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事件はいつもお昼寝中?

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 ヘンドラーの浮気事件は無事に解決したので、私は自分の部屋に一旦戻ることにした。


 「次は何をしようかしら?」

 「僕に修行をつけてよ」

 「プリンツちゃんに修行を?」

 「そうだよ。ぼくはハツキお姉ちゃんに弟子入りして、まだ何も教わっていないよ」

 「プリンツの修行・・・」


 私はプリンツを可愛いペットとして受けれていたので、修行のことなんて全く考えていなかった。


 「あ!そうだわ。あれがいいわ」


 私はふと思いついたのであった。確かアイリスが私がゲットしたオークの牙でいろんな魔道具を作っていたが、その中に透き通るような真っ白な直径50cmの円形の盾を作っていた。オークの魔石も散りばめられていて、魔道具の盾としてかなりの出来栄えに仕上がったとして、私にプレゼントしてくれていた。


 「あ!あの盾はフリスビーになると思っていたのよ。プリンツちゃんと遊ぶにはちょうど良いかも」


 私はあくまでプリンツと修行するのではなく、プリンツと遊ぶことしか考えていない。


 「プリンツちゃん、町の外に出るわよ」

 「やっと修行ができるんだね」


 プリンツは嬉しくて部屋の中で飛び跳ねている。


 「いちいち町の門を通って出るのは面倒だわ」


 私はプリンツを抱えて部屋の窓から外に出る。そして、屋根をジャンプして屋敷から出て、そのまま、いろんな建物の屋根をジャンプしながら、町を通り抜けて、最後は少し大きめのジャンプをして町の門を通らずに町を抜け出した。


 「ハツキお姉ちゃんすご~い!」

 「これくらい簡単よ。プリンツちゃんもできるようにならないとね」

 「うん。わかった。これも修行の一環なんだね」

 「そうよ。この方が楽ちんだし。門番にお金を渡さなくていいから節約できるのよ」


これが私の本音である。


 「帰りはぼくもジャンプして屋敷まで帰るよ」

 「頑張るのよプリンツちゃん」

 「うん。それでハツキお姉ちゃん。町の外に出てどんな修行をするの?」

 「ディスクドッグよ」

 「ディスクドッグ?」

 「ディスクドッグとはねぇ~、私がこの円形の盾を投げるから、それをプリンツちゃんが咥えて、私のところに持ってくる遊び・・・じゃなくて修行よ」

 「なんだか楽しそう」


 プリンツは子犬サイズから本来の姿に戻る。


 「いつでも投げていいよ。ハツキお姉ちゃん」

 「わかったわ」


 私は軽くフリスビーのように盾を投げる。盾はクルクルと回りながら遥か彼方に飛んでいくが、盾に向かってプリンツが全速力で盾を追いかける。プリンツの躍動感ある動きから繰り出されるスピードは、あまりの速さに目で捉える事が難しい。しばらくすると、プリンツが盾を咥えて戻ってきた。


 「ハツキお姉ちゃん!とってきたよ」

 「すごいわよ、プリンツちゃん」


 私に褒められて満面の笑みを浮かべるプリンツ。


 「この前はハツキお姉ちゃんとの競争に負けたけど次は絶対に負けないよ」

 「そうね。でも私に勝つにはもっと早く走れるようにならないとね」

 「うん。だからこの修行を選んだんだね」

 「そ・・・そうよ」


 もちろん私は何も考えてはいなかった。ただ、プリンツと遊びたかっただけである。


 「いくわよ」


 私は何度も盾を投げてプリンツとディスクドッグを楽しんでいた。


 「ハツキお姉ちゃん。もっと早く投げてもいいよ。僕はハツキお姉ちゃんが思っているよりもすごく早いんだよ」

「そうなの?それならこれでどうかしら」


 私は少し力を加えて盾を投げた。すると、盾は一瞬で見えなくなってしまった。見えなくなった盾に向かってプリンツは勢いよく追いかけて行ったが、30分経ってもプリンツは帰って来なかった。


 「プリンツちゃん・・・どこまで行ったのかしら?」


 1時間経過した。


 「まだ戻って来ないわ。ちょっと眠たくなったから木陰でお昼寝でもしようかしら」


 プリンツがなかなか戻って来ないから、私は近くの森の木陰でお昼寝しながら待つことにした。



 「おい!こんなところに女のガキがいるぞ」

 「これは上玉じゃないか。奴隷商に渡せば高値で売れるぜ」

 「今日は夜までここで待機するように言われている。夜まで暇だから俺らを楽しませてもらおうじゃないか」

 「そうだな。商品に傷をつけると価値は下がるが、これほどの上玉なら問題ないだろう。俺たちを存分に楽しませてくれよ」


 私が木陰でお昼寝をしていると2人の男が私に近づいてきた。


 「おい!起きろ」

 「・・・」

 「起きろ!」

 「・・・」

 「この女全然起きる気配がないぞ」

 「そうみたいだな。この可愛い顔が恐怖で怯える姿に変貌するのが俺の楽しみなのに、面白くないぜ」

 「ちょっと痛めつけてやるか!」

 「顔はやめとけよ。恐怖で怯える顔を拝むことができないからな」

 「もちろんだぜ」


 男は私の腹部を思いっきり蹴り上げた。


 「いてぇぇ~」


 男は足を抱えて悲鳴をあげる。


 「どうした」

 「こいつめちゃくちゃ硬いぞ。まるで鉄の塊でも蹴ったような感じだ」

 「強化魔法の使い手か・・・」

 「こんなガキが強化魔法を使えるわけがないだろう」

 「そうだな・・・いや、待てよ。1人だけいるぞ」

 「誰だ?」

 「若干16歳でAランク冒険者になった天才魔法少女シェーネ、『青天の霹靂』のリーダーだ」

 「嘘だろ!あいつは王族専用冒険者だ。こんなところにいてるわけがない」

 「しかし、身体強化の魔法は魔法の中でも1番難しいと言われている。鉄の塊のように身体を強化するなんてAランク冒険者しかありえない」

 「確かにそうかもしれない。しかし、なぜ『青天の霹靂』のリーダーが1人でこんなところで眠っているのだ」

 「簡単なことだ。俺たちの動きを察知して『真紅の爪』を潰しに来たのだろう」

 「たった1人で俺たちを潰しに来たのか?」

 「たぶん、そうだろう。俺たちも舐められたものだ。すぐに全員に声をかけろ。こいつが目を覚ます前にぶっ殺すぞ!『真紅の爪』の恐ろしさを見せつけてやるぞ」
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