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究極の2択

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 「ここがシュテーネン専門魔法学院よ」


 シュテーネン専門魔法学院は首都シュテーネンの離れにある。それは広大な土地を利用した施設なので、土地を確保するためにそう成らざる得なかったのである。


 「すごい広いですわ」

 「そうよん。魔法の練習には広大な土地が必要よん。ここなら、私も思いっきり暴れる事ができるよん」

 「ショコラのいう通り、魔法を練習するには広大な土地が必要なのよ。しかも、学院から外に出る専用通路もあり、外での魔法練習も簡単にできる優れた作りになっているわ」

 「そうなのね。学院生活がとても楽しみだわ」


 私が嬉しそうにニコニコ笑っていると、急に頭の上に二つの物体が激しく揺れだした。


 「よんよんよん。よんよんよん」


 ショコラが泣いている。


 「ハツキちゃんを・・・ハツキちゃんを絶対よん。絶対よん。合格させるよんよん」

 「ショコラ、私もあなたと同じ気持ちよ!魔力量が0だから学院に入学させないなんて絶対に言わせないわ。ハツキちゃんのようにひたむきに明るく元気に生きる姿勢こそ、このシュテーネン専門魔法学院に通うにふさわしいと私は思うのよ」

 「そうよぉ~~ん」


 2人は私に抱きついて大泣きするのである。


 「ショコラ、こんなところで泣いている場合じゃないわね」

 「そうよん。まずは面接に合格するよん」

 「ハツキちゃんの面接を合格させる秘策を私は考えているわ。だから、私に任せるのよ」

 「さすがよん。期待しているよん」


 私はシェーネに引っ張られて、シュテーネン専門魔法学院の正門に到着した。


 「これは、シェーネさん。今日は学院はお休みですが何しにこられたのでしょうか?」


 正門には屈強な兵士が立っている。


 「今は学院の面接期間よね」

 「はい。夕刻までは紹介状があれば随時面接を行う事になっています」

 「ハツキちゃん、紹介状は持っているかしら」

 「はい。ヘンドラー男爵に紹介状を書いてもらったわ」

 「えっ!あのヘンドラー・マーチャント男爵の紹介状なの?」

 「そうよ」

 「マーチャント商会といえば、王都にも支店を持つ大商人だわ。陛下からも認められているあのヘンドラー男爵とお知り合いだったのね」

 「今、ヘンドラー男爵の屋敷にお世話になっているのよ。とても親切でいい人です」

 「そうだったのですね。ヘンドラー男爵の保護下にあるのなら安心だわ。彼の財力なら屈強な護衛をたくさん雇えるはずだしね」

 「そ・・・そうで・・すね」

 「紹介状に不備は見当たりませんので、入校の許可を出します。こちらから面接官には連絡しておきますので、面接室へご案内をさせます」

 「遠慮しとくわ。私がハツキちゃんの案内をするわ」

 「わかりました。それではシェーネさんお願いします」


 私はシェーネに連れられて学院の中へ入って行く。


 「まずは食堂よん。学院の食堂は美味しいスイーツがあるのよん」

 「ショコラ!寄り道はダメよ」

 「おやつの時間よん。甘いスイーツを食べるよん」

 「面接が先よ」

 「スイーツが先よん」

 「ハツキちゃんどっち!」
 「ハツキちゃんどっちよん!」

  
 究極の2択を選択する事になった。どちらを選択するかによって私の後の人生が大きく左右される・・・わけはなく、どちらでも良いと思ったのである。


 「どうしようかしら。今はそんなお腹は空いていないけど・・・」

 「スイーツは別腹よん」

 「ハツキちゃん、兵士から面接の連絡は面接官に届いているはずよ。すぐに行った方が面接官の心象が良くなるはずよ」

 「それなら面接に行こうかな」

 「ハツキちゃん、面接中に急にお腹が減るかもしれないよん。面接中にお腹がなったら心象が悪くなるよん」

 「それなら食堂に行こうかな」

 「ハツキちゃん、お腹がいっぱいになったら動きが鈍くなるわよ。動きが鈍いとやる気がないと思われて心象が悪くなるわよ」

 「それなら面接に・・・」

 「ハツキちゃん、スイーツを食べるとやる気スイッチが一段階アップするよん。やる気スイッチが増せば心象もアップするよん」

 「それなら食堂へ・・・」

 「ハツキちゃん・・・」


 こんなやりとりを1時間くらいしているうちに、兵士が私たちのところへやってきた。


 「シェーネさん、こんなところで何をしているのでしょうか?面接の連絡は既にしておりますので、面接室へ行ってください」

 「ショコラ!あなたのせいで遅くなったじゃないの」
 
 「違うよん。シェーネが無駄話するから遅くなったよん。すぐに食堂に行ってスイーツ食べればよかったよん」

 「まぁまぁ、2人とも落ち着いてくださいね」

 「ハツキちゃんはどっちが正しいと思うの」
 「ハツキちゃんはどっちが正しいと思うよん」

 「え~と、あの~。その~」

 「もめてないで早く面接室へ行ってください」

 「そうだったわ」

 「そうよん」


 私たちは急いで面接室に向かったのであった。



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