上 下
408 / 453

ボルの人界征服編 パート20

しおりを挟む

 私は、今にもナレッジに突進しそうな小ルシス2号を、両手で握って抑え込み4度目の突撃を防いだ。


 「ルシスお姉様・・・私にチャンスを!」


 と何度も叫ぶが私はとりあえず無視して、ナレッジに聞きたいことがあるので確認することにした。


 「ナレッジさん、なぜあなたが神人と一緒にいるのですか?」

 「お前に話すことはない」


 ナレッジは私に恐れているのか、ボルの背後に小判鮫のように張り付いている。


 「魔族と神人が仲良くするのは、私は悪いことではないと思います。しかし、そこの神人は人界の秩序を壊そうとしているはずです。そのような行為はお母様がお許しになるとは思えませんが?」

 「やかましい!お前に話すことなど何もないわ!」


 ボルの背後から偉そうに言う。


 「ナレッジの代わりに俺が教えてやろう」

 「ボル様、ご勘弁を!」

 「何をあのガキに恐れているんだ!俺がついているからお前の悪事がバレたところで何も問題はないはずだ。それとも俺が、あのガキに負けると思っているのか?」

 「いえ、そのようなことはありません」

 「なら、問題はないだろう。あのガキにもなぜ魔界から追放されたかを教えてやった方が良いだろう。己の不遇の真実を知って、怯えながら死ぬのも面白いだろう」


 ボルは、いかにも悪人らしいニヤけた顔で、私がなぜ?天使に浄化されて殺されそうになったのか、私の知らない真実を教えてくれた。


 「『契りの間』で天使様が現れたのは、ナレッジさんの仕業だったのですね」

 「そういうことだ!お前を浄化して殺すために、ナレッジがウーラノス様に頼んだのだ」


 悪魔にビビって私が悪魔を追い返した後に、天使様がきた本当の理由を知った。しかし、天使様は私を殺すどころか力を授けてくれたので、ナレッジには感謝しないといけない。


 「ナレッジさん、ありがとうございます」


 私はポロッと感謝の言葉を口に出してしまった。


 「俺を煽っているつもりか!そんな虚勢に俺は動じないぞ」


 私の真意を見抜けずにボルは私の余裕な態度にイライラしている。


 「ルシス、なぜお前は魔力が戻ったのだ!天使に浄化されてお前の魔力はゼロだったはずだ」


 ナレッジは、相変わらずボルの後ろから一ミリも動くことはしない。


 「腰巾着野郎に、話す言葉などないのよ!」


 もちろん、小ルシス2号の発言である。


 「あなたは私の質問に答えてくれなかったので、私もあなたの質問に答える義務がありません」

 「ナレッジ、あのガキに魔力が戻ったといっても、所詮雑魚に代わりなない。久しぶりの再会に話が盛り上がったところだが、この辺で終わりにしよう。あのガキには、ムーン・オーシャン・フレイム・ビバレッジを殺したツケを払ってもらうことにする」


 ボルはしれっと自分の勘違いで殺したフレイムを、私が殺してことにした。


 「あなたはボルさんと言いましたよね」

 「そうだ。それがどうした?」

 「あなたは神人なかでは弱い方なのですか?」


 私は疑問に思っていた。神人は魔人と匹敵する力を持っていると私は本で読んだことがある。しかし、今まで出会った神人は、あまりにも弱すぎて相手にならなかった。そして、今、目の前にいるボルでさえ、私には強く感じないのである。


 「死ぬ前に教えてやろう。俺は神人最強の男だ。お前が殺した『一天四神』も神人では最高峰の強さを誇るが、俺と『一天四神』の差は天と地ほどの差があるのだ。あえて言うなら、神人の強さは、俺と俺以外の二つ分けられるのだ。そして、俺の強さに近づける者などいない。俺は神人ではなく神と呼ばれても良いと思っている」


 恍惚の表情を浮かべながら自分の強さをアピールするボル。


 「それなら神も大したことがないということですね」


 これは私の発言である。


 「そこまで愚かな発言ができるとは大した者だ。俺には『神の目』の能力があるのだぞ。お前の力量は全て把握しているぞ!『ブラックホール』が使えるからといって調子にのるなよ。それに、お前の『ブラックホール』などまだ未熟な産物だ!魔王の子供だという特権で使える魔法など大したことはないぞ」


 ボルがいうのも間違いではない。私が今まで使った『ブラックホール』は小規模なもので吸収力もさほど強くない。しかし、私が精度の高い『ブラックホール』を使えないというわけではない。あえて言うなら使う必要がないので使っていないだけである。


 「そこまで見抜けるのですね」


 「そうだ。俺の『神の目』の前では何も隠すことはできないのだ」


 ボルは『神の目』を使って私の全ての情報を把握していると思っている。それが嘘の情報だと知らずに。私は『神の目』の存在を知っている。これも本で読んだことがある。『神の目』は裏天界の王であるウーラノスが保有するスキルであり、ウーラノスの前では誰もが裸同然で情報がダダ漏れになってしまうのである。この全てを覗き見できる『神の目』にも欠点がある。それは、圧倒的に魔力が高い者に対しては、ステイタス偽装を見破ることができないのである。

 残念ながら私とボルの魔力の差は、米粒と1つと米俵10俵ほどの差があると言っても過言ではないのである。そんな米粒に私の力量など測るのは不可能なのである。


 「そうなのですね。それなら私じゃなく2号ちゃんに戦ってもらうことにします」

 「ルシスお姉様、私に4度目のチャンスをくれるのですね!!」


 小ルシス2号は、水を得た魚のように生き生きとして、今にもボルに飛びかかりそうである。


 「私の『アトミック・ファイナル・レボリューションパンチ』をおみまいしてあげるわよ」

 「ちょっと待つよのよ2号ちゃん」


 私は飛び出す小ルシス2号を必死で止めたのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あれ?なんでこうなった?

志位斗 茂家波
ファンタジー
 ある日、正妃教育をしていたルミアナは、婚約者であった王子の堂々とした浮気の現場を見て、ここが前世でやった乙女ゲームの中であり、そして自分は悪役令嬢という立場にあることを思い出した。  …‥って、最終的に国外追放になるのはまぁいいとして、あの超屑王子が国王になったら、この国終わるよね?ならば、絶対に国外追放されないと!! そう意気込み、彼女は国外追放後も生きていけるように色々とやって、ついに婚約破棄を迎える・・・・はずだった。 ‥‥‥あれ?なんでこうなった?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...