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白銀狐

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 「これで、私はこの部屋から出ることができるね」


 ブランシュ王女は笑みを浮かべながらうっすらと涙を浮かべていた。


 「本当によかったわね」


 私も嬉しい気持ちでいっぱいである。まるで自分の病が治り病院から退院できるような思いである。

 
 「本当にありがとね。みんなビックリすると思うわ」

 「そうね」

 「すぐにでも、この部屋から出てお父様に私の呪いを解くことができるって報告したいけど、勝手にこの部屋から出ることはできないわ。もうすぐ、私のメイドのノワールが来るわ。それまで、おしゃべりをしない」

 「いいわよ。それならブランシュちゃんがなぜ呪いにかかったのか教えてくれないかしら」


 私はなぜ、ブランシュ王女が『白の厄災の女王』の呪いにかかってしまったのか興味があった。


 「わかったわ。なぜ、私が『白の厄災の女王』の呪いにかかっているのか説明をするわ」



・・・あれは15年前のこと、カラミティー大陸の北にあるオランジェザフト帝国で起きた、ある事件がきっかけだったのよ。オランジェザフト帝国から少し離れたところには『白の厄災の女王』と呼ばれる白銀狐『ハクギンコ』が住む大雪山があるの。
 
大雪山は一年中雪が降り注ぐ雪の大地で、雪を餌とする雪狐が多数生息するのよ。雪狐は体長1mほどの真っ白の毛並みの美しい狐で、とても温厚な性格で人を襲うことない害のない魔獣よ。
 
しかし、雪狐の毛皮は素材としての価値が高く、あの火炎竜の放つ炎を無効にする防火性に優れた素材なの。雪狐自体はCランクの魔獣なのに、素材の価値は英雄ランクに匹敵するから、冒険者は雪狐の毛皮を是が非でも手に入れたいの。でも、雪狐を襲うと白銀狐が怒り復讐のために町を襲いに来るのよ。だから、雪狐の討伐は、オランジェザフト帝国の皇帝の許可がない限り討伐することはできない決まりになっているの。

 雪狐の討伐許可は5年に1度、1匹のみを限定として、オランジェザフト帝国に所属する英雄ランク冒険者に与えられるわ。しかし、15年前にそのルールを破って雪狐の討伐を行った冒険者がいるの。しかも、雪狐を10匹も殺してしまったの。

 雪狐を10匹も殺されて怒り狂った白銀狐を大雪山から降りきて、オランジェザフト帝国の町を次々と襲っていったわ。白銀狐の攻撃手段は大まかに二つあり、一つは『絶対零度』という白い霧状息を吐き出し、100m範囲の全てを氷漬けにするの。

 もう一つが、『凍てつく風』という突風を放ち、その冷たい風にさらされた者に呪いをかけてしまうの。『凍てつく風』の呪いにかかると、全身から冷気を発して、周りにある物を凍らせてしまうのよ。呪いにかかってもすぐに死ぬことはなく、長ければ半年、短ければ1ヶ月ほど生きることはできるのよ。でもその間は絶えず冷気を発するので、近づくこともできず、周りを凍らせ続けるのよ。しかも、死んでも呪いは解けることなく、死人は氷柱になり冷気を発して、上空に雪雲を呼び寄せて、その土地を雪の大地に変えてしまうの。

 白銀狐の復讐にあったオランジェザフト帝国の国民を非難させる手助けをするために、ヴァイセスハール王国は、冒険者を派遣することに・・・いえ、派遣しなければいけなかったのよ。実は雪狐を討伐したのは、ヴァイセスハール王国に所属するアードラー率いる冒険者『有頂天』の仕業だったの。

 ゼーブスト陛下は、責任を感じて多くの冒険者を派遣したわ。でも、最前線に行くのはかなり危険なので、最前線には英雄ランクの冒険者『華人薄明』が行くことになったのよ。その『華人薄明』のリーダーが私の母のなのよ。

 『華人薄明』の手助けにより、たくさんの難民を非難させることに成功することができたが、母は白銀狐の呪いにかかってしまったのよ。そして、母が呪いにかかった直後に、私をみごもっていることがわかり、私は呪いにかかった状態で産まれてきたのよ。しかし、私への呪いは弱かったので、オランジェザフト帝国から、この場所へ連れて来られたのよ。


 「ごめんね。少し話が長くなって」

 「そんなことないわよ。それで、オランジェザフト帝国はどうなったの?」

 「オランジェザフト帝国は、国の6割が雪の大地に変わり、その大地は白銀狐を恐れて誰も住んではいないわ」

 「その原因を作ったアードラーはどうなったのかしら」

 「すぐに冒険者証は剥奪されて、囚人の町レクイエムに投獄されたけど、脱走して盗賊になったと聞いているわ」


 アードラー・・・どこかで聞いたことのある名前だと思ったが、思い出すことができなかった。


 「そうなの。でも、そんな悪い奴は成敗しないとね」

 「守護魔獣のプリンツちゃんにお願いすれば倒してくれるかもね」

 「そうね。それに、『白の厄災の女王』のことも気になるわね。もう襲ってこないのかしら」

 「雪狐を殺さない限り問題ないわ。あの事件があってからは誰も恐れて雪狐を討伐することもないし、雪狐の毛皮の買取は禁止されたからね。雪狐の毛皮を持っているだけで捕まってしまうわ」

 
 『ドン ドン』 『ドン ドン』


 「ドアをノックする音がするわ。たぶんノアールが来たのね」


 ノアールは、いつもドアをノックしてから入って来るらしい。私はブランシュ王女の代わりにノアールを出迎えることにした。
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