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ボルの人界征服編 パート20
しおりを挟む私は、今にもナレッジに突進しそうな小ルシス2号を、両手で握って抑え込み4度目の突撃を防いだ。
「ルシスお姉様・・・私にチャンスを!」
と何度も叫ぶが私はとりあえず無視して、ナレッジに聞きたいことがあるので確認することにした。
「ナレッジさん、なぜあなたが神人と一緒にいるのですか?」
「お前に話すことはない」
ナレッジは私に恐れているのか、ボルの背後に小判鮫のように張り付いている。
「魔族と神人が仲良くするのは、私は悪いことではないと思います。しかし、そこの神人は人界の秩序を壊そうとしているはずです。そのような行為はお母様がお許しになるとは思えませんが?」
「やかましい!お前に話すことなど何もないわ!」
ボルの背後から偉そうに言う。
「ナレッジの代わりに俺が教えてやろう」
「ボル様、ご勘弁を!」
「何をあのガキに恐れているんだ!俺がついているからお前の悪事がバレたところで何も問題はないはずだ。それとも俺が、あのガキに負けると思っているのか?」
「いえ、そのようなことはありません」
「なら、問題はないだろう。あのガキにもなぜ魔界から追放されたかを教えてやった方が良いだろう。己の不遇の真実を知って、怯えながら死ぬのも面白いだろう」
ボルは、いかにも悪人らしいニヤけた顔で、私がなぜ?天使に浄化されて殺されそうになったのか、私の知らない真実を教えてくれた。
「『契りの間』で天使様が現れたのは、ナレッジさんの仕業だったのですね」
「そういうことだ!お前を浄化して殺すために、ナレッジがウーラノス様に頼んだのだ」
悪魔にビビって私が悪魔を追い返した後に、天使様がきた本当の理由を知った。しかし、天使様は私を殺すどころか力を授けてくれたので、ナレッジには感謝しないといけない。
「ナレッジさん、ありがとうございます」
私はポロッと感謝の言葉を口に出してしまった。
「俺を煽っているつもりか!そんな虚勢に俺は動じないぞ」
私の真意を見抜けずにボルは私の余裕な態度にイライラしている。
「ルシス、なぜお前は魔力が戻ったのだ!天使に浄化されてお前の魔力はゼロだったはずだ」
ナレッジは、相変わらずボルの後ろから一ミリも動くことはしない。
「腰巾着野郎に、話す言葉などないのよ!」
もちろん、小ルシス2号の発言である。
「あなたは私の質問に答えてくれなかったので、私もあなたの質問に答える義務がありません」
「ナレッジ、あのガキに魔力が戻ったといっても、所詮雑魚に代わりなない。久しぶりの再会に話が盛り上がったところだが、この辺で終わりにしよう。あのガキには、ムーン・オーシャン・フレイム・ビバレッジを殺したツケを払ってもらうことにする」
ボルはしれっと自分の勘違いで殺したフレイムを、私が殺してことにした。
「あなたはボルさんと言いましたよね」
「そうだ。それがどうした?」
「あなたは神人なかでは弱い方なのですか?」
私は疑問に思っていた。神人は魔人と匹敵する力を持っていると私は本で読んだことがある。しかし、今まで出会った神人は、あまりにも弱すぎて相手にならなかった。そして、今、目の前にいるボルでさえ、私には強く感じないのである。
「死ぬ前に教えてやろう。俺は神人最強の男だ。お前が殺した『一天四神』も神人では最高峰の強さを誇るが、俺と『一天四神』の差は天と地ほどの差があるのだ。あえて言うなら、神人の強さは、俺と俺以外の二つ分けられるのだ。そして、俺の強さに近づける者などいない。俺は神人ではなく神と呼ばれても良いと思っている」
恍惚の表情を浮かべながら自分の強さをアピールするボル。
「それなら神も大したことがないということですね」
これは私の発言である。
「そこまで愚かな発言ができるとは大した者だ。俺には『神の目』の能力があるのだぞ。お前の力量は全て把握しているぞ!『ブラックホール』が使えるからといって調子にのるなよ。それに、お前の『ブラックホール』などまだ未熟な産物だ!魔王の子供だという特権で使える魔法など大したことはないぞ」
ボルがいうのも間違いではない。私が今まで使った『ブラックホール』は小規模なもので吸収力もさほど強くない。しかし、私が精度の高い『ブラックホール』を使えないというわけではない。あえて言うなら使う必要がないので使っていないだけである。
「そこまで見抜けるのですね」
「そうだ。俺の『神の目』の前では何も隠すことはできないのだ」
ボルは『神の目』を使って私の全ての情報を把握していると思っている。それが嘘の情報だと知らずに。私は『神の目』の存在を知っている。これも本で読んだことがある。『神の目』は裏天界の王であるウーラノスが保有するスキルであり、ウーラノスの前では誰もが裸同然で情報がダダ漏れになってしまうのである。この全てを覗き見できる『神の目』にも欠点がある。それは、圧倒的に魔力が高い者に対しては、ステイタス偽装を見破ることができないのである。
残念ながら私とボルの魔力の差は、米粒と1つと米俵10俵ほどの差があると言っても過言ではないのである。そんな米粒に私の力量など測るのは不可能なのである。
「そうなのですね。それなら私じゃなく2号ちゃんに戦ってもらうことにします」
「ルシスお姉様、私に4度目のチャンスをくれるのですね!!」
小ルシス2号は、水を得た魚のように生き生きとして、今にもボルに飛びかかりそうである。
「私の『アトミック・ファイナル・レボリューションパンチ』をおみまいしてあげるわよ」
「ちょっと待つよのよ2号ちゃん」
私は飛び出す小ルシス2号を必死で止めたのであった。
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