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責任は取ります!

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 「メルクーア、詳細はわかったのか?」

 「兄上、まだ詳しい取調べは出来ておりません。騎士団所に連行しようと考えましたが、内通者がいる可能性も考えられますので、私が取り調べをするつもりです」

 「あのライスフェルトが俺たちを裏切っていたのかと思うと残念でならない」

 「はい。私も悔しい気持ちでいっぱいです。しかし、ライスフェルトだけでなく他にも内通者がいる可能性が高いと思います。ライスフェルトは0の少女を襲う予定でした。なぜ?0の少女が襲われたと思いますか?」

 「もしかして、『黒天使』と繋がりがあるからなのか?」

 「おそらくそうでしょう。『黒天使』様の所在を探るために0の少女を襲ったと思います」

 「という事は・・・ライスフェルトは『イーグルネイル』だったのか?」

 「間違いないでしょう。しかし、ライスフェルトはどうやって0の少女が『黒天使』様と友達であること知りうることができたのでしょうか?この事を知っているのは私の娘と陛下と執事のフェアヴァルターです」

 「アイツも裏切り者だったのか・・・」

 「間違いないでしょう。今、兵士たちにフェアヴァルターを探すように命令をしましたが、どこにも姿がないのです」

 「まさか、ここまで『イーグルネイル』の手の者が入り込んでいたとは・・・」

 「私どもの落ち度であります。早急に全ての者の素性を調査したいと思います」

 「任せたぞ」


 執事のフェアヴァルターは、『イーグルネイル』から送り込まれたスパイであった。フェアヴァルターは、ヴァイスからモォーモォー山から魔獣が押し寄せてくる事を教えてもらったので避難したのである。


 次の日。


 「ハツキちゃん、もうお腹の調子は大丈夫」

 「お腹も引っ込んだみたいだし問題ないわ」


 ケーキの食べ過ぎで大きく膨らんだお腹も、やっと元のお腹に戻ったのである。


 「それならよかったわ。ハツキちゃん、今日は何か予定でもあるのかしら?」

 「アイリスさんに作って欲しい物ができたのでヘンドラー男爵の屋敷に戻ろうかと思っているわ」

 「もう、帰ってしまうのね。寂しくなるわ」

 「また遊びに来ますよ」

 「ブランシュ!大変だ」


 血相を変えてメルクーア大公がブランシュの部屋に入ってきた。


 「どうしたのお父様!」

 「た・・・大変な事が起こりそうなのだ」

 「お父様、きちんと説明しないとわからないですよ」

 「そうだったな。実は、王都にモォーモォー山からホワイトスネークキングを筆頭にビックタイガーライオンなどの魔獣の群れが襲ってくるのだ!」

 「え!本当なの」

 「間違いないだろう。ライスフェルトが嘘を言っているように思えない」


 ライスフェルトは意識を取り戻した後に、メルクーア大公の厳しい取り調べにより、モォーモォー山からたくさんの魔獣が押し寄せてくる事をはいたのである。


 「私たちはどうなるの?」

 「すぐに警備を固めて対抗するつもりだがどうなるかわからない。冒険者ギルドにも応援を要請したが、『青天の霹靂』『恒河社』など有能な冒険者は朝早くから出かけているので、応援は難しいとの事だった」

 「このままだと王都は魔獣の群れに襲われて崩壊してしまうのね」

 「その可能性は高い。そこでだ・・・無理を承知でお願いしたい。0の少女から『黒天使』様に応援を要請してもらえないだろうか?」

 「お父様、無理よ!いくら『黒天使』さんでもモォーモォー山の魔獣の群れを倒すのは不可能よ」


 ブランシュは、『黒天使』の正体が私とプリンツである事を知っている。プリンツ1人でモォーモォー山のたくさんの魔獣を相手にするのは不可能だと思ったのである。

 
 「しかし、この最悪の事態を回避できるのは『黒天使』様しかいないだろ」

 「無理よ。ホワイトスネークキングは牛牛王よりも残忍かつ凶暴だと文献で読んだわ。それにビックタイガーライオンは1000名の兵士と同等の力を持つとも書いてあったわ。いくら『黒天使』さんでも勝てるわけないのよ」


 ブランシュは私たちを危険な目に合わせたくないので、目に涙を浮かべながらメルクーア大公に訴える。


 「ではどうすればいいのだ。このまま魔獣たちの餌になればいいのか!」


 メルクーア大公も王都の住民を守るために必死である。


 「私、『黒天使』さんに頼んできます」

 
 私は王都の住人を助けるために立ち上がった・・・わけでなく、部屋の扉を壊した気まずさから引き受ける事にした。


 「ハツキちゃん無理よ!!!」


 ブランシュは私の胸に飛び込んできた。そして、メルクーア大公に聞こえないように小さな声で話しかけたきた。


 「ハツキちゃん、無理をしないで。あなたはみんなのために十分頑張ってくれたわ。もう、これ以上自分を犠牲にしなくてもいいのよ」


 ブランシュは涙を流しながら私を強く抱きしめる。


 「ブランシュちゃん、大丈夫よ。なんとかなるわよ」

 「でも・・・」

 「私には、やらなければいけない責任があるのよ」


 もちろん、扉を壊した責任である。


 「本当にあなたって人は・・・どこまでお人好しなの」


 ブランシュは涙を流しながら微笑んだ。


 「すぐに行って来るわ」


 私は、扉を壊した後ろめたさから逃げるように部屋を出ていく。


 「頼んだぞ!0の少女」


 メルクーア大公は私に全てを託したのであった。
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