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お茶会
しおりを挟むカノープスの町に着いた私たちはヘンドラーの屋敷に直行した。ヘンドラーの屋敷には先に到着していたバルザックとカーネリアンが屋敷の応接室にて私たちの帰りを待っていた。
「シェーネ、ショコラ、無事に到着したようだな」
「問題ありませんわ。お兄様こそマーチャント家をしっかり護衛なさっているのですか?」
「問題はない。今のところはな」
「今のところとはどう言うことなのでしょうか?」
「私が詳しくはお話しましょう」
ヘンドラー男爵は、アーベンに襲われた経緯を簡単に説明した後に、少し不安げな表情で新たな事件を説明した。
「実はシェーネさん、今のところ娘は無事です。しかし、娘の誘拐を依頼したと思われるクロイツ子爵からお茶会の招待状が来たのです」
「それは危険ですわ」
「そうなのです。子爵からのお茶会の誘いを断ることはできません。そして、護衛者など付けて参加すれば子爵の面子を潰すことになります」
「そうね。護衛者をつけると言うことは、子爵邸の警備の不備を指摘するようなものだしね。使用人を2名ほどつけるのが常識よね」
「そうです」
ヘンドラー男爵は私のほうをソッとみた。それは、私のことを話してもいいのかの合図である。もちろん、私は顔を横に振る。
「冒険者を使用人に変装させて連れていく方法はどうでしょうか?」
「それは難しいと思います。今回のお茶会には領主であるシックザナール伯爵、冒険者ギルドマスターのアーベンがお茶会に参加することになっています」
「それってかなり怪しくないのでは?」
「はい。確実に娘を誘拐するつもりだと思います。なので、ハツキさんを使用人として娘の側に付いていてもらう予定なのです」
「ハ・・・ハツキちゃんをそんな危ないところへ連れていくのですか!ヘンドラー男爵何を考えているのですか!」
シェーネは驚きのあまり大声になってしまった。
「ハツキさんと娘はとても仲が良いのです。ハツキさんがいれば娘も安心すると思います」
ヘンドラーは強引な言い訳をするがシェーネたちが納得するわけもない。
「私は構わないですよ。お茶会ってどのような物かとても興味があるの」
「ハツキちゃん、気は確かなの?とても危険なお茶会なのよ」
「私も参加するよん」
「ショコラ・・・あなたが参加するとお茶会が・・・いえ、その手があったわね。ショコラと私がお茶会に参加すればいいのよ!お茶会は招待状がなければ参加することはできないわ。でも、1つの紹介状に3人までの使用人が参加することが許されているはず」
「シェーネさんたちはあの有名な『青天の霹靂』のメンバーです。それに、ショコラさんはこの国の王女様です。すぐに正体がバレてしまいます」
「そうね。でもね、ショコラはこの国の王女だからいいのよ。お茶会に参加しに来たお王女を追い返すことなんてできるのかしら?それに私は公爵家の娘よ。いくらこの領地を任されている伯爵家でも私たちを追い返したら後でどうなるかすぐに理解するはずよ」
「確かに・・・その通りでございます。『青天の霹靂』のメンバーが2人もいれば、娘の安全はさらに強力なものとなります」
「俺たちは行かなくてもいいのか?」
「お茶会は淑女の嗜みの場になるのよ。男である理由で断られるのがオチですわ」
この異世界でのお茶会のメインは女性である。招待状のある男性は参加は許されるが、紹介状のない男性が入ることは雰囲気をぶち壊すことになるので、参加できないのである。
「わかった。しかし、すぐに応援に駆けつけることができるように、屋敷の外で待機をしているぜ」
「それは助かります。『青天の霹靂』さんが圧力をかけてくださると、クロイツ子爵も動きにくくなると思います」
クロイツ子爵のお茶会は明日である。急遽開かれたこのお茶会は、クロイツ子爵のの悪巧みが潜んでいるのは明白である。私の強さを知っているマーチャント家は全く心配をしておらず、ショコラに至っては、話をほとんど聞かずに何か物思いに耽っている様子であった。
「『真紅の爪』からの連絡はまだ来ないのか?」
「申し訳ありません。『真紅の爪』の副リーダーであるヴォルデ様からは、すぐにでもヘンドラーの屋敷を叩き潰して娘を拐ってくると聞いていたのですが、一向に襲う気配はありません。なので、私が代案を立てたお茶会にてヘンドラーの娘を連れ去ることにしたのです」
「今度は失敗はしないだろうな」
「はい。シックナザール伯爵様の協力も得ることができましたので、今回は完璧です」
アーベンは盗賊ギルドマスターとしての責任を果たすため、『お茶会大作戦』を立案したのである。このお茶会には、シックナザール伯爵に忠誠を尽くす貴族のみに招待状を出し、お茶会に参加したセリンセを堂々と連れ去り、参加者に自分らの都合の良いように証言をさせて、完全犯罪を成立させる計画である。なので、セリンセ以外の参加者は、全て騎士の男性でありお茶会などするつもりなど全くないのであった。
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