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神守聖王国オリュンポス パート21

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 ★少し時間はさかのぼって、ディービルの森へ向かっている『珍宝』の話しです。


 「おりゃーー、おりゃーー」


 ジュピターの奇声が響き渡る。


 「これでこの辺りのネズミンは討伐したぞ」


 自慢げにジュピターが言う。


 「さすがジュピター様、もう雷霆を使いこなされていますね」


 ヘルメスが、ジュピターをもち上げるように言った。しかしネズミンは討伐難度Gランクの最弱の魔獣である。


 「俺は才能の塊だ。俺にあつえない武器はないのだ。ガハハハハ」


 ジュピターの下品な笑いが響き渡る。


 「ヘルメス、ネズミンをこんなに倒して大丈夫なのか?」

 
 ヴェスタがヘルメスに言った。


 「これでいいのです」


 ヘルメスは静かに呟く。


 「ヘルメス、どうなっても知らないぞ」


 ヴィスタが心配するのには理由があった。ネズミンは30cmくらいのネズミのとても弱い魔獣である。しかし、ネズミンは進化する魔獣なのである。ネズミンから、ネズミッチ、そして最終進化であるネズチュッチュに進化する。

 ネズチュッチュになると討伐難度は一気に上がりDランクになる。ネズチュッチュは、弱いネズミンを倒した者を必要に追いかけてくる、仇討ち魔獣とも呼ばれている。なので、経験豊富な冒険者は、ネズミンを見かけても、攻撃しないのであった。このことはもちろんヘルメスもヴィスタも知っている。知らないのはジュピターだけであった。


 「ジュピター様、先を急ぎましょう」

 「そうだな。こんな雑魚魔獣を倒しても俺の名声は広がらないからな。もっと強い魔獣を倒して、俺の力を国民達に知らしめないとな」

 「そうでございます。このままブラカリの町へ行ってもいいのですが、あちらの岩場にレア魔獣が出ると聞いています。ジュピター様の強さを国民に見せつけるのには丁度良いと思います」

 「ヘルメス、それは良い案だな。俺には、この雷霆がある。これがあればどんな魔獣が出てこようが、負ける気はしないわ。ガハハハハ」


 ジュピターの下品な笑いが響く。


 「ヘルメス・・・あの岩場はかなり危険だぞ」


 ヴィスタがヘルメスに小声で言う。


 「問題はありません」


 ヘルメスは静かに言った。


 「よしいくぞ!」


 ジュピター達は、馬車を走らせて、岩場の近くまできた。


 「馬車を潰されると困りますので、ここからは徒歩でいきましょう」

 「そうだな。ところでヘルメス、この岩場にはどんな魔獣がいるのだ」


 強気を装っているジュピターだが、内心はかなりビビっているのであった。ディービルの森は獰猛な魔獣が住む悪魔の森と言われている。腕に自信のある冒険者が、腕試しにディービルの森に来ることはたまにあるのだが、ほとんどの者は魔獣に恐れをなして逃げ出すのであった。


 「岩石トカゲが生息していると思います。岩石トカゲは貴重な岩石をドロップすると聞いています」

 「岩石トカゲを倒したらいいのだな」


 足をガクガク振るわせながら、ジュピターは言った。

 岩石トカゲも討伐難度はDランクである。C1冒険者であるジュピターなら勝てる魔獣であるが、ジュピターの本当の実力は、Eランク程度である。なのでジュピターは怖くなったのであった。


 「よし、みんなで協力して倒そうではないか」

 「私どもが協力してもよろしいのでしょうか」


 ヘルメスは、申し訳なさそうに言った。


 「俺1人でも楽勝なのだが協力を許可する」


 ビビっているのがバレないように言った。


 「しかし、ジュピター様の足を引っ張るマネをしたくありません。私は、遠くで観戦しときます」


 ヘルメスは、深々と頭を下げながら言った。


 「そうか・・・でも、俺はお前達にも手柄を与えたいと思っている。『珍宝』として全員で岩トカゲを倒して、みんなで名声を手に入れようではないか」


 どうしても一緒に戦って欲しいジュピターであった。


 「私は名声など入りません。私はジュピター様の活躍を国民に伝える伝道師になりたいのです。なので、遠くから観戦して、ジュピター様の勇姿を目に焼き付けます」


 ヘルメスは深々と頭を下げながら言った。


 「しかし・・・」


 ジュピターは、困り果てていた。このままでは1人で戦わないといけないのであった。


 「ヴィスタ、お前にも名声を与えたやるぞ。だから俺について来い」


 ジュピターは、ヴィスタが嫌いであったが、1人で行くのは怖いから、ヴィスタを連れていくことにした。


 「わかりました」


 ヴィスタは、ヘルメスが何を企んでいるかわからないが、誠実なヴィスタはジュピター指示には逆らわないのであった。


 「よし、お前が先に行って確認してこい」

 「わかりました」


 ヴィスタが颯爽と岩場の方へ走っていった。


 「ヘルメス、お前も着いてきたらどうだ」


 ヴィスタだけでは不安だったので、しつこくヘルメスを誘うジュピターであった。しかし・・・


 「ヘルメス・・・どこへ行ったのだ」


 ジュピターが振り返ると、ヘルメスの姿はどこにも見当たらないのであった。


 「ヘルメス」「ヘルメス」


 ジュピターは、何度も何度もヘルメスの名を叫んだが、返事はない。


 「ヘルメスに身に何かあったのか・・・」


 ジュピターは、急に不安になって頭を抱えて座り込んでしまった。


 『チューー・チューーー』


 ジュピターの背後からネズミの鳴き声のような声が聞こえてきた。

 ジュピターは恐る恐る背後を見た。

 ジュピターの後ろには、2mくらいの二足歩行のネズミの魔獣が3体立っていた。その魔獣はネズチュッチュである。

 ジュピターは、雷霆を構えようとしたが、背中に付けていた雷霆がなくなっていた。


 「俺の雷霆が・・・」


 ジュピターは、雷霆がなくなったことに気づき呆然と立ち尽くしている。

 ネズチュッチュは、鋭い爪をジュピターに突き刺そうと突進してきた。


 「ぎゃーーーーー」


 ジュピターの悲鳴が轟いた。

 
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