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フェニ魔界へ行く編 パート3

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 「フェニ、今から王妃の間に行くよ。怖がらなくても大丈夫だからね」

 「バグゥゥー」


 フェニを元気つけようとフェニの影で大人しくしていたバグが現れて、フェニの頬をスリスリとする。


 「バグちゃん、くすぐったいですぅ」



 フェニは嬉しそうに言った。


 「バグもフェニちゃんに懐いているのですね」


 低い声で淡々とダスピルクエットが言う。


 「そうなんだ。フェニはみんなから好かれる明るい性格なんだよ」

 「そのようですね。あの子からは心地良い風が吹いています。私もフェニちゃんの心地よい風に触れて、協力してあげたいと思いました」

 「ありがとう」

 「バクちゃんは本当に可愛いですぅ。はい、焼き立てのパンですぅ」


 フェニは収納ボックスからパンを取り出してバクに与える。


 「ダスちゃんにもあげるのですぅ」


 フェニはダスピルクエットにもパンを差し出した。


 「美味しそうなパンですね」


 ダスピルクエットの仮面の下の顔は微笑んでるに違いない。


 「これはかなり美味ですわ」

 「これはリプロ様が作った窯で焼いた特製の美味しいパンですぅ」

 「リプロ様、その窯は魔界にも作る予定でしょうか?」


 ダスピルクエットはかなりこのパンが気に入った様子だ。


 「もちろんだよ!人界にいた神人が考案したこの窯は、かなり出来が良いのだよ」

 「神人が人界にいたのですか・・・」

 「そうだよ。その件もお母様に報告するつもりだよ」

 「わかりました。急いで王妃の間に向かいましょう」


 『バタン』


 僕の部屋のドアが開いた。


 「その必要はないわ。リプロ、今帰った来たのね」


 僕の部屋に母であるレジーナが入ってきた。


 「お母様、挨拶が遅れて申し訳ありません。人界で色々とあったので準備をしてからお伺いするつもりでした」

 「そうみたいね。きちんと私に説明してくれるかしら?」


 僕は人界の出来事を説明した。もちろん以前に人界へ行った時のフェニとの出会いも説明した。


 「詳しい事情はわかったわ。あなたは少し行き過ぎた行動をとってしまったのね。人間に『フェニックス』の能力を与えるなんてどういうつもりなの」


 レジーナは激しい口調で僕を叱りつける。


 「フェニの姿が、お姉ちゃんの姿とダブったのです。力がないのに必死に他人のために頑張る姿を見て、この子に強い力を与えたいと思ったのです」


 フェニとお姉ちゃんの境遇は全く違う。しかし、力がなくても必死に生きている姿が何となくお姉ちゃんの姿とダブったのである。


 「そんなの言い訳よ。人界のバランスを崩した罪は大きいわ」

 「フェニは、人界のバランスを崩すような子じゃないよ」


 僕は声を張り上げて言った。


 「それは、あなたの独断よ。この子がこれからどんな道を歩むのかなんて誰にもわからないのよ」

 「僕はフェニを信じています」

 「信じるのは自由だけど、私はその子を信じることはできないわ」

 「僕が責任を持ってフェニを育てます。絶対に人界のバランスを壊すようなことはしません」


 僕は強い口調でレジーナに言った。


 「お話中に申し訳ありません。私が発言することをお許しください」


 フェニは、雰囲気を読み取って大人しく僕達のやりとりを聞いていた。しかし、自分のせいで僕が怒られているの聞いて黙っているわけにはいかないと感じたのである。


 「許可するわ」


 レジーナはフェニと目を合わせることなく発言を許可した。


 「リプロ様は私のわがままを聞いてくれたのです。私はリプロ様がいなかったら魔獣に殺されていました。私はリプロ様と出会ってからは、とても楽しい人生を送ることができることができました。私が人界のバランスを崩す恐れがあるのなら、今私を殺してください。私が死ねば人界のバランスが崩れることはありません。私の罪は私が償うべきです」


 フェニはレジーナの方に歩いていき目を閉じて平伏した。


 「お母様だめだよ。フェニを殺さないで!」


 僕は大声で叫んだ。フェニは『フェニックス』の能力があるから死ぬことはないが、お母様なら永久に亜空間に封じ込める『ブラックホール』の魔法で、存在を消し去ることができる。


 「安心しなさい。今はこの子を殺すことはしないわ」

 「今は・・とはどう言うことですか?」

 「ナレッジの件で明日魔界評議会を開催することになっているわ。その時にこの子の処分も決めるわ。私の独断でこの子の処分を決めることはできないのよ。あなたがその子を守りたいなら、その子が生き残れるように努力するのよ。私は力を貸すことはしないわ」

 「わかりました。僕が全力でフェニを守ります」


 そして、お母様からカァラァが行った表天界での出来事を聞いた。


 「お姉ちゃんは死んでいないよ!」


 僕は大声で叫んだ。


 「私もそう願っているわ」


 レジーナは毅然と振る舞っているが、お姉ちゃんのことを心配しているのは、すぐに読み取ることができた。


 「フェニちゃん、リプロと仲良くしてあげてね。私は何もしてあげれないけど、リプロはあなたのことを気に入ってる様子だからね」


 レジーナは先程の冷たい態度から一変して優しくフェニに声をかけた。


 「はい。私はリプロ様には感謝仕切れないくらいの恩があります。私はリプロ様の弟子として一生ついていくことを誓っています」

 「リプロ、フェニちゃんのために、明日の魔界評議会でフェニちゃんの正当性を示すのよ」


 レジーナは、魔王不在の魔王補佐官として、厳しい態度をとっていたが、本当はフェニを歓迎しているみたいである。


 「わかりました」


 こうして、ナレッジの件とフェニの処分についての魔界評議会が行われるのであった。
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