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一件落着
しおりを挟むフェアバルターは私に踏み潰されて命を失った。
「何が起こったっていうの?」
アベリアは一瞬の出来事で理解できていない。
「ハツキお姉ちゃんがアイツを殺したって事は、生き残っているアイツも敵なんだね」
私がフェアバルターを踏み潰した痕跡を見て、生き残ったアベリアも敵であるとプリンツは理解した。
プリンツはスピードを落としてアベリアをじっと観察をする。
「どう見ても強そうな相手には見えない。でも、アイツはハツキお姉ちゃんが敵だと判断した人物だ。僕がアイツを退治しないといけないはずだ」
プリンツはアベリアに対して警戒しつつゆっくりと近づいていく。
「フェアバルター様・・・」
アベリアは私に踏み潰されたフェアバルターの遺体に近寄り声をかける。そして、アベリアの元へプリンツが接近した。
「なんで、こんなところにヴォルフ族がいるのよ!」
プリンツの姿を見たアベリアは恐怖のあまりに気絶した。
「気絶したのかな?そういう事だったんだね!こんな弱い人間を殺す意味がないからハツキお姉ちゃんは、この女を無視して王都へ向かったんだね」
プリンツは、アベリアを放置して王都へ向かう事にした。
「王都に入る門は兵士さんでいっぱいだわ。裏手からジャンプして行くことにしましょ」
ゼーンブスト国王は、魔獣たちの襲撃に備え王都の門の前に王国軍を配備していた。私は先を急いでいるので、裏手に回ってショートカットすることにした。
私はお城を守る大きな壁を軽くジャンプしてお城の中に潜入しブランシュの部屋に向かった。
「やっとブランシュちゃんのお部屋の前に着いたわ」
『ドンドン・ドンドン』
「ブランシュちゃん、私よ部屋の扉を開けてちょうだい」
『ガタン』
部屋の扉が開いてブランシュが姿を見せる。
「ブランシュちゃん、もう大丈夫よ!『黒天使』さんが魔獣を退治してくれたわ」
「本当なの!」
「本当よ。私がモォーモォー山に到着した時は、すでに魔獣は死んでいたのよ」
「そういうことだったのね」
ブランシュは理解した。以前プリンツと話したときに感じた王都に迫り来る脅威とはこの事だったと。そして、この脅威に対してすでに準備をしていて、ヴォルフロードに力を借りて、ホワイトスネークキングなどの魔獣をすでに退治したことを。
「そうなのよ」
私は理解した。ブランシュちゃんは私達のことを『黒天使』だと名付けたが、本当に『黒天使』がいることを信じてくれたと。
「でも、証拠がないとお父様に報告することはできないわ。どうしようかしら」
「ブランシュちゃん、問題ないわ。魔石を拾って来たからこれを持っていけば信用してもらえるはずよ」
私は2つの魔石をブランシュに手渡した。
「ありがとう、ハツキちゃん。これで王都に住む全ての人の命が救われたわ」
ブランシュは部屋を飛び出してメルクーア大公の元へ走って行った。
「ハツキお姉ちゃん、やっと追いついたよ!」
プリンツはいろんな試練を乗り越えて確実に成長を遂げていた。以前なら、私の全力疾走に着いて行けずにかなりの距離を引き離されていたが、今回は5分ほどの遅れで私に追いついたのである。
「プリンツちゃん、早くなったわね」
「ハツキお姉ちゃんのおかげだよ。僕は少しずつだけど確実に強くなっているよ」
「そうね。プリンツちゃんは強くなっているはずよ」
私に褒められてプリンツは顔をくしゃくしゃにして喜んでいる。
「メルクーア様、ブランシュ王女殿下が大事な話があるとおっしゃっています」
「すぐに通せ」
兵士はブランシュを王の間に案内する。
「お父様!『黒天使』さんが魔獣を退治してくれました」
「本当か!こんなに早く魔獣達を退治したのか」
「実はお父様、『黒天使』さんはこの最悪の事態を想定していたようです。ハツキちゃんが『黒天使』さんに連絡をしに行った時には、既に魔獣を討伐した後だったそうです」
「さすが『黒天使』様だ!」
「はい。これが討伐した証です」
ブランシュは魔石をメルクーア大公に渡した。
「兄上、すぐにこの魔石の鑑定の許可をください」
「もちろん許可する。すぐに王国魔導技師に鑑定させてこい」
「はい」
メルクーア大公は王の間を飛び出して行った。
「ブランシュ、この度の活躍ご苦労であった」
「ありがとうございます陛下。しかし、私は何もしていません。王都を救ってくれたのはハツキちゃんと『黒天使』さんです」
「それはわかっている。しかし、お前と0の少女が友達でなければ、王都は崩壊していたかもしれない。お前の存在が王都を救ってくれたのだ」
「ありがたいお言葉感謝致します。しかし、陛下が私をお城の地下で匿ってくれたので、私はハツキちゃんと知り合うことができたのです。全て陛下の御心の賜物だと思います」
ブランシュは、頭を下げてあらためてお礼を言った。
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