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MYS工場

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 「見て!アーモンド先生。こんなにたくさんのホルスタインの乳袋をゲットしたわ」


 リーゼとローゼはたくさんのホルスタインの乳袋をゲットして嬉しそうにシュテーネン専門魔法学院にあるアーモンドの研究室に来ていた。


 「すごいじゃないの!これだけあればラヴリィ皇帝もお喜びになるでしょうね」

 「はい!私たちも莫大な報酬が貰えるので嬉しいです」


 リーゼとローゼは頬が落ちそうなくらいに笑いが止まらない。


 「ちょっと待って!この乳袋には一滴も乳液が入っていないわ」


 アーモンドが鑑定魔法を使って乳袋を鑑定すると乳液が0と表示された。


 「ちょっと、どういうことなの!他にも乳袋はたくさんありますので、アーモンド先生鑑定をお願いします」


 アーモンドは全ての乳袋を鑑定するが全て乳液が0と表示された。


 「そんなのありえないわ。なぜ?乳液が入ってないの」

 「わからないわ。どうやってこの乳袋をゲットしたのか教えてくれないかしら」


 リーゼとローゼは経緯を説明した。


 「ホルスタインが干からびて死んでいたのね」

 「そうです。私たちがホルスタインの幻惑に陥っている間に、デスカーニバルが起きて魔獣同士が争ったのだと思います」


 ホルスタインは、私に全ての乳液を絞りだされた後、衰弱死したのである。なので、乳袋に乳液が入っていないのは私の責任である。


 「モォーモォー山のボスである牛牛王も殺されていたのね」

 「はい。耳から血を流して死んでいました。でも、銀で出来た皮膚にヒビが入っていたので、死因は牛牛王よりも強固な体を持つ魔獣だと推察されます」

 「牛牛王よりも強固な体を持ち、ホルスタイン、魔牛を殲滅させる力を持った魔獣となると・・・」

 「ヴォルフロードでしょうか?」

 「そうね。ヴォルフロードで間違いないでしょう。『青天の霹靂』の情報では、オークキングとオークの大群もヴォルフロードに殺されたそうよ。聖霊樹様によって黒の森から出ることができないとされていましたが、何か黒の森で異変があったのかも知れないわ」

 「ヴォルフロードが、自由に動き出したら私たちはどうなるのでしょうか?」


 リーゼとローゼは不安げな顔をして怯えている。


 「私たちの国もあなた達の国も滅んでしまうかもね。それほどヴォルフロードの力は強大なのよ」

 「怖いわ。私たちが調子に乗ってたくさんの魔石と素材を取ってきたけど大丈夫でしょうか」


 リーゼとローゼは今にも泣きそうな顔をしている。


 「問題ないわ。『青天の霹靂』のショコラもヴォルフロードが倒したと思われるオークキングの牙を拾ってきて、陛下に内緒で商業ギルドに売りに来ていたわ。もちろんすぐに陛下に連絡をされ、ショコラはお小遣いをカットされて泣いていたわ」

 「あの・・・私たちもきちんと提出したほうがいいのでしょうか?」

 「大丈夫よ。陛下に提出しないといけないのは英雄ランク以上の素材と魔石だから、牛牛王はAランクなので冒険者が自由に取り扱っても問題ないわ。そして、ホルスタインの乳袋に乳液が全くなかったのは、ヴォルフロードの圧倒的強さに恐れて乳液をすべて発射したのだと思うわ」


 リーゼとローゼはフンデルトミリオーネン帝国の冒険者だが、ヴァイセスハール王国領内で手に入れた魔石や素材は、ヴァイセスハール王国の法律に遵守するのである。


 「没収されなくてよかったわ。でも、乳液が残っていなかったのは残念だわ」


 「でも、牛牛王がヴォルフロードに倒された事は、陛下に報告をする義務はあるわ。まずは冒険者ギルドへ行ってきちんと説明をしてくれるかしら」

 「もちろんです」


 リーゼとローゼはアーモンドと一緒に冒険者ギルドへ向かった。



 「ここが『赤朽葉の爪』のMYKの製造工場だな」


 『青天の霹靂』はオーストリッチの情報により『赤朽葉の爪』のアジトであるMYKの製造工場の付近に来ていた。

 オーストリッチは、一輪の薔薇がMYKSを多量に摂取して死んだことにより、『赤朽葉の爪』の一員だとバレてしまったので、罪を少しでも軽くするために知っていることを全て自供したのである。


 「お兄様、オーストリッチの話を全て信じてはダメよ。罠って可能性も考えられるわよ」

 「あいつは嘘をつけるようなヤツではない。ここが製造工場に間違いない」


 バルザックは少し焦っていた。自分がグレイヘロン達をのぞきでなく『赤朽葉の爪』の一員だと気づいていれば、一輪の薔薇は死なずに済んだかもしれないと責任を感じていた。


 「バルザック、シェーネの意見に俺も同意だ。オーストリッチはお前の言う通り嘘をついている可能性は少ないと思う。しかし、あのような臆病者が『赤朽葉の爪』の製造工場を知っているとは思えない。グレイヘロンに何かがあった時のためのおとりであると判断したほうがよいだろう」

 「しかし、こんな森の中に建物があるなんて明らかにおかしいだろ?ここが製造工場でなければ、なんの建物なんだ?」


 オーストリッチの情報では、フンデルトミリオーネン帝国とヴァイセスハール王国の国境付近の森の中に製造工場があるとのことだった。この森はどちらの国の領土でもなく、C、Dランク魔獣が住み着いている魔獣の森である。しかし、『青天の霹靂』が森に侵入すると魔獣は全くいない平穏な森であった。




 



 
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