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妖精王パート1

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 「ティグレ、久しぶりだな」

 「長い間、迷惑をかけたな」

 「気にするな。必ず戻ってくると、俺は信じていたからな」

 「ありがとう」


 ティグレさんとダーシャンは、お互いを強くだきしめて、感動の再会を果たしたのであった。


 「ところで、ティグレよ、さっきから、俺の頭上にいる女の子は、誰なんだ」

 「・・・すまない。その子は、俺の大事な友達ではあるのだが、その・・・何をしているのか、俺にもわからないのだよ」


 「ダーシャンさん。パオーーーンをしてください。パオーーーンです」

 「ティグレよ、パオーーーンとはなんなのだ?」

 「すまない。俺にも理解不能だ」

 「パオーーーーンが無理でしたら、耳を羽ばたかせて、飛んでください」

 「ティグレよ、俺にそんな能力があったのか」

 「すまない。ダーシャン、無理かもしれないが、耳を羽ばたいてくれないか。その子には、いろいろとお世話になったので、力になってあげたい」

 「お前が言うなら、やってみるか」


 ダーシャンは、全身の力を耳に集中した。そして、耳を羽ばたかせてみた・・・・・・

 しかし、何も起こらない。3mもある巨漢が、耳を羽ばたかせてくらいで、飛べるわけがないのであった。


 「ルシスちゃん。もう勘弁してやってくれ。ダーシャンは、足を負傷している。立っているのも、大変なのだよ」

 「そうでしたね。私としたことが、ついゾウさんを見て、舞い上がってしましました。すぐに治療してあげます。なので、もう一度、耳を羽ばたかせて、飛べるか最チャレンジしてください。私の記憶が正しければ、必ず飛べるはずです」


 私は、子供の頃に見たことがある。大きな耳を持ったゾウが、耳を羽ばたかせて、飛んでいるアニメを・・・。ここは異世界ファンタジーの世界だ。なので、ゾウさんは、必ず空を飛べると、私は確信しているのである。

 私は、回復魔法で、ダーシャンの治療をした。


 「なんだ、この治癒魔法は、バシャーの鋭い牙で、負傷した足を、瞬時で治したぞ」


 ダーシャンの側近のヒッポパーが、驚いている。

 獣人は、魔法が苦手である。獣人は、他の種族に比べて、強靭な肉体とパワーがある為に、魔力を習得せずに、魔力で、更なる肉体強化をしているのである。

 なので、魔法は簡単な魔法しか使えない。それに、ダーシャンの傷はかなりの重傷であり、私の高度な治癒魔法だから、すぐに治ったのであり、ヒッポパーが、驚くのは当然である。


 「ルシスちゃんは、かなりの高度な魔法が使えるのだよ」

 「確かに、この治癒魔法の効力は、絶大だ」

 「私は、魔法が得意なのです。なので、お礼に、ダーシャンさんの耳で、空を飛んでみたいです」

 「治療のお礼は・・・・してあげたいのだが、俺は、空は、飛べないのだよ」

 「ガーーーーーーーン・・・・そんな・・・バナナ・・・」


 私の異世界に行ったら、やってみるぞリストの一つが、ゾウさんの耳で空を飛ぶことだったのに・・・。

 

 「私は、なんの為に、ここにきたのだろう・・・」

 「ガツン」


 ロキさんが、私の頭を殴りつけた。


 「ティグレさん、ダーシャンさん。申し訳ございません。ルシスちゃんは、普段は頼りになる、とてもいい子なのですが、たまにおかしくなってしまうのです。今、その悪い病気が発症しています。私が責任を持って、対処します」


 ロキさんが、ティグレさんとダーシャンに、何度も謝るのであった。

 私は、その横で、空を飛びたいと、駄々をこねるのであった。



 「ルシスちゃん、諦めてくれたかな?」

 「うーーーーーーー」

 「ダーシャンさんは、飛べないの」

 「私の国では、飛んでました(アニメで)」

 「また、別の種族なのかもしれないわ。なので、今回は諦めてください」

 「しゅん」


 私は、ショックのあまりに、落ち込んだのであった。

 
 落ち込んでいる私を尻目に、ティグレさん達は、ダーシャンの屋敷に案内されて、再会の宴を始めていたのであった。

 もちろん、ロキさん、ポロンさんも楽しく飲んでいる。しかし、ロキさんは、私を慰めるために、ずっとそばにいてくれたのであった。


 今日は、獣人の国が、以前のような平和を取りも出した特別な日である。なので、ダーシャンの住む町では、夜遅くまで、祭りのように、にぎやかな夜になったのであった。



 「ジラーフ様、どうしますか」

 「バシャーは、やられてしまった。そして、ティグレが戻ってきた・・・。俺の獣人国家統一の夢が終わってしまうのか」

 「ジラーフ、困っているみたいだな」

 「シャークじゃないか、今日は何のようだ」

 「麻黄薬が完成しそうだ」

 「本当か!」

 「これが、完成すれば、お前は獣人の王になれるはずだ」

 「いつ手に入るのだ」

 「そう、焦るな。完成したら、お前に最優先に渡してやるさ」

 「頼むぞ。これで、俺は、あの2人を超えることができるぞ」

 「ジラーフ様、危険です。麻黄薬は、精神を崩壊して、化け物になってしまうと、言われています。おやめ下さい」

 「問題ない。それは失敗作の話しだ。精神崩壊の副作用がなくなれば、麻黄薬は、この世界を、大きく変えるだろう。麻黄薬をたくさん手に入れた者が、この世界の覇者になるのだ。俺は、獣人の国だけでなく、全ての種族の頂点に立ってやる」


 ジラーフの野望は、大きくなるのであった。
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