしてくれた。

 火を消化するには、除去消化・窒息消化・冷却消化の3つの方法がある。除去消化は可燃物を除去する方法。窒息消化とは酸素供給体を断つ方法。冷却消化は冷却して点火源から熱を奪い、燃焼物を発火点以下に下げる方法である。

 今回の場合は窒息消化が妥当だと私は判断してイメージをした。

 すると炎はパッと消えてなくなった。


 「ダクネスちゃん・・・どうやってイメージしたらこんな膨大な威力を持つ火炎球を作り出すことができのだ!」


 モルカナは炎が消えてホッとすると同時に、私が作り出した莫大な破壊力を持った火炎球のことが気になって仕方がない。


 「炎ができる仕組みをイメージしたのですぅ」

 「炎ができる仕組み?」

 「そうですぅ。なぜ炎ができるかイメージしたのですぅ」

 「いや、火炎魔法は炎の形をイメージすることで魔力を炎に具現化することができるはずだ。それに炎ができる仕組みと言われても意味がわからないぞ」

 
 『そのおっさんは知識量が乏しいからしょぼい炎しか具現化できないのです。今は昔に比べて魔法科学の研究が全くなされなくなったので、しょぼい魔法しか具現化できなくなったいるみたいね』


 少女が私に説明してくれた。

 私は少女が教えてくれたことをモルカナに説明しても信じてもらえない気がしたので、私が炎を具現化した時のイメージを説明するのは諦めた。


 「偶然できたのかもしれないですぅ。もう一度試してみるですぅ」


 一度イメージしてできた魔法は、次からは簡単に構築することができる。しかも、威力を増やすことはさらなるイメージが必要だが、威力を下げるのは、音量のボリュームを下げる感じで魔力によって調整ができる。

 私は最大限にボリュームを絞って火炎球を作り出した。


 「おお、これは立派な火炎球だ。初めてでこれだけ精度の高い火炎球を作ることができるなんてダグネスちゃんは魔法の才能があるに違いない。でも、きちんと制御できるようになるまでは火炎球の魔法は使わないほうがいいかもしれない・・・」


 最小限に作った火炎球でもモルカナは、真剣な顔をして私に安易に火炎球の魔法を使うことは禁止した。モルカナは私が魔法の制御がまだきちんとできていないと判断してのアドバイスであった。




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