上 下
195 / 453

神守聖王国オリュンポス パート4

しおりを挟む


 「俺のファンだと」

 「そうです。お会いできてうれしいです」


 サクラは可愛く微笑んだ。


 「今は食事中だ。サインなら後にしてくれ」


 ジュピターはカッコつけて言うが、内心は大喜びである


 「ごめんなさい。ついジュピター様にお会いできて、嬉しくてお声をかけてしまいました」

 「いや、気にするな。お前の気持ちは当然の事であろう。そんなことで怒るほど俺の器は小さくないからな」


 嬉しそうにジュピターは言う。


 「ジュピター様はお強い上に優しいのですね。ますますファンになってしまいますわ」


 ニッコと微笑みながらサクラは言う。


 「立っているのも辛かろう、俺の横に座るがいい」

 「本当によろしいのでしょうか」

 「構わない。女性を立たせたままにするのも、よくないからな」


 カッコつけてジュピターは言う。


 「ジュピター様は噂通りの紳士なのですね」


 そう言うとサクラは、ジュピターの真横に密着するくらい側に座ったのであった。

 ジュピターは密着するくらい近くにサクラが座って、鼻の下を伸ばして喜んでいるのであった。


 「俺の噂だと」

 「そうですわ。女性達の間では、ジュピター様はとても強くて、優しくてカッコいいと言われていますわ」


 実際のジュピターの噂は、傲慢で態度が悪く、実力もないのに王族であるという事でC1ランクに上がったと、ボロクソ言われているのである。


 「そ・そ・そうなのか。それは知らなかったぞ」


 ジュピターはとても嬉しそうだ。


 「ジュピター様は、この村に何しにきたのですか?」

 「国王からの極秘任務だ」

 「そうなんですね。国王様から1番の信頼を受けているジュピター様だからこそできる任務なのですね」

 「その通りだ。お前はよくわかっているな」

 「当然ですわ。ジュピター様のことなら、なんでも知っていますわ」

 「ガハハハハ、それは嬉しいぞ」


 ジュピターは、初めての褒められてとても気分が良くなっているのである。


 「確かパースリの町を占拠していたジャイアントゴブリンを、殲滅したのもジュピター様と聞いていますわ」


 もちろん嘘である。パースリの町のジャイアントゴブリンを倒したのは『ラスパ』である。しかし、王都内では、『珍宝』が倒したとジュピターが吹聴しているのであった。


 「その話しは内密だけどな。母が自分の勢力を広げるために、亜人がいる『ラスパ』が倒したと嘘の情報を流しているから、あまり公にはできないのだ。母の嘘がバレないように、俺は黙って見過ごしてやっているぜ」

 「ジュピター様は心も広いのですね」

 「当然だ。俺は影響力のある男だ。俺の発言で、世界が動くので慎重に言葉を選んで発言するようにしている。なので、母の嘘の言動も見逃してあげてるのだ」

 「素晴らしいですわ」

 「当然のことだ」


 ジュピターは誇らしげに言う。


 「今回の国王様の任務もかなりの重要な任務なのですね。どんな任務か知りたいけど、我慢しますわ」

 「そんなに知りたいのか」

 「もちろんですわ。次はジュピター様がどんなご活躍をするか知りたいのは、ファンとして当然ですわ」

 「そうか・・・仕方がない。お前にだけ教えてやろう」

 「よろしいのですか?」

 「俺のファンなら問題はない。しかし誰にも言うなよ」

 「もちろんです」

 「ジュピター様、おやめ下さい。素性もわからない者に極秘任務を教えるのは問題があります」


 ヴェスタが言う。


 「お前は黙っていろ。この女は信頼に値すると俺が判断したから問題はない」

 
 ジュピターはヴィスタを怒鳴りつける。


 「口出して申し訳ありませんでした」


 ヴィスタが謝罪する。


 「今回の俺の任務は、雷霆をネプチューンに届けることだ」

 「雷霆?」

 「雷霆とは神剣だ」

 「そんな重大な任務をされているのですね」

 「当然だ。俺はC1ランクの冒険者だかな」

 「素敵ですわ。でも神剣をネプチューン侯爵様に、お渡しするのはもったいないですね」

 「どういことだ」

 「だって、ネプチューン侯爵様にお渡しするよりも、ジュピター様がお使いになった方が、神剣も喜んでくれると思いますわ」

 「確かにそうだな。ネプチューンよりも俺の方が神剣にふさわしいな」


 ジュピターは満更でもない感じである。


 「そうですわ。神剣は扱う人を選ぶと言われています。神剣もネプチューン侯爵様に使われるのは嫌だと言っていますわ」

 「ヘルメスはどう思う」


 ジュピターは迷っていた。なので信頼できるヘルメスにアドバイスを求めた。


 「確かに、ジュピター王子様が使用された方が良いと思います」

 「ヘルメス、何を言っているのだ。デレク国王様の指示に反くのか」


 ヴィスタは声を荒げて言う。


 「ヴィスタは黙っていろ。俺はヘルメスに聞いているのだ」

 「申し訳ありません」


 ヴィスタが謝罪する。


 「雷霆は俺がもらうか。だが、ネプチューに渡す武器はどうしたらいい」


 ジュピターがヘルメスに問う。


 「ブラカリの町にあるグラムを奪って、グラムを渡せばよろしいかと思います。私の情報では、ネプチューン侯爵様はグラムの代わりになる神剣を探していると聞いています。それにデレク王様も何度もグラムを返すようにリッチモンド侯爵に要請していますが、要請に従いません。なので、ジュピター様がグラムを奪い返せば、全てが上手くいくと思います」

 「ヘルメス、ブラカリの町は神守教会の勢力を持ってしても、倒せなかったのだぞ。それを『珍宝』だけでグラムを奪取するなんて不可能だ」


 ヴィスタが慌てて言う。


 「お前は黙っていろ」


 ジュピターがヴィスタを怒鳴る。


 「申し訳ございません」


 ヴィスタが謝罪する。


 「ヘルメス、名案だぞ。俺はお前の案を採用する。予定を変更してブラカリの町へ向かうぞ」

 「了解です」


 ヘルメスはニヤリと笑ったのであった。

 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...