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武道大会パート9

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 「ウォーターリーパー、なぜ戻ってきた」

 「申し訳ございません。今日は、お腹の調子が悪いので、精印からのサポートのみに専念します」

 「そ・そ・それなら仕方がないな。サポートを頼んだぞ」



 「ポロンさん、ウォーターリーパーは、逃げたのだと思います。聖霊神の分身である私に、挑む妖精など、いないと思います」

 「そうなのね。それなら、ロイドを倒しますわ」


 ロイドは、岩に隠れながら、氷結の矢を放つ。逃げも隠れもしないポロンさんは恰好の的になる。しかし放たれた氷結の矢は、全て、ポロンさんの炎の矢によって、撃ち落とされる。

 そして、ロイドが、隠れる障害物の岩は、ことごとく、ポロンさんの炎の矢によって、粉砕される。

 もう隠れる場所のなくなったロイドは、弓を捨てて、剣での勝負に切り替える。


 「剣で勝負だ」


 ロイドが叫ぶ。隠れる場所を失ったロイドに、炎の矢を連射撃ちをすれば、勝負は簡単に終わるのだが、お人好しのポロンさんは、勝負を受けることにした。


 「わかりましたわ。剣で勝負しましょう。でも私は剣など持っていないわ。どうしましょう」

 「私が剣になります」


 イフリートは、姿を変えて、燃え盛る剣に変身した。イフリートの剣は、防御シールドを張っているポロンさんでさえ、汗をかいてしまうほどの、熱を周囲に放っている。中距離戦を捨てて、接近してきた、ロイドは、あまりの暑さのために、剣に魔力を送るのをやめて、防御に魔力を注ぐ。

 
 「なんだ、あの燃え盛る剣は、熱くて、これ以上は近づけないぞ」


 ロイドは、あまりの暑さのために、少し後退する。


 「イフリート少し暑すぎですわ」


 ポロンさんは、少しキレ気味で、剣を上下に振って、イフリートに注意をした。

 上下に振られて剣から、高温の熱風が現れて、ロイドを襲う。


 「なんだこの熱風は、防ぐのは無理だ」


 高温の熱風が、ロイドを包み込む。ウォーターリーパーの水魔法で、熱を和らげようと、ロイドを水の玉が包む。しかし、その水も一瞬で高温に変わり、ロイドはおでんのように、グツグツと茹でられる。

 熱湯に茹でられた、ロイドは、熱湯の玉の中で、意識を失う。


 「それまでだ」


 審判が、試合を止める。


 試合が終わった知った、ポロンさんは、氷の矢を、ロイド目掛けて放つ。

 ポロンさんの氷の矢によって、ロイドを包み込んでいた、熱湯が、ぬるま湯に変わる。

 広場には、ずぶ濡れになって、気を失っているロイドが倒れている。

 すぐに救護班が駆けつけて、回復魔法をおこなう。



 「ロイドお兄様が・・・・負けましたわ」

 「魔法だけじゃなく、弓も、剣も桁違いの実力だ・・・あんなのに勝てるわけがない」


 ダミアンの子供のメイドーナ、レノアは、呆然と立ち尽くしていた。


「勝者は、ポロン選手です。勝者を拍手で称えてください」


 しかし、観客席は、鎮まりかえっていた・・・・昨日の爆炎の魔法といい、ロイドを追い詰めてた、炎の矢、そして、最後の、燃え盛る剣の凄まじい熱風。観客達は唖然として、声が出なかったのであった。


 ポロンさんは、試合を終えて、控え室に戻ってきた。姉のヘラが、ポロンさんに声をかける。


 「ポロン、圧勝だったわね」

 「はい。物足りなかったです。次はライアーお兄様の出番です。応援しましょう」

 「ライアーが勝つのは、わかっているので、応援しても無駄よ」

 「お兄様は、強くなられたんですね」

 「違うよポロン。シャノンを買収したのですわ」

 「そうなのですか」

 「そうよ。ライアーがまともに戦って、シャノンに勝てるわけがないのよ」


 ポロンさんは、少し悲しそうにしている。兄のライアンは、ポロンさんにとっては、命の恩人と言ってもおかしくないくらいの、恩を感じている。優しいお兄様が、買収などするなんて、信じられなかったのであった。


 ヘラの言う通り、ライアー対シャノンの戦いは、ライアーが、かろうじて勝利を収めた。しかし、見ていて、退屈な試合であった。お互いに終始、中距離で、弓での戦いを続け、魔力を使いすぎたシャノンが、戦闘不能を宣言して、試合が終わった。


 「次の対戦はポロンかぁ・・・・あれが聖霊神の加護の力だろう。棄権しようかな」

 
 ライアーは、ポロンに八百長のお願いをしようと、企んでいたが、終始ヘラが側にいて、お願いすることができなかったのであった。

 ヘラは、メイドーナを危なげなく倒して、2回戦進出を決めた。


 「さすが、お姉様。素敵ですわ」


 ポロンさんは、広場の側で、ヘラを応援して、ヘラの強さに感銘を受けていた。ポロンさんは、少し悩んでいた。この武道大会の優勝者が、次のエルフの国の王になる可能性が、非常に高いのである。幼い頃から、優しくて、強いヘラ。少し、意地悪だが、ポロンの人生を変えくれたライアー。どちらが、王として、ふさわしい人物か迷っていたのであった。

 ポロンさんは、自分が王になるなんて、これっぽちも考えていない。この武道大会が終われば、また、ルシス達と一緒に冒険に出かけるからであった。

 王になる者は、王になるまで、様々な国の行事に参加して、国の運営を熟知しないといけない。そんな面倒なことを、ポロンさんがするわけが、なかったのであった。

 最後の試合は、レノア対ザックである。レノアが、かろうじて勝つことができた。これで、2回戦に進めた4名のうち、3名はアールヴ王の子供であり、王の面目は保たれたのであった。


 「さすが、王様の子供達です。誰も負けることがなく、2回戦まで進めました」

 「良い結果で満足している。しかし次からは、兄妹対決になるのが、不安だ」

 「やはり優勝は、ポロン王女様ですか。修行の成果で、ずば抜けた強さを披露しています。いくらヘラ王女様でも、あの強さには、勝つのは難しいでしょう」

 「そうだな。しかし、ヘラは姉として、ポロンに全力で戦い、試合の過酷さを伝えようとするのだろう」


 王様と側近は、あえてライアーには、触れないのであった。ライアーの勝利は、あまりにも不自然であり、信用されていないのであった。


 2回戦は、明日の昼から開催される。1回戦が全て終わって、夜のお食事パーティーが開かれる。サラちゃんは、お食事パーティーは出禁を食らっているので参加できない。代わりに、城の食堂で、豪華な食事が用意されている。

 雷光石を手に入れることができたサラちゃんは、機嫌が良かったので、ポロンさんの言いつけ通りに、城の食堂でのお食事会に参加したのであった。

 なので、2日目のお食事パーティーは、無事平穏に終えることができたのであった。
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