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スカンディナビア帝国編 パート7
しおりを挟む⭐️約7年前のある日
「トールお嬢様、そんなに怖がらなくても大丈夫です」
「兄貴の話だと、この城には幽霊が出るみたいだぞ。すぐに家出の準備をするぞ!」
トールさんは、兄であるマグニにスカンディナビア城には、ヴァナヘイム家の怨霊が住み着いているので、寝るとは気をつけた方がよいと言われてビビりまくっているのであった。
スカンディナビア城のある部屋では、ヴァナヘイム家に男の赤子が生まれると処刑されることはトールさんも幼い頃から聞かされているので、怨霊が出てくるのは当然だと思っている。
「この城を出てどこへいかれるのですか?見知らぬ所へ行く方が危険です。どうか、落ち着いてください」
ロキさんは必死にトールさんを説得する。トールさんは怖いもの知らずな無鉄砲な性格だが、お化けの類は苦手なのである。
「落ち着いてなどいられないぜ。いつ怨霊が俺を襲ってくるかもしれない。アーサソール家はひどい行いをしている。その報いがくるに違いない」
トールさんは、膝をガクガク震わせてビビりまくっている。
「トールお嬢様は何も悪いことなどしていません。トールお嬢様は使用人である私にいつも親切にしてくれています。ヴァナヘイム家の怨霊が出るようなら、ヴァナヘイム家の私が退治してあげます。なので安心してください」
「ロキ・・・本当にお前はいい奴だな。俺は強くなって必ずヴァナヘイム家を王族に戻してやるぜ。親父達の考えは間違っている。ヴァナヘイム家の能力を恐れて男の赤子を殺すなんて、絶対に許してはいけない行為だ!俺がこの国を変えてやる!」
「トールお嬢様、そんなことを言っているのが家族に知られたら、また地下牢に閉じ込められてしまいます。ヴァナヘイム家のことは気にしなくても良いのです。あなたは王女として平穏に幸せに暮らしてください」
トールさんは、ヴァナヘイム家に対する扱いに子供ながら怒りを感じていた。なので、何度もロキさん達を王族に戻すように訴えていたが、聞き入れてもらえることはなく、逆に指導が必要だと城の地下牢に何度も閉じ込められていたのである。
「いやだ!俺はロキを使用人として一生この屋敷に閉じ込めるなんてできない・・・そうだ!俺と一緒に冒険者にならないか?俺は冒険者になってこの国・・・いやこの世界で1番強くなってやる。そして、俺の力でヴァナヘイム家を王族に戻してやるぜ」
「ありがとうございます、トールお嬢様。でも、そのお気持ちだけで私は満足しています。私は母からトールお嬢様を守るように言われています。なので、そんな危険な旅をさせるわけにはいきません」
「問題ないぜ。俺には兄貴達のような特殊な力はないが、ハンマーの扱いは誰にも負けないぜ。もっと特訓すれば兄貴達より強くなるはずだ!」
「そうですね。トールお嬢様の格闘センスは、アーサソール家の中でもずば抜けたセンスがあると思います。トールお嬢様は特殊能力がなくても、魔力操作を上手く使うことができるようになれば、お兄様達を超えることができると思います」
「ロキ、お前の剣さばきも子供の粋を超えているぞ。俺と同等に戦えるのはお前だけだ!俺とお前が組めば絶対に強い冒険者になれるはずだ!冒険者になろうぜ」
「先ほども言いましたが、冒険者は危険な職業です。王女であるトール王女様が選ぶような仕事ではありません。王族としての責務を全うするのが良いと思います」
「いやだぜ。この国では王女などお飾りみたいなものだ!俺は絶対に冒険者になる。そして強くなって、アーサソール家の非道な行いを正してやるぜ」
「トールお嬢様・・・そんなことは無理なことです。もう怨霊のこともお忘れになったと思いますので、ゆっくりと体を休めてください」
「・・・思い出したではないか!!!」
ロキさんの余計な一言でトールさんは怨霊のことを思い出して、ガクガクブルブルと震え出した。
ロキさんはガクガク震えるトールさんの手を握った。
「トールお嬢様、落ち着いてください。私がいつでもあなたの側に居てあなたをお守りします。だから、怨霊など怖がらずに安心して眠ってください」
トールさんはロキさんの手をギュッと握りしめる。
「ロキ、お前に手は暖かいな。心がとても休まるぜ」
トールさんの震えは止まりそのまま眠ったのである。
⭐️6年後
「オヤジ!約束通りモージに勝ったぜ!これでロキを連れて冒険者になってもいいのだな」
トールさんは16歳になった時、トールさんの父であるドンナー・アーサソール王にロキさんを連れて冒険者になると宣言した。アーサソール家でが女系は大切にされていないので、トールさんが冒険者になろうがどうでもよかった。しかし、ヴァナヘイム家のロキさんを城から出すことに激しく抵抗したのである。
「私に勝つことできたら、トールの好きなようにさせてもらえないでしょうか?」
長男であるモージがアーサソール王に進言した。
「勝負にならないだろう」
「最近、トールは力をつけています。でも、ハンデとして私は能力は使いません。剣のみで戦います。それでも私が負ける可能性はゼロに近いと思います」
「面白そうだな。殺さない程度に痛ぶってやれ」
ドンナーは、ニタニタとニヤつけながら言った。
しかし、結果はトールさんがかろうじて勝利した。
「モージ!!!何をしている。トールごときに負けるとは何事だ。お前は1ヶ月間牢屋に入って謹慎しろ」
ドンナーは目の前のテーブルを叩き割って激怒して、その場から出て行った。
「兄貴・・・」
「気にするな。お前は自由に生きろよ」
モージはわざと負けたのであった。トールさんとロキさんに自由に生きてもらう為に。
こうして、トールさんとロキさんは冒険者の第一歩を踏み出したのである。
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