上 下
112 / 116

デジャブ

しおりを挟む
 私は皇帝の間で特性の果実ジュースを飲ませてもらって退出した。


 「さて、果実ジュースもごちそうになったし、ブランシュちゃんのところに戻ろうかしら」

 「そこのお嬢さん、いい薬があるけどタダで飲んでみるかい!」


 私が美しい帝都イリスの町並みを眺めながら帰っていると、1人の男性が声をかけて来た。


 「お薬ですか?」

 「そうだよ。魔力や筋力が一時的にアップする特殊の薬だよ。お嬢さんは可愛いから特別に無料でプレゼントしてあげるよ」

 「む・・・無料ですか!!!」

 「あなたにだけ特別に無料なのです!この幸運を逃しては絶対に損しますよ」

 「でも、私魔力も筋力もいらないです」

 「待ってください。今なら特別に10錠差し上げます。本来なら1錠しかお渡しできないのですが、あなたは可愛いので特別サービスです」

 「10錠も貰えるのですか!」

 「はい。あなた様だけ特別です。私はボスに叱られるのを覚悟してお渡しすることにしました」

 「うーん・・・でもいらないや」

 「おい!そこのお前、何をしている」

 「げ!やばい。逃げろ」


 男は衛兵に声を掛けられると一目散に逃げて行った。


 「逃がすな!あいつを捕まえろ」


 衛兵は大声をあげて別の衛兵に知らせる。


 「お嬢さん大丈夫ですか?」

 「はい。なにも問題はありませんよ。あの方はどちらさんでしたの?」

 「おそらくですが、イーグルネイルかホークアイの売人だと思います。あいつらは最初は無料でMYKを提供してMYKの虜にする危険な奴らです。まさか帝都イリスまで乗り込んで来るとは予想外でした。厳重に正門で身分確認をおこなっているはずなのですが・・・」

 「そうなんですか。危うく騙されるところでした」

 「世の中無料ほど危険なモノはないので気を付けてくださいね」

 「はーい」


 私は騒ぎをよそに帝都イリスから立ち去って行った。


 「さて、本気走りでブランシュちゃんの元へ行きますか!」

 「おい!小娘ちょっと待ちな」

 「え!」


 私が振り返ると先ほどの売人が居た。

  
 「俺様から逃げられると思うなよ」

 「私別に逃げてませんよ」

 「やかましい!衛兵を連れて来るなんて猪口才なマネをしてタダで済むと思うなよ」

 「タダより怖いモノはないと教えてもらったので、タダで済まない方が助かるわ」

 「俺にそんななめた態度をとっているとどうなるのかわかっているのか?俺は泣く子も黙る大悪党イーグルネイルの『赤朽葉の爪』の売人アルツナイ様だ」

 「初めましてアルツナイさん。私はハツキと申します!」

 「なかなか礼儀正しい小娘だな。だがしかし!俺にいくら媚びを売っても無駄だぞ。俺は売人のなかでも毎月トップの営業成績をほこる優秀な売人だ。しかも、MYKを売るだけの3流の売人とは俺は違うのだ。おれは上司の趣味趣向を調べ上げ、何を欲しているか理解しそれをサプライズでプレゼントする超一流のごますり売人だ。お前はボスの好みに見事にマッチしているのだ。お前をMYK中毒者にして、ボスにプレゼントする予定だったが、力ずくでお前を連れ去ることにしたぞ」

 「『赤朽葉の爪』のボスさんに会わせてくれるのですか?私ボスさんに会ってみたいと思っていたので案内してください」

 「ま・・・まさか!お前は・・・キューンハイト様のファンなのか?」

 「ファンじゃないですよ。ちょっと用事があるだけです」


 私は『黒天使』に依頼する予定の案件を自分で解決することにした。


 「ボスも隅に置けないお方だ。いつの間にかこんな若い女の子のファンを作っていたとは。俺の諜報力もまだまだだな」


 私は『赤朽葉の爪』の売人となのる男性の馬車にのってアジトに向かうことになった。


 「ここからどれくらいかかるのですか?」

 「馬にMYKを服用させたから2時間程度で着くだろう」

 「2時間もかかるのですか?私退屈なのでお昼寝でもしときますね」

 「好きにするがいい。お前が自由に楽しめる時間はあと2時間ということなのだからな。その2時間を大事に過ごすといい」


 私は馬車が揺れる一定の振動のリズムが子守歌のように感じてスヤスヤと眠ってしまった。


  「起きろ!着いたぞ」

 「もう朝ですか?」

 「違う!MYKの製造工場に着いたのだ。お前は今からボスの愛人として一生奴隷として生活をするのだ」

 「えい!」


 私は売人の男にチョップをしてあの世に送ってあげた。


 「悪者は許さないのよ。さて、ここが悪党のアジトなのね。ボスを拘束して皇帝陛下に差し出さないと」


 私は馬車の荷台から辺りを見渡した。周辺には小さな家が10件ほど建てられていて、その中心に大きな白い建物が立っていた。


 「あ!ここは以前に来た病院に似ているわ」


 私は荷馬車から降りようとした。


 『バタン』


 私は目の前が急に真っ暗になり、荷馬車の中で倒れてしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

異世界転移は分解で作成チート

キセル
ファンタジー
 黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。  そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。  ※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとかコメントとかください(′・ω・`)。  1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。  よろしければお気に入り登録お願いします。  あ、小説用のTwitter垢作りました。  @W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。  ………それと、表紙を書いてくれる人を募集しています。  ノベルバ、小説家になろうに続き、こちらにも投稿し始めました!

出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ
ファンタジー
主人公の少年ジンが村を出て10年。 国家錬金術師となって帰ってきた。 村の見た目は、あまり変わっていないようでも、そこに住む人々は色々と変化してて…… そんな出戻り主人公が故郷で錬金工房を開いて生活していこうと思っていた矢先。王都で付き合っていた貧乏貴族令嬢の元カノが突撃してきた。 「私に貴方の子種をちょうだい!」 「嫌です」 恋に仕事に夢にと忙しい田舎ライフを送る青年ジンの物語。 ※話を改稿しました。内容が若干変わったり、登場人物が増えたりしています。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
【弱体術師】に選ばれし者、それは最弱の勇者。 それに選ばれてしまった高坂和希は王国から迫害を受けてしまう。 唯一彼の事を心配してくれた小鳥遊優樹も【回復術師】という微妙な勇者となってしまった。 なのに昔和希を虐めていた者達は【勇者】と【賢者】と言う職業につき最高の生活を送っている。 理不尽極まりないこの世界で俺は生き残る事を決める!!

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。 テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。 イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。 イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。 それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。 何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。 捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。 一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。 これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。

処理中です...