上 下
440 / 453

スカンディナビア帝国編 パート27

しおりを挟む

 「申し訳ありません。私の少しの油断がカルシウムヘタレ野郎にチャンスを与えてしまったみたいです」


 小ルシス2号は私に魔力をもらって復活をした。


 「2号ちゃん、後は私に任せてください」

 「わかりました。しかし、失礼を承知で私の考えを述べてもよろしいでしょうか?」

 「いいわよ」

 「あの嘘つきチキン野郎は、きちんと処罰すべきだと思います。自己保身の責任逃れの発言しかしない者に救いの手を差し伸べるべきではありません。あいつは仲間の意見を聞かずに、仲間を殺した大罪人です。それ相応の罰が必要だと思います」


 小ルシス2号の目頭が炎のように燃えていた。よほどジャイアントを許したくないのであろう。しかし、ジャイアントが仲間を殺した理由の発端は小ルシス2号にあることは全く理解はしていないのであろう。

 私はすぐにでもジャイアントを殺すことはできる。しかし、命乞いをしている相手を一方的に殺してしまうことは私にはできなかった。


 「2号ちゃん、あなたの意見はもっともだと思います。しかし、私は命乞いをしている相手を殺すことはできません。仲間を殺した罪は巨人族の法に準して罰せられるべきだと思うので、一旦異空間に閉じ込めておきます」


 「俺はどうなるのだ・・・」


 ジャイアントは大粒の涙を流して、自分の行く末を心配している。


 「あなたはとりあえず異空間に閉じ込めておきます。後で巨人族の国へ連れて行き、あなたの処分を考えてもらいます」

 「俺を殺さないのか?」

 「はい。私は無抵抗の相手を殺すようなことはしません。しかし、少しでも抵抗するのであれば容赦は致しません」

 「何も抵抗はしません。なので、命だけは助けてください」


 ジャイアントは土下座をしながら大きく両手を上げて、無抵抗である意思を示した。


 『ディメンション』


 上空から黒い大きな手が現れてジャイアントを掴んだ。ジャイアントは恐怖のあまりブルブルと震えているが、抵抗はせずに大人しくしている。


 「異空間で、あなたが今まで犯した罪を思い返して反省するのです。あなたの反省の態度により、あなたの今後の人生が決まるでしょう」

 「わかりました」


 大きな黒い手はジャンイアンと掴んでそのまま闇の中へ消えていった。


 「これで、クーデターに加担した巨人族の処理は終わりました。後はソイビーンの町へ行ってカレン様の安否を確認するだけです」

 「はい。ルシスお姉様。急いでソイビーンの町へ向かいましょう」


 私は小ルシス2号を肩に乗せて、急いでソイビーンの町へ飛んでいった。


 数時間後、日も沈みかけてオレンジ色の鮮やかな夕焼けが辺りを包み込んだ頃、私たちはソイビーンの町のすぐ側まで辿り着いた。

 ソイビーンの町の近くは、以前は砂漠地帯であったが、カレン様の砂漠化改善の取り組みにより、至る所に木々が生い茂っていた。しかし、ソイビーンの町の周囲6割近くはいまだに砂漠の状態である。

 砂漠地帯には、サンドワーム、死神サソリなど高ランクな魔獣が住み着くので、砂漠地帯での生活はかなり大変である。しかし、カレン様の努力により4割も砂漠を緑地化できたのはかなりの功績である。しかし、アーサソール王は、その功績を称えるどころか税収を上げて、ソイビーンの財政を圧迫させていたのであった。なので、ソイビーンの町の領主であるパドロット家は2大貴族と呼ばれてはいるが、とても貧しい貴族なのである。

 そもそもパドロット家が2大貴族を呼ばれる所以は、カレン様がエルフの国と同盟関係を結んだことにより、他の貴族たちがエルフとの争いを恐れて、パドロット家に何も言えなくなったからである。しかし、パドロット家は、エルフの力を傘にして勢力を伸ばすことはせずに、砂漠の緑地化に力を入れているのである。


 「このあたりになると緑が増えてきましたね」

 「はい。ルシスお姉様。水源を確保して少しずつ砂漠の緑地化を成功させているみたいです。とても素晴らしいことですが、ルシスお姉様の力を持ってすれば、簡単に緑地化できるはずです」


 小ルシス2号の言う通りである。私にもはやできないことはない。水源の確保、木々の成長の促進など、魔法を使えば簡単にできるのである。


 「そうね。カレン様が望むのであれば・・・」

 「あそこに見えるのは、魚嫌いのヘタレキングの仲間です。まだ、仲間がいたとはゴキ○リ並の繁殖力です。すぐに退治してきます」


 私が喋っている途中で、小ルシス2号は勢いよく飛んでいった。

 確かに、小ルシス2号の言う通りソイビーンの町の門の前に巨人が1人立っていた。しかし、私にはソイビーンの町を襲っている様子には見えない。むしろ、ソイビーンの町を守るように立っている感じがした。


 「ソイビーンの町を襲うことはこの私が許しません!」

 「・・・」

 「無言は『はい』と言ったのと同義語です。この手を汚したくないのですが・・・悪党を懲らしめるのが私の使命です。私に見つかったことがあなたの最大の敗因です」


 『ウルトラ・スーパー・ハイテンションパンチ』


 小ルシス2号は、ソイビーンの町の門の前に立っている巨人に向かってパンチを繰り出した。


 「なんて、可愛い妖精さん」


 小ルシス2号の存在に気づいた巨人は、大きな手で優しく小ルシス2号を捕まえた。


 「お嬢さん。どこからきたのですか?」


 巨人は手のひらに小ルシス2号を乗せて優しい笑顔で問いかけた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

Cross Navi Re:〜運命の交差〜

noah太郎
ファンタジー
気づくと自分の知らない世界に迷い込んでいた。 現世界では全く異なる境遇に生きる2人、榎本春樹と根室秋人。2人はある日突然に、異世界へと転移する。 全く知らない世界で、多くの人に助けられながら希望を胸に生きる春樹と、誰からも愛されず、絶望の淵に立たされる暁仁。2人は命の危機に何度も瀕しながら、異世界の時代の渦に巻き込まれていく。 2人の運命が交差する時、世界は動きだす。 最後に2人が得るものとは一体何なのか。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...