終焉の姫と聖女の姫

双子の王女 パート6

　俺の名前はアンダード。短髪の黒髪で185cmと兵士としては体格的にも恵まれている。そして俺は平民出身でありながら『称号』を持って生まれた。俺の『称号』は『剣士』だ。『レア称号』ではないが平民の子供が『称号』を持って生まれてくるのは非常に珍しい事である

　王族関係者は、90%の確率で『称号』を授かって生まれてくるが『レア称号』となると確率は10%と下がってしまう。そして、貴族にいったっては50%の確率で『称号』を授かって生まれ『レア称号』になると1%と王族関係者よりかはかなり低くなる。そして平民など貴族・王族以外の血筋の者になると『称号』を持って生まれる可能性は1%未満であり『レア称号』に至ってはほぼ0であると言われている。

　人間の能力が全て『称号』で決まるわけではない。しかし、『称号』を授かって生まれた者は、『称号』を持たざる者に比べてはるかに能力が高い。俺は『剣士』というありふれた『称号』であるが、生まれた町では剣での戦いに負けたことはない。しかしそれは『称号』だけの力でなく、『称号』の力を引き出す努力をしたからである。

　『称号」を持っている者が努力をすれば、『称号』なしの人間は太刀打ちできないほどの強さを手入れることができるのである。

　この国では『称号』を授かって生まれた者は、8歳になると国からの支援を受けてグロワール王立学園に無料で入学できるのである。しかもこれは強制であり断ることはできない。しかし、住む場所も食事も無料で提供されるので断るという選択肢はない。デンメルンク王国では『称号』を授かって生まれた者には手厚い待遇をして、国の戦力として育てる方針なのである。

　そして俺は喜んでグロワール王立学園に入学し、地獄のような訓練に耐えて、王国騎士団に入団することができたのである。


　「アンダード中尉、今日付で大尉に任命する」

　「ありがとうございます」


　俺は王国騎士団に入団して、3年という短い歳月で大尉になるまでに成長した。『剣士』の『称号』は、『称号』の中では平凡だが、俺の直向きな努力で『剣士』の『称号』持ちの中では最強の力を付けて、デンメルンク王国内では『ソードマスター』と呼ばれていた。


　「大尉になって早々に重大な任務をアンダード大尉に担ってもらいたい」

　「なんでもやらせてもらいます」

　「これは極秘任務だ。決して身内にも言うことは許されない」

　「わかりました」
　
　「任務の内容はディスピア王女様をハイドランジア国にへお連れすることだ」

　「はい」

　「ハイドランジア国に行くには、ゴブリンの森の近くを通らないといけない。ゴブリンは温厚な亜人種だが、不用意に縄張りに侵入すれば攻撃的になり厄介な相手だ。しかも、最近ゴブリンキングが誕生したとの噂も流れている。アンダーソン大尉の腕なら問題ないと思うが、ディスピア王女を御運びになるのだから、できるだけ危険は避けるようにしてくれたまえ」

　「わかりました」


　俺はディスピア王女様をハイドランジア国に運ぶという大役を任された。王女様は噂では『称号』なしで生まれたので、辺境の地に追いやれるという噂が立っているが、そんなことは俺にはどうでも良いのである。俺はこの大役を成功させてさらに上を目指すのである。

　辺境の国ハイドランジア国へ行くには安全なルートなどない。ゴブリンなど亜人種が住む森や輸送物などを狙って襲ってくる盗賊団などが縦横無尽に闊歩しているのである。王女様の護衛は総勢で30名である。その中には王女様の乳母を務める俺の婚約者の妹さんもいる。彼女の名前はルゥ。『癒師』の『称号』を持つ中流の貴族である。彼女は治癒魔法が得意であり難病の姫の看護には適任なのである。


　「アンダードさんと一緒に護衛の任務に就けるなんて光栄ですわ」

　「滅相もありません。大尉としての初の任務になりますので、ご迷惑をかけないようにします」

　「そんな丁寧な言葉使いをしなくても結構ですわ。アンダードさんは大尉になれたので、もう少し偉そうにしても良いのですわ」


　俺は平民の出身そして、周りは貴族の方々ばかりなので礼儀はしっかりとしないといけないと思っていた。しかし、俺は『称号』を持って生まれたので学院でも王国騎士団でも差別的な発言を受けたことはないし、みんな優しく接してくれる。しかし俺はみんなの優しい扱いに奢れるわけにはいかないと学園の頃から思っていたので、常に平民としてへりくだって対応するのである。


　「アンダード大尉、ルゥさんの言う通りです。あなたは平民でも『称号』を持って生まれた選ばれし者です。そして、『称号』の名にはじない努力をしてきたことを俺はずっと見てきました。大尉の身分らしく堂々たる立ち振る舞いをしたほうがい良いと思います」

　「ありがとうザッカリー。でも、俺は俺らしく振る舞いたいと思います」

　
　ザッカリーは学院時代からの親友である。彼も俺と同じ『剣士』の『称号』を持っている。


　「今回の任務はかなり危険な任務だと思っています。王女様をハイドランジア国に運ぶ事は国中の人間が知っています。必ず王女様と一緒に運ばれる装飾品を奪いにくる盗賊達がいるはずです」

　「それは重々承知の上であります。なので、上からの命令で、あえてゴブリンの森の近くを通るルートを行くように指示されています。比較的に安全なルートは見晴らしもよく魔獣は少ないですが、盗賊達が監視しやすい場所になっています。それに、盗賊達の裏をかいて危険なルートを通る方が返って安全だとの指示でございます。ゴブリンキングの脅威はありますが、私とザッカリーがいれば勝てない相手ではないと思います」

　
　俺とザッカリーは学院時代から、共に剣の腕を磨いてきた親友である。2人のコンビネーションがあればゴブリンキングでも勝てると俺は思っている。


　「アンダードさん、出発の時間が近づいていますわ。お城へ向かいましょう」

　俺は静かに仲間達と共に王女の護衛の任務に向かうのであった。