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妖精王パート9

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 「ビッククラブを倒しに行くぞ」

 「おうーー」


 トールさんの掛け声に、サラちゃん、ポロンさんが答える。


 出雲山に、八岐大蛇を倒しに行くはずが、いつの間にか、ビッククラブの討伐に変わってしまっているのであった。


 「トール、私達は、八岐大蛇を倒して、草薙の剣を取りに行くのよ。ビッククラブは、そのついでに、倒しに行くだけよ」

 「わかっているぜ。でも、美味しい食材を、食べてからの方が、力が出るはずだぜ」

 「そうですわ」

 「そうなのよ」


 確かに、トールさんの言い分は、間違ってはいない。しかし、明らかに、ビッククラブを食べたい目に、なっているのは、一目瞭然である。しかし、無駄な言い争いをしても、仕方がないので、ロキさんは、諦めて何も言わなかったのである。


 サラちゃんは、鼻歌を歌いながら、上機嫌で、出雲山に向かっている。よほどビッククラブは、美味しいのであろう。私も、どんな味か、興味が湧いてきたのである。

 しかし、ビッククラブを倒したとしても、3mもあるビッククラブをどうやって、茹でるのであろうか。普通の鍋では、不可能である。しかし、こんなことがあると私は、予測して、5mの特大の鍋を用意している・・・わけではない。そんな予測をできるはずがないのである。

 茹でるのは、無理でも、魔法で焼いて食べたらいいかなと思うのである。でもカニは、やっぱり鍋にして茹でて、食べた方が美味しいのにと思うのであった。

 ダンドーク山から、1時間くらいで、出雲山には到着した。しかし、今の目的は、ビッククラブである。私達は、出雲山を通り過ぎて、ビッククラブのいる。海辺の方へ向かったのであった。


 出雲山を過ぎて、15分くらいしたら、大きな海が見えてきた。この海を南に行くと、オーガランドがあるらしい。オーガランドあるということは、このあたりの海は、クラちゃんが通った場所に違いない。

 神獣の中でも、トップクラスの食いしん坊のクラちゃんが、ビッククラブを食べ尽くしていないことを、祈るしかないのである。


 海に着いた私達は、ビッククラブを探すことにした。サラちゃんが、言うには、ビッククラブは、海の岩場に影に潜んでいたり、海の底をのんびりと、横歩きしているみたいである。オーガランドの周りには、デスシャーク、ヘルオクトパスが潜んでいるが、この海域には、いないようである。


 「岩場の方を探しているけど、全然見つからないぞ」

 「こっちの方にもいませんわ」

 「サラ、本当に、この辺りにいるのだな」

 「間違いありませんわ。もしかしたら、産卵時期なので、海中に身を潜めているかもしらませんわ」

 「海の中かぁ。海中での戦闘は、苦手だぜ」

 「私もですわ。海の中では、息ができませんわ」

 「水、氷属性があれば、海中でも戦闘もできるのにね」

 「ホントだぜ。サラも火の聖霊神だから、海中は苦手だろ」

 「そうですわ。海中は、水の聖霊神ウンディーネの領域ですわ。でも問題ないですわ。私は、初めから、海中のビッククラブを狙っていのたよ。私のマグマを使って、この海を大きな鍋にして、ビッククラブをお料理してあげますわ」


 そういうとサラちゃんは、海に目掛けて、無数のマグマの塊を吐き出したのであった。

 無数のマグマの塊は、海を瞬時に高温にして、グツグツと泡をたてて、沸騰しているのであった。しばらくすると、海底にいた、ブッククラブが、いい感じに茹でられて、真っ赤になって、水面に浮かんできたのであった。

 水面に浮かんだ、ビッククラブを、サラちゃんが拾い上げて、ムシャムシャと食べていく。


 「身がたくさん詰まっていて、美味しいですわ」


 私は、このままでは、サラちゃんが全て食べ尽くしてしまうと思って、素早く、ビッククラブを回収する。


 「ルシス、よくやった。あのままでは、俺たちの分が回ってこない感じだったからな」


 トールさんも、すぐに察知していた。サラちゃんが、全部食べ尽くすことを。

 私は、ロキさん達に一体ずつ、ビッククラブを渡して、残りはオーベロンの為に、収納ボックスにしまった。

 しかし、なんだかおかしいと、私は、感じていた。それは、2点ある。

 まずは1つ目は、なぜ、美味しいと有名なビッククラブが、こんなに多量に生息しているのか、ここは、クラちゃんが来たはず、あの食いしん坊が、食べずに、通過するとは、思えない。

 そして、2つ目が、私が、ビッククラブを回収しても、サラちゃんが、何も言ってこない。普段なら、私のビッククラブを取らないでーーーと怒ってくるはずだ。

 この2点を踏まえて、私は、考えてみた・・・そういうことか。謎は全て解けたのであった。

 私は、『世界の絶品珍味大事典』に載っていた、あの魔獣を思い出したのであった。そう、ヤミークラブのページを。


 ヤミークラブとは、海に生息する魔獣の中でも、トップクラスの美味しさを誇る、海のデザートと言われる魔獣である。ヤミークラブの身は、甘みをもたらす成分が多く含まれているので、ヤミークラブを襲う魔獣が多い。しかし、ヤミークラブの鋭いハサミは、鋼鉄を紙のように、サラリと切りほどの切れ味があり、容易に近づくことは、できないと言われている。

 サラちゃんの本命は、ヤミークラブに違いない。サラちゃんは、ヤミークラブを一人占めするために、誰にも言っていないのだろう。だから、クラちゃんも、ビッククラブに見向きもしないで、ヤミークラブだけを狙って食べたのであろう。

 案の定、サラちゃんは、ビッククラブを5体ほど食べた後は、上空から、海面をずっと睨みつけている。ヤミークラブが浮き上がってこないか、確認しているのであろう。

 しかし、クラちゃんが通ったなら、もうヤミークラブは、全て食べられた可能性が高い。場所を変えないと、食べることは不可能だろう。


 「おかしいわ?ヤミーが、浮き上がってこないわ」


 サラちゃんがブツブツと独り言を、言っているのであった
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