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スカンディナビア帝国編 パート20
しおりを挟むロキさん達は3人で抱きしめ合い、心が一つになったかのように清々しい顔になっている。そんな3人を少し離れたところで私は見ている。
私は3人の微笑ましい姿を見てとても嬉しかった。一時はバラバラになってしまうのか危惧していたが、私の心配は徒労に終わってよかったのである。しかし、嬉しい反面あの3人の輪に自分がいないことに少し寂しい気持ちもある。私はラスパに入ってまだ半年くらいしか経っていない。ロキさんとトールさんは子供の頃からの付き合いだし、ポロンさんは『ラストパサー』の立ち上げ時からのメンバーである。3人の深い友情の絆にまだ私は入る資格はないのだと感じている。
「ルシス!何1人でボーッとしているだ。俺たちにはお前が必要なんだ。一緒にスカンディナビア帝国を救ってくれ!」
「そうよ。ルシスちゃん。いつもルシスちゃんに助けられてばかりのわたしたちだけど・・・今回も助けて欲しいのよ」
「ルシスちゃん、私と一緒にロキ達の力になってあげて!ラスパにはあなたが必要なのよ」
「・・・はい。私にも手伝わせてください」
私は走って3人の輪の中に飛び込んで行った。そして、ロキさん達は笑顔で私を強く抱きしめてくれた。
「ところで、その仮面はこれからも付けていくのか?」
トールさんは少し嫌そうな顔をしている。
「はい、もち・・・」
私は「もちろん付けていきます」と言おうとしたら・・・
「もう、素性を隠す必要はなくなったわ。私はアルフレイム妖王国の第3王女として2人の支援を表明するわ」
と言ってキューティーメロン・・・ではなくポロンさんは緑色の仮面を投げ捨てた。
「わ・・わ・・私も『ラスパ』のルシスとして協力します」
私はしどろもどろになりながら言った。私は少しだけプリティーイチゴのキャラが気に入っていたのである。
「残念だわ。私も仮面をつけたかのに・・・」
ロキさんは少し残念そうに顔を歪めている。
「ロキさん、これから私たちはどうすればいいのかしら」
仮面を外してフレイヤが私たちの側にきた。
「フレイヤ様、仮面を外されても大丈夫なのですか?」
「問題ないわよ。ロキさん達に手を貸すようにネテア王から言われていますわ。仮面を付けていたのは面白そうだったからよ。最初から『オリュンポス国』はあなた達を支援すると決めていたのよ」
「ありがとうございます」
「何を言っているのよ。『オリュンポス国』は『ラスパ』に助けられたのよ。その恩を仇で返すようなことはしないわ」
私たちの輪の中にフレイヤも入ってきてみんなの士気もさらに上がる。
「フレイヤ様、これからスカンディナビア帝国の首都であるパステックの町に向かいます。パステックの町にはトールの家族が地下牢に閉じ込めらていると思います。まずはトールの家族を解放したいと思います」
「パステックの町には、新たに王となったヴァリと協力している巨人族がいるはずだ。あいつらをどうにかしないとスカンディナビア城に入ることもできない。それと・・・辺境の地にいる叔母の安否が心配だ」
「そうね。パドロット家のカレン様も命を狙われている危険がありますわ。カレン様の安全も確保したいわ」
「そのカレンという人物はどこにいるのですか?」
「スカンディナビア帝国の北の果てにあるソイビーンの町にいますわ。ソイビーンの町は周りを砂漠に囲まれた不毛の大地で、かなり環境が厳しくて荒れ果てた大地だったのよ。それをカレン様の地道な努力で少しずつ緑を取り戻して、活気のある町へと変貌しつつあるわ。カレン様はどのような方にも優しく思いやりある方なのよ。だからカレン様の身の安全を確保したいのよ」
「しかし、スカンディナビア帝国の北の果てとなるとかなり遠いのではないのですか?」
「はい。今からどんなに急いでも、五日はかかると思います」
「もし、ヴァリが巨人族を送り出していたら間に合わないかもしれないですね」
「・・・」
みんな絶望的な表情になり、さっきまでの明るい雰囲気が消えてしまった。
「皆さん何を暗くなっているのですか!ここには不可能を可能にする大魔王様のような存在がいるのをお忘れではないのですか?」
みんなの輪の中心に小ルシス2号が飛び込んできた。
「あなた達愚民にはできないことでも、それを可能にしてしまうルシスお姉様がここにいるのではないのですか!!!」
「2号ちゃん!言葉のチョイスが間違っているわよ」
私は慌てて小ルシス2号の口を塞ぐ。
「ほほう・・・ルシスは俺たちのこと愚民だと思っているんだな?」
トールさんが下を向いている私の顔覗き込む。
「そんなの思っていません。2号ちゃんが勝手に言っているのです」
私は冷や汗がタラタラ流れ出てきた。
「ルシスちゃん・・・ひどいわ」
ロキさんが下を見て落ち込んでいる。
「ルシスちゃん見損なったわ」
ポロンさんは頬を膨らませて怒っている。
「これはネテア王に報告しないといけない案件ですね」
フレイヤは冷たい視線で私を見る。
「違います。違います。私はそんなこと全然思っていません」
私は半ベソをかきながらみんなに頭を下げる。
「冗談よ!」
「冗談だぜ」
「ルシスちゃん可愛い」
「ルシスちゃんでも焦ることがあるのね」
みんなが笑って私を見ている。
「もうーーー。皆さんが本当に怒っているの思ったのにぃ!」
私は少し涙めになりながらロキさんの背中をポンポンと叩くのであった。
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