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プリンツ弟子なる

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 「僕は生きているの」

 「もぉ~優しく抱きしめてあげただけなのに、何で気絶するのよぉ~」

 「だって・・・・ハツキお姉ちゃんは怪力だから、お兄ちゃん達みたいに殺されるのかと思ったの」

 「大丈夫よ!少し力の加減がわかってきたのよ。意識的に力を制御することで力を抑えることができたのよ。我ながらすごいと思ったわよ」

 「もしかして・・・僕で力の制御を試したの?」

 「そ・・・そういうわけではなのよ。プリンツちゃんがあまりにも可愛かったから思わず抱きしめたくなったのよ。でも、力を抑えなくちゃって思ったのよ」

 「やっぱり僕で試したんだぁ~」

 「プリンツ無事でよかったぞ」

 「お父さんも僕を見殺しにしたぁ~」

 「問題ないお前は生きている。俺はハツキを信じていたからな!」

 「嘘だぁ~」

 「プリンツ!これも弟子としての修行の一環だと思え。どのような状況下でも冷静に対処できる心構えが必要だとハツキは教えてくれたのだという事にしよう」

 「・・・・」

 「プリンツ、ハツキへの弟子入りは諦めるのか?お前は漆黒の王を目指さないのか」

 「僕・・・僕はハツキお姉ちゃんに弟子入りして漆黒の王を目指すよ」

 「それでこを我が息子!お前は絶対に強くなるぞ」


 プリンツが機嫌を取り戻してくれたので正式に私への弟子入りが完了した。でも、私はプリンツを弟子としてじゃなく可愛いペットとして受け入れたのである。


 「プリンツちゃん。町まで乗せてくれるのかしら」

 「もちろんハツキお姉ちゃん。僕の無敵の毛は鋼鉄のように鋭くもなるけど、弾力のある心地よい毛にもなるの」

 「すごいねプリンツちゃん。でも抱きしめた時はすでにもふもふで気持ちかったわよ」

 「それは・・・ハツキお姉ちゃんがおかしいのです。僕達の無敵の毛は最強の盾であり最強の剣でもあるのに」

 「もしかして、私が抱きしめた時は間違って弾力のある心地よい毛になっていたのかもしれないわ」

 「それは・・・ないです」


 私の渾身のフォローも虚しく否定され、プリンツは弟子としてやっていく自信を無くしたようだ。


 「プリンツちゃん、弾力のあるふわふわの毛で私を乗せてくれるかしら」

 「プリンツ、ハツキは規格外の化け物だ。今ままでの常識は捨てろ」


 可憐な少女をつかまえてえらい言われようであるが、しかし私は笑顔でヴォルフロードの言葉をスルーした。


 「プリンツちゃん。お願い」

 「うんハツキお姉ちゃん。僕の弾力のあるふわふわの毛で快適に町まで運んであげるよ」


 プリンツは機嫌を取り戻したようである。

 プリンツは1mほどの大きさに戻って私を背に乗せてくれた。プリンツの毛はとてもモフモフで豪華なソファーに座っているように心地良い。


 「ハツキお姉ちゃん。僕の無敵の毛でお姉ちゃんを固定してあげるからどんなに揺れても落ちることはないからね」


 プリンツの無敵の毛が私の腰に巻きついてしっかりと固定された。しかし、窮屈とか動きにくいとかはなく、自由に体は動かせるし降りたい時には自然と無敵の毛から解放される。


 「落ちないなら安心よ。じゃ~町へ向かって出発よぉ~」


 私の掛け声と同時にプリンツは走り出す。あまりのスピードで私の大事な麦わら帽子が飛んでいくかと思ったが、麦わら帽子は私の体の一部のようにしっかりと固定されていた。


 「不思議な麦わら帽子だわ。それにこの白のワンピースも全然汚れないわ」


 私の着ているのは真っ白なワンピースなので、プリンツを抱きしめたり草原を走り回ったりしたらすぐに汚れが付いてしまいそうなのに、全く汚れがなく白の輝きを失せることがない。でもとても便利なので嬉しいことである。

 私は飛ぶことない帽子を手で押さえながら、心地よい風を全身で受け止めて景色を眺めていた。


 「ここから1番近い町はどれくらいで着くことができるのかしら」

 「30分くらいに小さない村があるけど、大きな町の方がいいのかなぁ」

 「そうね。できたら大きな町へ向かってほしいかな」

 「それならもう少しスピードを上げるから1時間もあれば着くことはできると思うよ。落ちることはないと思うけどしっかりとつかまっていてね・・・違うよぉ~しっかりとつかまらないで。絶対に絶対にね」


 プリンツは、私にしっかりとつかまられると殺されると思ったのである。私はまだプリンツの信用を得ることは出来ていないようである。

 プリンツは先ほどよりスピードを上げて走り出す。草原の中を土煙を上げながら突風のように駆け抜けていく。私の腰まである長い髪はバタバタを音を立てて揺らめいているが、大きな麦わら帽子は全く飛ぶことない。

 プリンツが颯爽と草原を走り抜けていたら急に何か大きな声が聞こえた。


 「ハツキお姉ちゃん。人間の叫び声が聞こえるよ」

 「えっ!何が起きているのかしら」

 「たぶん、魔獣か盗賊に襲われて悲鳴をあげているのだよ」

 「まぁ、それは大変なことだわ。助けてあげなきゃね」

 「僕が姿を見せると魔獣も人間も大騒ぎしてしまうから、僕はここで待っているね」

 「プリンツちゃん、かよわい私を一人で行かせるつもりなの?」

 「かよわい・・・・ハツキお姉ちゃんには似合わない表現だよ」

 「失礼ねプリンツちゃん。一人じゃ寂しいから一緒に行くのよ」

 「わかったよ。でも、このままの姿じゃまずいから小さくなるね」


 プリンツは小型犬のように小さくなった。そして、私はプリンツと一緒に歩いて声の聞こえる方に向かって行った。
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