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妖精王パート16

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 「ルシスちゃん、少しお腹が空いてきましたわ。お食事タイムが必要よ」

 「サラちゃん、私も、おやつタイムが、必要だと思っていたところよ」

 「おやつタイムですって!!!待ってましたわ。どんなおやつが待っているの?」

 「幻魔のコアという、極甘スイーツですわ」

 「幻魔のコア??そんなに甘ーーーいスイーツなの?」

 「そうです。ふんわりプリプリ食感で、舌が解けてしまうくらい甘いスイーツです」

 「本当なの!!!すぐに出してよ」

 「それが・・・・その幻魔のコアは、ヒュドラの体内にあるの」

 「なんですって!!ヒュドラが体内に隠し持っているのね。私のヤミークラブだけでなく、幻魔のコアまでも、独り占めするなんて、絶対に許さないわ」


 サラちゃんを上手く誘導できそうである。


 「サラちゃん、ヒュドラの体内に入って、幻魔のコアを食べてしまったらいいのよ」

 「もちろんよ。でも・・・ヒュドラの体内に入るには、どうしたらいいの・・・。それに、ヒュドラの臭い毒が体内に充満していたら、臭くて、気分が滅入ってしまうわ」

 「サラちゃん、安心して、ヒュドラの九つ頭のうち、1つは毒を持っていないの。そこから侵入したら、毒がないので、快適におやつタイムを、堪能することができるはずです」

 「わかったわ。どうやって、体内に入ろうかしら」

 「私が、魔法でサラちゃんを、ヒュドラの口へ投げ飛ばします。なので、サラちゃんは人型になって、ボールのように丸くなって欲しいの」

 「わかったわ。私はボールのように丸くなるわ」


 サラちゃんは、人型に戻って、体を丸くして、大人しく待っている。私は、風魔法を使って、ヒュドラの口に向かって、サラちゃんを投げ飛ばした。

 ヒュドラは、お決まりパターンで九つの口から、毒を吐き出す。私は、サラちゃんを投げたあと、自らも、ヒュドラに向かって、飛んでいき、調理用ナイフで8、本の首を綺麗に切り落とす。

 残った一本の頭の口の中に、サラちゃんが命中して、体内に入っていく。


 サラちゃんは、体内に入ると、幻魔のコアを探し始めた。

 
 「真っ暗で何も見えないわ」  


 サラちゃんは、体を燃上らせて、体を松明の代わりにした。


 「これで視界は良好よ。さて、幻魔のコアは、どこにあるのかしら?」


 サラちゃんは、ヒュドラの体内をじっくりと観察する。


 「あちらの方から、甘くていい香りがするわ」


 サラちゃんは、あまーい匂いに釣られて、匂いのある方へ歩いていく。

 サラちゃんが歩いていくと、そこに、二つの石があった。

 一つは、紫色の禍々しい石。もう一つは、アメジストのように光り輝く、美しい紫色の石。


 「これが、幻魔のコアに間違いないわ。さて、どちらを食べようかしら」


 サラちゃんは、どちらも甘い匂いがしていたので、どちらが、幻魔のコアか迷っていた。しかし、禍々しい石が、猛毒を発生するコアで、美しい石が、幻魔のコアであるのは、一目瞭然である。しかし、食いしん坊であるサラちゃんは、迷っていたのである。


 「禍々しい色からは、微妙に嫌な匂いがするわ。しかし美しい色の石からは、全く嫌な匂いはしない。これは間違いないわ。美しい石が、幻魔のコアで、禍々しい石は、偽物ですわ」


 サラちゃん、綺麗な石を手に取り、すぐに口に入れたのであった。


 「う・・・う・・・・う・・・・・・・」




 サラちゃんが体内に入って、数分経った。私が、切り落としたヒュドラの首は、まだ再生しない。そして、ヒュドラは、残りの1つの首は、まだ動いている。なので、まだサラちゃんは、まだ、幻魔のコアを食べていないのだろう。



 
 「ルシスとサラは大丈夫かな?」

 「あの2人が負けるとは、思えないわ。でもヒュドラは、再生を繰り返すので、討伐できないと聞いているわ。どうやって討伐できるのかしら」

 「何か弱点が、必ずあるはずよ。ルシスちゃんなら、なんとかしてくれるわ。私たちは、八岐大蛇の討伐に専念しましょう」

 「そうだな」

 
 ロキさん達は、出雲山を慎重に登っていった。どこに、どんな魔獣が、潜んでいるか分からないので、いつでも、戦闘できる準備をしていた。

 
 「ロキ、あそこに、大きな家があるぞ。怪しくないか」

 「そうだね。誰がこんなところに住んでいるのか、気になりますわ」

 「俺が、確認してくるぜ」


 そう言うと、トールさんが、怪しい家を探索しに行った。

 数分後。


 「ロキ、誰か住んでいるみたいだぞ」

 「そうなの?誰が住んでいるのかしら?」

 「山田 オロチさんが、住んでいるぞ」

 「なぜ、わかったの?」

 「家の前に、表札が付いていたぜ」

 「八岐大蛇・・・山田 オロチ・・・・何か関係があるのかもしれないわ」

 「そうだな。俺が、再度確認してくるぜ」


 そう言うと、トールさんが、再び怪しい家を探索に行った。


 「私たちも行ったほうが、いいかもしれないわ」


 ポロンさんも、トールさんの後を追いかけた。

 ロキさんは、その場を離れずに、周りを警戒していた。とても怪しい家なので、3人で近づくのは、危険だと思っての判断であった。


 「ポロンも来たのか」

 「はい。この家に、何か秘密がありそうだと、思ったのですわ」

 「そうだな。とりあえず、インターホンでも押してみるか」

 「賛成ですわ。礼儀正しく、家に訪れるのが常識ですわ」


 『ピンポーーン、ピンポーーン』

 「どちら様でしょうか」


 インターホンから女性の声がした。


 「トール、どうしましょう」

 「俺に任せろ。荷物をお届けにきました。ハンコをもらえますか?」

 「荷物?今、オロチに確認しますので、少しお持ちください」

 「トール、大丈夫なの」

 「大丈夫だ。もしもの時は、間違いましたと言って、逃げるのみだ」

 「それは名案ね!いつでも逃げれるように、準備しときますわ」

 「オロチに、確認が取れました。生贄の荷物ですね。少しお待ちください」

 「おい、どうする!ポロン」

 「トールが生贄になって、この家を探索するのは、どうですか?」

 「えっ!俺が生贄になるのか?」

 「はいそうです。あとは、私に任せてくれたら、問題ないですわ」

 「・・・・」


 『ガタン』


 「お待たせしました。生贄を取りに来ました」


 そこに現れたのは、美しい人間の女性であった。この女性は、一体、何者なのであろうか?
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