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ダイエット

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 メルクーア大公から報告を受けたゼーンブスト国王は、すぐに白銀狐と雪狐の毛皮が本物であるか王国魔導士団に鑑定をさせた。毛皮が本物であると確認されるとオランジェザフト帝国に使者を送り、元オランジェザフト領であった雪の大地の調査を行うことにした。もちろん、オランジェザフト帝国と共同して行うので、オランジェザフト帝国の返事を待ってからになる。

 次にゼーンブスト国王は、謎の冒険者『黒天使』をどのように扱うかメルクーア大公と相談した。その結果、『黒天使』を王者ランクに認定して、その偉業を国民にアピールすることにした。それは『黒天使』の存在を他国や盗賊達への威圧にもなるからである。

 火炎竜王の鱗を入手し、白銀狐との和平を結んだ王者ランクの『黒天使』の名は、すぐにヴァイセスハール王国中に広まり、また、使者の報告によりオランジェザフト帝国中にも名はすぐに広まるのであった。


 しかし、ヴァイセスハール王国には一つ気がかりな案件があった。それは、アーモンドとリーゼ、ローゼから報告であった。


 「メルクーアよ、アーモンド達からの報告はどうのように対処すれば良いと思う」


 「モォーモォー山の牛牛王が倒されたことは吉報と言えますが、その相手がヴォルフロードとなると話は別になります。ヴォルフロードは、精霊樹様が押さえ込んでくれていますが、先のオークキングの戦闘に次は牛牛王との戦闘と少しずつですが王都に近づいています。もしかすると、精霊樹様の力が弱くなってしまい、ヴォルフロードを押さえ込むことができなくなり、領土を拡大しつつあるのかもしれません。そして、いずれ王都にもヴォルフロードが攻め込んでくる可能性があると思います」

 「そうか・・・アーモンドたちの報告だと魔牛やホルスタインなどのCランクの魔獣の死体もたくさん転がっていたそうだ。モォーモォー山には牛牛王以外にもA、Bランクの魔獣が生息する危険な山だ。ヴォルフロードでも簡単にモォーモォー山を征服するには時間がかかるだろう。それまでに王都の警備を固める必要がありそうだな」

 「はい。しかし、いくら有能な兵士や冒険者を配備したところで、ヴォルフロードを撃退できることは難しいと思われます。娘を救って下さった『黒天使』様が味方についてくだされば問題ないと思われますが・・・」

 「謎の冒険者『黒天使』・・・どうにか味方につける方法はないのか?」

 「そういえば、娘は0の少女が『黒天使』様の友達と言っていました。火炎竜王の鱗も白銀狐の毛皮も娘に届けてくれたのは0の少女です。直接『黒天使』様に依頼を出すことは不可能だとしても、0の少女にお願いすれば『黒天使』様も動いてくれるのではないでしょうか?」

 「それは名案だ!すぐに0の少女をここへ呼び出してくれ」

 「兄上、それは辞めておいた方がいいのかもしれません」

 「どういうことだ」

 「娘も0の少女も『黒天使』様のことを詳しく話すことを避けています。それは、『黒天使』様からの命令であります。この国の王であるあなたから命令を下せば、0の少女はその命令を断ることはできません。そのようなやり方をとれば、『黒天使』様の怒りをかって、我が国の元から去ってしまう可能性が・・・いえ、最悪の場合は敵対関係になってしまいます」

 「では、どうすれば良いのだ?」

 「私から娘にさりげなく言ってみます。幸いにも今0の少女は娘の部屋にいます。娘から0の少女にお願いすれば、自然と『黒天使』様の元にも兄上の願いが届くはずだと思います」

 「確かにお前の言う通りかもしれんな。この件はお前に任せることにしよう」

 「わかりました。すぐに娘の部屋に戻ることにします」


 ゼーンブスト国王とメルクーア大公が大事な話をしていた頃、私はノアールが用意してくれたケーキを3人で食べていた。


 「2日連続でケーキを食べれるなんて幸せですわ」


 私のほっぺはケーキの甘さで溶けてしまいそうである。


 「いつハツキちゃんが来ても良いようにケーキを多量に購入していて正解だったわ」


 ブランシュは、私が昨日美味しそうにケーキを食べる姿を見て、私が帰るとすぐにノアールに頼んでケーキを購入してくれていた。


 「ハツキちゃんのために用意していたのよ、好きなだけ食べてね」

 「は~い。でも、皆さんも一緒に食べてくださいね」

 「私は昨日たくさん食べたので、今日は一つだけにしておくわ」

 「私もそうします」

 「え!どうしてたくさん食べないのですか?」

 「毎日欠かさずにトレーニングをしているけど、ケーキはカロリーが高いので今日は控えることにしたのよ」

 「私もです。メイド服は体のラインを強調する仕様になっていますので、体のラインを崩すことができないのです」

 「そうね。私もお茶会などでドレスと着る機会が増えるので、体型を維持する必要があるわね」

 「え!私も食べ過ぎたら大変かしら?」


 私はずっと病弱で骸骨のようにガリガリだったので、体型を維持するという概念がなかった。逆に今は健康的な体になって嬉しいくらいである。


 「そうね。たまには大食いもいいかもしれないけど、毎日だとすぐに太ってしまうわね」


 『ガーーーーーン』


 私の頭に大きな鐘の音が響いたような気がした。


 「どうしましょう。どうしましょう」


 私はケーキを両手に持って右往左往によろめきだす。


 「ハツキちゃん、そんなに気にしなくても大丈夫よ!ジョギングなどの運動をして脂肪を燃焼させれば問題ないわよ」

 「ブランシュちゃん!ありがとう。私すぐにでもジョギングをしてくるわ」


 私は両手に持っているケーキをもったいないので全部食べほして、ブランシュの部屋を出ようとしたが、テーブルにはまだたくさんのケーキがある。


 「せっかく用意してくれたんだし、ケーキを全部食べてからジョギングするわ」


 私は一旦部屋を出ようとしたが、席に座ってテーブルにあるケーキを全部食べ尽くしたのであった。

 

 
 
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