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倭の国パート20

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 ★150年前の倭の国★


 150年前の倭の国は、妖怪と人間が共に過ごす国であった。


 「妖狐様、エルフとドワーフが戦争を起こしそうです。倭の国はどうしたら良いと思いますか?」

 「詳しい事情がわからりません。しばらくは様子を見ましょう」

 「はい、そうします」


 妖狐に意見を求めているのは、150年前の倭の国の将軍織田信信であった。


 「そいえば、オリュンポスの辺りで魔王が現れたと情報が入っています。世界が悪い方へ傾いているように感じます。倭の国の警護も強化した方が良いでしょう」

 「はい、妖狐様。倭の国の警護の件は、明智暗秀に命令しておきます」

 「妖狐、倭の国の警護は俺に任せとけ」


 お酒を飲みながら、酒呑童子が言う。


 「酒呑童子、大事な会議中です。お酒は、会議が終わってからにしなさい」

 「かたい事を言うなよ。たかが樽1杯だけだぞ。こんな量だとお酒とは言えないぞ」


 酒呑童子は大酒飲みである。


 「妖狐様かまいません。私たちは気にしていません」


 織田将軍の側近の豊臣秀凶が言う。


 「ガハハハハ、豊臣、いいことを言うではないか。お前にも、少し分けてあげるぞ」

 「自分は大丈夫です。酒呑童子様がお飲みください」


 倭の国に妖怪がいることで、倭の国の近辺は魔獣が近寄ってこない。もし近寄ってきても、妖怪達が退治してくれるのであった。また、近隣の国々も、妖怪に恐れて倭の国に侵攻してこないので、倭の国の住人は妖怪に感謝しているのであった。しかし一部の者は不快に思っている。


 「面白くない。なんで妖怪と一緒に住まないといけないのだ」


 明智暗秀が言う。


 「明智様、誰かに聞かれたら危険です」

 「こんなところに誰がいるのだ。俺は以前から不満に思っていたのだ。人間の国に妖怪を住まわせる考えは、間違っているぞ」

 「それはごもっともな意見でございます。しかし、倭の国は、100年前から妖怪と暮らすようになってから、争いはなくなり倭の国が平和が続いています」

 「本当に妖怪のおかげなのか?俺だって剣術にはかなり自信がある。妖怪の力なぞ借りなくても、俺が魔獣どもを殺してやるわ」

 

 明智は柿山城の酒呑童子専用の酒蔵で、仕事をサボってお酒を飲んで、愚痴を言っていた。


 「織田将軍は妖怪の言いなりだ。このままでは、倭の国は、妖怪に乗っ取られてしまうぞ」

 「確かに明智様のご意見は、もっともでございます」

 「そうだろ。俺に、もう少しだけ力があれば、妖怪を追い出して、俺が倭の国の将軍になってやるのに」

 「明智様、実はいいお話しがあります」

 「なんだ?」

 「実は、私は召喚魔獣のツボを手に入れることができました。このツボを使って召喚魔獣を呼び出して、妖怪達を倭の国を追い出すことができるのです」

 「召喚魔獣だと・・・・危なくないのか」

 「大丈夫です。召喚魔獣は召喚者を襲うことはありませんし、危険と感じたら、ツボに戻したらいいのです」

 「それはすごいな。俺はこのままだと、一生織田の使いっ走りで終わってしまう。そんな便利な召喚魔獣がいるのなら、俺が倭の国の将軍になれそうだな」

 「もちろんなれますとも。織田よりも明智様のが将軍に相応しいと思います」

 「そうだな。俺のが将軍に相応しいよな。しかし、お前は初めて見る顔だな?いつから柿山城の配属になったのだ」

 「今日からです。最初の任務で明智様とご一緒できて光栄です。さぁ、この召喚のツボで倭の国を滅ぼして、新たな将軍になってください」

 「これが召喚のツボかぁ。どんな魔獣が出てくるか楽しみだな」


 明智はかなりお酒によっていた。普段の明智なら召喚のツボを使って倭の国を滅ぼそうなど絶対に思わないのである。しかし、お酒の力によって、明智の心の中に潜む小さな悪の心が大きくなり、召喚のツボを使ったのであった。


 明智は召喚のツボ、いや封印のツボの封印を解いてしまった。封印のツボにはお札が貼ってある。そのお札を剥がすと封印は解かれてしまうのである。

 封印のツボから中年の小太りのおっさんが現れた。


 「???」


 明智は召喚獣が現れると思ったのに、封印のツボから現れたのは中年の小太りのおっさんだったので驚いている。

 「おい、話しが違うぞ。変なおっさんが出てきたぞ」

 「お前は、誰に向かって、変なおっさんと言ってるのだ!」


 この中年のおっさんは山田オロチである。八岐大蛇の人間バージョンである。


 「どう見ても変なおっさんだろ!ここは神聖なる柿山城だ。すぐに立ち去れ」


 明智がオロチに叫ぶ。


 「死ね」


 オロチは金色に輝く剣で、明智の首を切り落とした。


 「さすが草薙の剣だ。切れ味が最高だぜ」

 「お前が八岐大蛇なのか?」

 「そうだ。お前が俺の封印を解いてくれたのか」

 「解いたのは、そこに転がっている人間だ。八岐大蛇の封印を解けるのは、欲望の強い人間だけだ。俺は人間じゃなく化け狸だからな」


 明智をそそのかして、八岐大蛇の封印を解いたのは化け狸であった。


 「俺の封印を解いてどうして欲しいのだ」

 「俺と一緒にこの倭の国を支配しようぜ。お前の力があれば、妖狐や酒呑童子を簡単に倒すことができるはずだ」

 「・・・・」

 「どうした」

 「お前では、俺の草薙の剣を預けるには役不足だな」

 「どういうことだ」

 「こういうことだよ」


 オロチは、化け狸を封印のツボに封じ込めてしまった。


 「お前は俺を封印のツボから解放してくれたから、命だけは助けてやる。そのツボの中で永遠の命を楽しむのだな」


 化け狸は、封印のツボに封印されて、酒蔵に保管されてしまったのであった。


 
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