173 / 453
倭の国パート14
しおりを挟む「第三試合、右目の眼帯を外すとき、最強の侍となる野獣十兵衛対フレッシュ組の超新星沖田早郎の試合を始めます」
試合開始の鐘が鳴った。
「かかってこい、沖田!お前の実力を見せてもらうぞ」
沖田早郎はまだ16歳と若い侍であるが、幼少の頃から、天才剣士と騒がれていた逸材である。今回が初めての剣術大会の出場だが、優勝候補と噂されている。
「沖田様ーーーー」
「沖田様かっこいいですわーーー」
沖田早郎は、剣の才能だけでなく、見た目も超美男子で、エードの町ではアイドル並みの人気である。なので、沖田早郎の姿をひと目みようと、若い女性がたくさん集まっている。
その若い女性の中で、ひときわ大き声で、声援を送っているのがもみじちゃんである。
「キャーー、沖田様が私に手を振ったわ!!!もしかしたら、私のことを愛しているのかもしれませんわ」
もみじちゃんは、とんだ勘違い女である。沖田は観客に手を振っただけなのに、自分だけに手を振ったと勘違いしているのである。
「ヒメコ様、私は、剣術大会が終わったら、沖田様と結婚することになりましたので、忍びを辞めることにします」
もみじちゃんは、ヒメコ様に退職届けを手渡したのであった。
「はいはい」
ヒメコ様は、退職届を受け取って、すぐに捨てたのである。ヒメコ様の対応を見ると、よくあることなのであろう。
さて、試合に戻ろう。
沖田は、試合開始の鐘音と同時に、野獣に襲いかかる。沖田の猛攻に野獣は怯んでしまい、広場の舞台から飛び降りた。
野獣が舞台から降りたので、野獣の場外負けである。なので沖田は刀を突き上げて勝利を宣言する。
「トイレ休憩のため試合は中断します」
審判が奇怪なことを言う。
「トイレなら仕方がない」
「そうだ、そうだ」
エードの町の侍達は、野獣を擁護するかのように叫んだ。
エードの平民は、侍達に逆らえないし、審判の判定に文句も言えない。
「野獣に尿意がなければ、沖田様は勝てたのに・・・」
もみじちゃんは、審判の判定を素直に受け入れて悔しがっている。
野獣は、場外に逃げた後、トイレに行くふりをして、一旦屋敷の中へ入ってから、広場の舞台に戻ってきた。
「待たせたな沖田」
野獣はカッコつけて言うが、みっともない姿である。
「次は、もう逃げる手段はないぞ」
沖田は、審判が家康将軍の配下であるのはわかっているので、文句は言わない。審判に抗議でもしたら、即退場となるのがわかっているからである。
「お前の実力は、把握できたわ。ついにこの眼帯を外す時がきたか・・・」
野獣は眼帯を外し、長年閉ざされた目を見開いた・・・
「う・・・・太陽が眩しすぎて、目が見えない」
野獣は子供の頃から、独眼竜政宗に憧れたいた。あのかっこいい眼帯をつけた姿を。なので、野獣は子供の頃から、ずっと右目に眼帯をつけて生活をしていた。
そして、いつの頃からか、ある噂が流れるようになってきた。野獣が眼帯を外した時、本当の強さを発揮すると・・・しかし、それはただの噂であり、真実ではなかった。野獣は、ただカッコいいから眼帯をつけていただけであり、力を封印していたわけでは、なかったのである。
しかし、当の本人も、なぜ眼帯をつけているのか忘れてしまい、嘘の噂を間に受けて、眼帯を外せば、強くなれると信じていたのであった。
野獣は、眼帯を外して、まともに見えない右目を抑えて、オロオロしているところを、沖田に蹴り飛ばされて、場外負けとなった。
「魔の力に汚染されたのだろう」
沖田は、野獣がかわいそうに思えて、野獣をフォローする言葉を残して、舞台から降りていった。
沖田のフォローにより、野獣は封印した力が大きすぎて、身を破滅したと審判から説明されたのであった。
広場の屋敷の最上階から、剣術大会を観戦している家康が問う。
「野獣はなぜ負けたのだ」
「闇の力に食われてしまったのです」
佐々木大二郎が言った。佐々木は、真剣にそう思っている。
「どういうことだ」
「野獣の右目には、闇の力が注ぎ込まれていました。その力を封印するために、眼帯をつけていたのです。その闇の力を解放しようとして、眼帯を外したのですが、闇の力に飲み込まれてしまったみたいです」
「そういうことか・・・武蔵に続いて、野獣までもが一回戦で消えるとは、想定外だ」
「問題ありません。この佐々木大二郎が必ず優勝して見せます」
「よしわかったぞ。お前の次の対戦相手は、簡単に勝てるように、ルシスという子供にしといてやる。武蔵は、腹痛で棄権となったから、お前は体調管理をしっかりとしておくのだぞ」
「わかりました。手洗い・うがいはきちんとしておきます」
第四試合は、西郷大盛のパワーある剣術を軽くあしらって、巴午後が圧勝した。
「続いて、第五試合を始めます」
家康将軍の配下の者が、出場していない組み合わせは、選手の紹介もなく、淡々と試合が始まってしまうわかりやすい演出である。
「ロキさん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
お互い、きちんと礼をして、開始の鐘の音を待つ。
『カラン・カラン・カラン・カラン』
鐘の音がなった。
近藤男が、両手で刀を構えて、ロキさんに、じわりじわりと近づいてくる。
ロキさんは、魔剣レーヴァティンを握りしめて、近藤男の動きをじっと見ている。
近藤男は、腕が震えている。近藤男には、ロキさんのスキのない構えに、驚愕しているのである。
「ロキさん・・・あなたは、化け物ですか」
「化け物とは、女性に対して失礼ですわ」
「申し訳ありません。しかし、あなたから感じるオーラは、化け物という言葉以外は浮かんできません」
「なら、褒め言葉して、受け取りますわ。近藤さん、かかって来ないのなら、無理矢理にでも、近づけてあげますわ」
ロキさんは、レーヴァティンを振りかざす。すると、近藤男は、瞬時にロキさんの目の前に引き込まれる。
「これが、内臓を助けた技ですわ」
そう言うと、ロキさんは、近藤男の腹部を突いて、気絶させたのであった。
「勝負あり。勝者ロキ選手」
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる