412 / 453
ボルの人界征服編 パート24
しおりを挟むクラちゃんはクラーケンの姿に変身して無数も噴石をぺろりと食べてしまった。
「ホクホクで少し舌が火傷しそうになったわ。しかも味もなく料理としては最低だわ」
クラーケンの額にシワがよってかなり不機嫌な様子である。
「噴石の温度は1000度を超える高温だぞ・・・食べるなんてありえないぞ」
ヘファイストスはクラーケンの規格外の食欲にビビってしまい後退りする。
「もっと美味しい物を出しなさいよ!」
クラーケンの大きな触手がヘファイトスを襲う。
クラーケンは触手の長さも合わせると30mという神獣の中でもトップクラスの大きさを誇る。ヘファイトストスが3m以上の巨漢であると言ってもクラーケンからすればあまりにお粗末な大きさである。
20mはある白くて分厚い触手がヘファイストスの体を巻きつける。触手には吸盤がり一度捕まると逃げるのは不可能と言われている。
『アドバルーーーン』
巻き付けられたクラーケンの触手を押し跳ねるように、ヘファイストスの体が風船のようにみるみると大きくなっていく。触手で丸く抑え込まれたヘファイストスは、自らの体を膨らませることで、触手を弾き返そうとするが、吸盤の吸い付きからは逃れられない。
それでも、ヘファイストスは、さらに体を膨らませていく。ヘファイストスの体が3倍近くになった時、大きな爆発音がして、ヘファイストスの体が砕け散った。まるで膨らませ過ぎた風船のように、ヘファイストスの体はバラバラになってしまったのである。
「えーーい。えーーい」
クラーケンは砕け散ったヘファイストスの体の破片に触手を叩きつける。
20mもある触手が地面に叩きつけられて、激しく地鳴りのような音が響き地面に亀裂が入る。そして、砕けたヘファイストスの体の破片が桜が舞い散るように宙に舞う。
「クラーケン様、もう許してあげてください」
いいように弄ばれているヘファイストスを助けるためにポセイドンがクラーケンに声をかける。
「戦いを仕掛けたのはヘファイストスの方ですよ」
1mはあるクラーケンの大きな赤い瞳がポセイドンを睨みつける。
「あいつもこれで懲りたと思います。もう2度とクラーケン様に逆らうことはしないでしょう」
「どうしようかな?」
クラーケンは白い触手で腕組みをして考える。
「これから私たちは人界へ行くので、何か美味しい食べ物を手に入れてきます。それで許してくれないでしょうか?」
クラーケンの赤い瞳が煌々と輝き出した。
「私は人界の美味しいパンを食べたいと思っていたのよ。人界で1番美味しいパンを買ってきてください」
「わかりました。クラーケン様がお気に召すパンを必ず手に入れてきます」
「あ・・・それと人界人に迷惑をかけたらダメだよ」
「もちろんです。私どもはボルたちがどうなったか調べるだけなので、人界の秩序を乱すようなことはしません」
ポセイドン達の真の目的は、自分たちが力を与えたオーシャン、フレイムの敵討ちである。しかし、クラーケンに本当のことは言えないので嘘をつくのである。
「調べるだけ無駄だと思うわよ。もしも、ボル達を倒した相手を見つけることができたとしても、何もしない方が身の為よ。あなた達はおとなしく美味しいパンを買ってくることに専念する方がいいと思うわ」
「どういうことですか?クラーケン様はボル達を倒した者に心当たりあるのですか?」
「知らないわよ。ただ、あなた方は弱すぎるので心配してあげているだけですわ」
クラちゃんは私のことは黙っておくことにした。私が天使様に力を授かったこと、そして神獣達と特訓したことは秘密なのである。
「ご忠告感謝いたします。しかし、人界に神を倒せる者などいないはずです」
「そうね。でも、そんなことよりも、美味しいパンを期待しているわ」
クラちゃんはそういうとその場から去って行った。
クラーケンがいなくなり、ポセイドンは慌ててヘファイストスの砕けた体をかき集めて、パズルを仕上げるように一つずつ丁寧に繋げていく。この地道な作業をポセイドンは日が暮れるまで根気良く続けたのである。
「感謝するぜ」
散り散りになった体を全て貼り付けたことによりヘファイストスは復活した。しかし、微妙にポセイドンの貼り付けがおかしいので、お腹に右手があったり、左手が肩の上にあったり、ピカソの絵のような芸術的な作品に仕上がってしまったのである。
「しかし、なんだか歩きにくいぜ」
右下と左足の向きが逆になっているので、右足を前に出しても左足が後ろに行こうとするのでヘファイストスは真っ直ぐ歩くことも難しい。
「ヘファイストス、その体を一度ウーラノス様に治してもらったほうがいいかもしれないぞ」
ポセイドンは明らかに自分の貼り付け方が失敗したと潔く認めた。
「そうかぁ?それほど違和感を感じないぞ」
鈍感なヘファイストスは自分の体の変化に全く気づかない。なので、必死に前に進もうとするが、円を描くように自分の周りを一周する。
「おかしい・・・なぜ?前に進まないのだ!」
「これを見ろ!」
あまりに鈍感なヘファイストスを見かねたポセイドンは、近くにあった鏡を持ってきて、ヘファイストスに自らの体を見せてあげた。
「なんじゃこりゃーーー」
ヘファイストスは自分の芸術的な姿を見て、腰を抜かして驚くのであった。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
あれ?なんでこうなった?
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、正妃教育をしていたルミアナは、婚約者であった王子の堂々とした浮気の現場を見て、ここが前世でやった乙女ゲームの中であり、そして自分は悪役令嬢という立場にあることを思い出した。
…‥って、最終的に国外追放になるのはまぁいいとして、あの超屑王子が国王になったら、この国終わるよね?ならば、絶対に国外追放されないと!!
そう意気込み、彼女は国外追放後も生きていけるように色々とやって、ついに婚約破棄を迎える・・・・はずだった。
‥‥‥あれ?なんでこうなった?
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる