上 下
383 / 453

カースド共和国編 パート4

しおりを挟む
 
 私たちは、王都ジンジャーに着くとすぐにネテア王の面会をお願いした。しばらくすると、王国騎士団長のフレイヤ様が姿を見せた。


 「ロキさん、今日はどのような御用件でネテア王にお会いにきたのですか?」


 ロキさんは『ホロスコープ星国』の件を説明してくれた。


 「それは、ちょうどよかったわ。ネテア王もあの3名を『ホロスコープ星国』へ送還する予定だったのよ。今日にでも『ホロスコープ星国』に使者を送るつもりだったので余計な手間が省けるわ」

 「ジェミニが反抗的な態度をとっているとお伺いしていますが、大丈夫なのでしょうか?」

 「問題ないわ。『神剣』の能力を取り戻したみたいだけど、私がコテンパに叩きのめしたら大人しくなったわ」

 「さすが、フレイヤ様です。ところで3人は誰が『ホロスコープ星国』に送り届けるのでしょうか?」

 「もちろん『ラスパ』に依頼をする予定だわ。あなた方はサラマンダー様を召喚して、空輸をできるから安心して任せられるわ」

 「わかりました。責任を持って3人を『ホロスコープ星国』へ連れて行きます」

 「3日後にオリュンポス城に来てくれるかしら、それまでに準備を整えておくわ」


 私たちは、フレイヤ様から依頼を受けて『ホロスコープ星国』へジェミニたちを運ぶことになった。




 「ロキ・・・早く迎えに来てくれよ」

 「何か美味しい物はないのかしら」



 トールさんは牢屋に入れられてナーバスになっているが、ポロンさんは相変わらずのマイペースである。



 「牢屋内では一日三食となっています。それ以外は何も出ません」

 「そこをなんとかして欲しいわ。私はおやつを取らないと肌の調子が悪くなるよ」

 「無理です。例外を認めるわけにはいきません」

 「それならブドウジュースだけでもお願いしますわ。ジュースは食事に該当しませんわ」

 「それもできません」


 兵士はキッパリと断る。


 「水分補給もできないのかしら?このまま牢屋で脱水で死んでしまったらどうするのかしら?」


 いちゃもんをつけるポロンさん。


 「問題ありません。ちゃんと栄養管理はしっかりとしています。今まで脱水で死んだ者はいません」

 「私はエルフよ。エルフの体調まで把握できるのかしら?」

 「それは・・・」

 「ネテア王の基本概念である全ての種族が仲良く暮らし行くには、様々な種族の特徴を理解しないと実現は難しいと思いますわ。私がエルフの代表として助言させてもらいますわ。エルフは水分補給を怠ると脱水で死んでしまうのよ」


 ポロンさんは親切心で言っているのではない。ただブドウジュースが飲みたいだけである。しかし兵士は悩んだ挙句ブドウジュースを取りに行ったのである。


 「ポロン、よかったな。これで命の危機を脱したのだな?」


 トールさんもポロンさんの話を信用していた。


 「ありがとう。トール。あなたの分も頼めばよかったわ」

 「俺は大丈夫だ。少しくらい水分を取らなくても死ぬ事はない」


 へんなところで真面目なトールさんである。


 「こんな牢屋簡単に出ることはできるけど、脱走したら立場が悪くなるわよね」

 「そうだな。自分らの立場悪くなるような事はできないぜ。ロキが戻ってくるまで大人しくするしかないぜ」


 トールさんは、腹を決めたみたいで睡眠をとって大人しく過ごしていたが、ポロンさんは、エルフ特権で一日五食必要だとか色々と難癖をつけて、快適な牢屋ライフを過ごしいた。


 次の日。


 「トール、ポロン、ちゃんと反省をしていますか?」


 私とロキさんはトールさんとポロンさんの様子を伺いに来た。


 「ロキ早く出してくれ!」


 少しやつれた顔をしたトールさんがロキさんに助けを求める。一方ポロンさんは血色の良い顔つきでブドウジュースを美味しそうに飲んでいた。


 「もう少しここにいてもかまわないわ」


 ポロンさんは全く反省の色はない。


 「ロキ、腹ぺこだぜ。1日3食なんて辛すぎるぜ」


 トールさんは涙目で訴える。


 「もう、ルシスちゃんのお金を勝手に使わないと誓いますか?」

 「もちろんだぜ。ちゃんと許可を得て使わせてもらうぜ」


 金を使わないとは言わないのである。


 「ロキお姉ちゃん、私の稼いだお金はみんなで使ってもいいので、2人を牢屋から出してください」


 私は、天使様から授かったチートな力に、前世の記憶というチート級の記憶がある。なので、稼いだお金に対してはそんなに執着はしていない。


 「ルシス様、ありがたいお言葉感謝するぜ」


 トールさんに笑顔が戻った。そんな中、マイペースでブドウジュースを嬉しそうに飲んでいるポロンさん。


 「ルシスちゃん、2人を甘やかしたらダメよ。ルシスちゃんの稼いだお金を湯水のようにあの2人は使ってしまうわ」


 散財王の2人の浪費癖をロキさんは気にかけている。


 「いいのです。なくなったらまた稼げばいいのです。私が力が失ったときに優しくしてくれた『ラスパ』のメンバーには私は感謝しているのです」


 これは本当である。私は魔界から追放されて絶望的なところ助けてくれたのが『ラスパ』であった。そして『ラスパ』の3人がいるから楽しい異世界生活を満喫しているのである。


 「いい子に育ったものだぜ」


 トールさんは感動して涙を流している。


 「トールお姉ちゃん、ハンカチです」


 子ルシスは鉄格子の隙間を通ってトールさんにハンカチを渡した。


 「ルシスちゃんがそういうならトール達を牢屋から出してもらうことにします」


 ロキさんの考えでは、あと1日くらいは牢屋に閉じ込めて反省してもらうつもりであったが、私の意見を尊重して2人を解放することにしたのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...