終焉の姫と聖女の姫

ninjin

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双子の王女 パート1

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  私は少し揺れる馬車の中、1人の女性の優しい手の温もりを感じながらスヤスヤと眠っていた。私はまだ生まれたばかり赤子であるが、なぜかその時の記憶が未だに残っている。

 私は辺りが騒がしくなってきたのでふと目を覚ました。すると先ほどまで私を抱いていた女性の姿はなく、白い仮面をつけた女性が私を抱えていた。そして、その女性の横にはとても大きくて黒い仮面を被った男性がいた。

 仮面でその男の顔は確認できないが、とても悲しそうな雰囲気を感じた。私は咄嗟に両手を男の顔に突き出して笑顔で微笑みかけた。私にはその男がなぜか悪い人には思えなくて、どこか暖かい雰囲気を感じていた。

 しかし、その男は大きな斧を振り上げて私のお腹は真っ二つに切り裂いたのであった。




⭐️少し時は遡ります。

 

 デンメルンク王国にて双子の姉妹が誕生した。


 「ロード国王様、元気な双子の女の子の赤ちゃんが生まれました」

 「そうか!それは非常に喜ばしいことだ。どのような『称号』を持って生まれたのか楽しみだ」


 デンメルンク王国のロード・レーヴァンツァーン国王には3人の正妻がいた。第一王妃のアプロディーテー、第二王妃のシャリーズ、第三王妃のヴァルキリーである。双子の赤子を授かったのは第三王妃のヴァルキリーであった。


 この世界では生まれながらに『称号』という能力を持って生まれてくる子供がいる。『称号』には2種類あり1種類目はレア称号である。これは、特別な能力を授かり、その『称号』に相応しい生き方をすることが求められる。

 例えば、ロード国王は『覇王』という『レア称号』を授かって生まれた。『覇王』の『称号』は王になるために資格であり、『覇王』の『称号』のない者は王になることはできない。ロード国王は激しい王位争いを勝ち取り王位につくことができた。


 もう1種類の『称号』は職業的な『称号』である。『戦士』『剣士』『魔法使い』などである。この『称号』を持って生まれた者は、その『称号』に秀でた力を持っているので、『称号』を持たない者に比べると圧倒的な力を持っているのである。


 
 「『称号』の儀は3日後に行う予定です。2人の王女様はさぞかし素晴らしい『称号』をお持ちだと思います」


 『称号』は選ばれし子のみ神から授けられると信じられている。なので、国民の大半は『称号』を持っていない。そして、王族や貴族は『称号』を持って生まれる子は多い。



 双子の姉妹は、長女はアルカナ妹はディスピアと名付けられた。アルカナは光り輝く黄金の瞳をしていて見るものを惹きつける魅力的な瞳である。一方ディスピアは銀色の瞳をしていてどことなく不気味な雰囲気を醸し出していた。

 『称号』を鑑定できるのは、『神の巫女』と呼ばれる『レア称号』を持った者である。アルカナとディスピアは、デンメルンク城の中にある教会で『神の巫女』の手によって鑑定がなされる。

 
 ⭐️3日の後の教会にて・・・


 「王女様の鑑定を行わせてもらいます」

 真っ白な修道女のような服を来た美しい女性が、デンメルンク王国にいる7人の『神の巫女』の称号を持つ1人ミカエルである。ミカエルは、最初に長女であるアルカナを教会にある神聖な六角形の台座に載せて、称号鑑定の魔法を使ってアルカナの『称号』を天井に映し出す。

・・・聖女・・・

 教会の天井に映し出されたのは『聖女』という文字であった。


 「ロード国王様、アルカナ王女様の『称号』は『聖女』でございます。『聖女』は光魔法を全てを使いこなす能力と神の奇跡を起こせるSSSランクの『レア称号』です。これでデンメルンク王国の安泰も決まったも同然です」

 「さすが、私の血を引く娘だ。ヴァルキリーも喜んでいるだろう」


 ロード国王はとても満足している。もし、王族の子供が『称号』なしで生まれることがあれば、それは王族の恥であり『称号』なしを産んだヴァルキリー王妃の立場も危うくなるのである。なので、王族の子供が生まれてすぐに亡くなった時は、『称号』なしで生まれたので殺されたと思っても間違いないのである。それほど王族にとって『称号』は大事なのである。


 「次はディスピアの番だな。双子だから、この子もSSSランクの『称号』持ちに違いないぞ」


 ロード国王は子供のようにはしゃぎながら言った。


 「では、ディスピア王女様を鑑定いたします」


 教会の天井に映し出された文字は・・・

 ・・・終焉妃・・・


 「・・・」


 ミカエルはディスピアの鑑定結果を見て顔が青ざめていた。そして言葉を発することができずにガクガクと震えていた。


 「しゅうえんひ???どういうことだ!」


 ロード国王は称号の意味が分からずに困惑している。


 「ミカエル、終焉妃とはどのような『称号』なのだ!」

 「それは・・・」


 ミカエルは躊躇している。


 「私が説明いたします」


 王族の『称号』の鑑定の儀は、国家の重大な機密儀式であるので、参加者は決められている。参加できるのは、ロード国王、神の巫女ミカエルそして、デンメルンク王国ミレニアム教会のトップであるシンシ教皇の3人のみである。

 シンシ教皇は、『聖人』という『レア称号』を持っている。そして、その『称号』の能力を駆使して、デンメルンク王国ミレニアム教会の教皇まで上り詰めた男である。


 「『終焉妃』はSSSSランクの『レア称号』です。しかし、その『称号』の能力は未だ解明は出来ていません。解明出来ていない理由は、あまりにもレアな『称号』なので、前例がほとんどないからです。しかし、私が読んだ文献によりますと、1000年前にこの世界の全てを支配していたとある大国の第2王女が『終焉妃』の『レア称号』を持って生まれたそうです。そして、その大国は第2王女の手によって終焉を迎え、あらゆる最先端の技術を破壊し人類が滅亡したと記載されています。この文献が内容がどこまで真実なのかわかりませんが、1000年前がどのような世界だったのか記すものはないのは、第2王女の手によって全てが破壊されたためだと言われています。


 全世界を支配したとある大国が滅亡した理由は謎であり、本当にそのような国があったのかさえ謎とされている。しかし、とある文献には『終焉妃』の『称号』が原因とされている。なので『終焉妃』の『称号』を持って生まれた子が現れた時、再び世界は滅ぶと記載されていた。


 「そ・・そんな・・・あり・えない・・・」


ロード国王は両膝をついて崩れ落ちた。そして頭を抱えて叫び出した!


 「この世界は滅ぶのか!!!そんなことは絶対にさせないぞ」


 デンメルンク王国は300年も続いてる歴史のある国である。国の大きさは中規模だが、『称号』持った人物の育成に励み大国をも退ける軍事力を持つ国なのである。


 「滅ぶと確定したわけではありません!」

 「殺せ!その呪われた子を今すぐ殺すのだ」


 ロード国王は冷静さを完全に失っていた。

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