155 / 453
妖精王パート25
しおりを挟む食欲の3魔王は、あっという間に雑炊を食べてしまったのであった。
「おかわりよ」
「おかわりだぜ」
「おかわりですわ」
客人なのに、あつかましい3人である。
村長の家族は、もう一つの鍋を渋々渡すのであった。
「わーい、わーい。追加の雑炊なのよ」
「ありがたいぜ」
「感謝しますわ」
食欲の3魔王は、追加の雑炊に大喜びをする。
ロキさんは、村長の家族に深くお詫びをするが、村長の家族は、ヒュドラ、八岐大蛇を倒してくれたお礼なので、気にすることはないと言ってくれた。
しかし、食欲の3魔王の胃袋は、これだけで満足するはずがない。
「おかわりよ」
「おかわりを頼むぜ」
「おかわりをお願いするわ」
村長の家族は、もう雑炊はできないので、困り果てている。
「ゴツン」
「ゴツン」
「ゴツン」
ロキさんが、食欲の3魔王の頭に、ゲンコツをくらわす。
「いい加減にしなさい。もう十分食べたでしょ。これくらいにしときなさい」
食欲の3魔王は、ロキさんに怒られて、シュンとするのであった。
私は、あることに気づいた。ポロンさんの手元に、金色に輝く剣があることに。
「ポロンお姉ちゃん、その金色の剣は、どうしたのですか?」
「これは、虹蛇の体内で拾ったのですわ」
「その剣は、草薙の剣では、ないのですか!」
剣に気づいた、ミコトさんが、教えてくれた。
「確か、あの大蛇も、そんなことを言ってたかしら」
ポロンさんは、草薙の剣の話しを、もちろん忘れていたのであった。
「これで、試練は達成でわ!封印したオロチに聞いても、草薙の剣のありかを、言わないから困っていたのよ」
ロキさんだけは、ちゃんと、今回の試練の内容を把握していたのであった。
「トール、オーベロン王の元へ戻るわよ」
「えーーー!今日は、ここでゆっくりとしていこうぜ」
「そうですわ。まだ雑炊が食べたいですわ」
「雑炊・・・まだあるのかしら?あるのなら、食べさしてよ」
トールさん達の意見は、もっともであった。もう時間も遅いので、村長には悪いが、今日はここに泊めてもらうが妥当だと私も思った。
それに、お米の話しを村長に確認したいと、私は考えていたのであった。
「ロキさん、今日はオロチ祭りです。ヒュドラの脅威もさり、虹蛇も退治されました。祭りの本番は夜なので、皆さんで、楽しんでください。雑炊の追加は難しいですが、祭りでは、いろんな出店で食事が楽しめます」
村長が、私たちを引き止めてくれた。
「祭りを楽しもうぜ」
「そうですわ」
「出店の食事?気になりますわ」
「ロキお姉ちゃん、今日はゆっくりと、この村で過ごしましょう」
「わかったわよ」
ロキさんも了承して、村に滞在することになったのであった。
トールさん達は、出店の食事を堪能して、私は、村長に、米の入手先を確認したのであった。
次の日、私たちは、オーベロンの元へ向かった。
ダンドーク山に着くと、そこには、金色の長い髪をした美しい女性が、立っていた。
「サラマンダー、適当なことを言ってくれましたね」
サラちゃんの、額から、大粒の汗が流れ落ちていく。
「なんのことかしら。オホホホ・・」
明らかにサラちゃんが、とぼけていることは、すぐにわかった。
「オーベロン王のことよ。私が、オーベロン王と浮気したと、ティターニアに言ったでしょ」
「記憶にございませんわ」
私は覚えている。サラちゃんは確かに、そう言っていた。それなら、この女性が、水の精霊神のウンディーネなのであろう。
「とぼけないでよ。そのせいで、昨日はずっと、ティターニアに説教をくらったのよ。私は、オーベロン王に、言い寄られていただけで、あんなクソジジイなんて、全く興味がないのよ」
「ティターニアが、勘違いしただけよ。私が、ウンチャンのことを悪く言うと思うの」
「だから、その呼び方は、やめて欲しいと、何度も言ったわよね」
「ウンディーネだから、ウンチャンと呼んで、何がいけないのよ」
「ウンチャンは、なんかイメージが良くないから、ディーチャンにしてと何度も言ったわよね」
「ディーチャンより、ウンチャンのが可愛いと思ったのよ」
「全然可愛くないわ」
サラちゃんとウンディーネの話しの論点が、どんどんずれていくのであった。
「ウンディーネ、サラマンダー、その辺にしときなさい。悪いのは、オーべロンなのよ」
ティターニアが妖精の扉から出てきた。
「オーベロンの今回の浮気相手は、わかったわ。リャナンシーだったのよ」
リャナンシーとは、若くて美しい女性の姿をした妖精である。リャナンシーには、妖精の恋人、妖精の愛人と言う意味も持つのである。
「私の思った通りだわ」
根拠もなく、サラちゃんが自慢げに言う。
「リャナンシーにも困ったものだわ」
ウンディーネが愚痴りながら言う。
「オーベロンは、罰として、当分は外出禁止にしたわ。ウンチャン、疑ってごめんね」
「だから、その呼び方はやめてよ」
ウンディーネは、頬を膨らませて、怒り出す。
「ウンチャン、怒ると美容に悪いわよ」
サラちゃんが、かぶせるように、ウンチャンと呼ぶ。
「もう、本当にやめてよ」
「あのーーー、話しをしているところ、悪いのですが、オーベロン王に会いたいのですが?」
ロキさんが、話しが進まないので、話しを、遮るように、ティターニアに声をかける。
「覚醒の件ね。それなら、試練の成果を見せてくれるかしら」
私たちは、封印した八岐大蛇と草薙の剣を渡した。
「完璧ね。2度と八岐大蛇が悪さをしないように、八岐大蛇は、私が管理しとくわ」
「これで覚醒してもらえるのですか」
「もちろんよ。今から、オーベロンのいる妖精の神殿に、行きましょう」
私たちは、妖精の扉を通って、妖精の神殿へ向かった。しかし、サラちゃんが妖精の扉に入ろうとした時!
『ゴツン』
「痛いわよ。なんで私だけ、入れないのよーー」
サラちゃんとオーベロン王の和解は、まだ成立していないのであった。
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる