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武道大会パート5

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 「ポロンは、大丈夫なの」

 「オーブリー、心配しなくて、大丈夫ですわ。もしもの時は、私が、大会を失格になっても構わないから、助けに行くわ」

 「お姉さま、その時は、私もついて行きますわ」

 「そうね。でもそうならないように、審判がすぐに止めに入ってくれること、願いましょう」


 王族は、平民のエルフからは、絶大なる支持を得ているが、王族血縁者からは、疎まわれている。なので、大会に乗じて、何をされるのかわからないのである。それを防ぐのが、審判なのだが、その審判も買収されているのかもしれないのである。

 なので、バトルロワイヤルに、推薦枠をもつ王族は、参加しないのである。


 「もうすぐ始まりますわ。ポロンは、いつも緊張して、失敗してしまうから、心配ですわ」

 「そうですね、お姉様。緊張して、体が硬くなって、実力を出さずに終わってしまうかもしれませんね」

 
 「只今より、武道大会の出場を決めるバトルロワイヤルを開催します。出場者の方は、入場してください」


 「いよいよね。プリストンが優勝候補ね。兄妹を含めて、20人の支持者を、参加することに成功したみたいだわ。かなりの数的優位なので、ポロンが勝つのは、難しいわ」

 「そうですね。しかもプリストンは、かなりの実力者よね。しかし、勝ち上がったとしても、武道大会の一回戦の相手は、あのロイドですわ。ロイド戦の為に、プリストンは魔力温存に努めて、極力戦闘は控える作戦に出るはずね」

 「そうよ。仲間に戦いは任せて、自分は安全なところで、待機するはずよ」

 「クレア、ヴァル、ペイトン達が、どのような作戦に、出るかがカギですね」


 プリストン以外の3名が、もし共闘したら、プリストン優位の予想も覆るのである。相手陣営の情報を集めて、できるだけ優位に戦うのが、このバトルロワイヤルの戦い方である。


 「なかなか、ポロンが、出て来ませんわ」

 「もうポロン以外の選手は、出て来ているのにおかしいですわ」

 「もしかしたら・・・控室で、何かあったのかもしれないわ」


 「えーーーしばらくお待ちください。出場予定のポロン選手が、まだ控室から出て来ていません。係の者が、確認に行きますので、もう少しお待ちください」

 

 「やはり・・・・何かあったのよ。だから参加は、辞めて欲しかったのよ」

 「お姉様、私が見て来ますわ」

 「いえ、今から行っても手遅れですわ。もしポロンの身に何かあったのならば、私は、絶対に犯人を許さないわ」

 「当然です。首謀者は、プリストンだと思います」

 
 「ポロンが、係の人に担がれて、出て来ましたわ」

 「ポロン・・・・・」


 ポロンさんは、ぐったりとして、係の人に抱えられて、会場に出てきた。意識はあるみたいだが、お腹を押さえて、苦悶の表情を浮かべている。この状態では、戦闘など不可能である。


 


 係の人は、ポロンさんが、会場に出てこないので、慌てて、控え室に探しにきた。そこで、係の人が見たものとは・・・・

 呻き声を上げながら、お腹をおさえているポロンさんであった。


 「大丈夫ですか?ポロン王女様。何があったのですか」

 「プ・・・プ・・・・」

 「誰かに襲われたのですか」

 「プ・・・プ・・・・プリ・・・・・」

 「プリストンに襲われたのですか・・だから、王女様の参加は、取り消すように、俺は、大会委員長に言ったのだ」


 ポロンさんが、参加することになって、大会関係者からも、様々な意見があった。王女様の安全を確保できるのか、特別に護衛をつけるべきとか、控室は別室にすべきだとか、王女様の安全を最優先すべきという意見と、王女だからといって、特別扱いするのは良くない。参加するのなら自己責任だとか、特別扱いすると、他の参加者からクレームがくるとか、との意見があった。しかし、大会の実行委員長が、ダミアンだったので、ポロンさんの特別扱いは、却下されたのであった。


 「ポロン王女様、すぐに医者を呼んできます」

 「プ・・プリ・・・・プリンを食べ過ぎてしまったわ・・・」

 「・・・・・・」

 「ポロン王女様・・・プリンとは、誰のことですか」

 「プリンは、とてもおいしいデザートですわ」

 「・・・・・」

 「襲われたのではなくて、食べすぎたのですか」


 ポロンさんは、久しぶりにプリンを食べたので、ルシスにもらったプリン20個を、1人で食べてしまったのであった。ルシスからは、家族の人に渡すように言われていた。しかし、1個だけ、試合前に食べる予定が、我慢できなくなり、全て食べてしまったのであった。やらかし王女の座は、安泰であった。


 「ポロン王女様、大会はどうしますか?辞退しますか?」  

 「これくらい大丈夫ですわ。でも、まだ苦しいので。私を抱えて、会場まで運んでもらえるかしら」

 「わかりました。それでは、急いで、会場に行きましょう」




 「係の者から、連絡が入りました。今抱えながら、舞台に登場したポロン選手ですが、体調不良のため、控室で休んでいたそうです。しかし大会には参加するとのことです」


 「ポロン・・・本当に大丈夫なの・・・」

 「控室で、何か毒でも盛られたのかしら・・・ポロン無理しないで・・・」



 「あいつ、やっと出てきたな。変な食べ物を、ガツガツ食べて、食べ過ぎで、倒れていたのにな」

 「あんなやつを警戒するのか、プリストン」

 「そうだな・・・全員で、最初に潰す予定が、もう自滅しているからな」

 「そしたら、共闘の話しは、無かったことにするか」

 「そうだな。あんなへっぽこ王女など、もうどうでもいい、共闘の話しはナシだ」


 ポロンさんの食べすぎて、うずくまっている姿を見て、プリストン達は、共闘の作戦を辞めた。


 「それでは、参加者の皆さん広場に、移動してください」


 バトルロワイヤルは、舞台から降りてすぐの大きな円形の広場で行われる。その広場を囲うように観客席がある。武道大会もこの円形の広場で行われる。


 「では、これより、バトルロワイヤルはじめます。今から、5分後に開始のベルがなります。その間に戦闘体制を整えてください」


 バトルロワイヤルは、チーム戦である。5分の準備時間に、自分らに優位な戦闘体制を整えるのである。各チームが仲間同士集まって、戦闘態勢をとる。

 やはり、優勝候補のプリストンを潰すために、クレア、ヴァル、ペイトンは、共闘するみたいである。


 「プリストンどうする。あいつら、やっぱり共闘しやがったぜ」

 「これは、まずいな・・これなら、あのへっぽこ王女でも、仲間にしとけばよかったかもな」

 「それは、無いだろう。あいつ、まだあそこで寝転がってるぜ。試合がはじる前に、もう終わってるぜ」



 「カラン・カラン・カラン・カラン」


 開始のベルがなった。プリストン陣営は、防御を固める作戦に出た。接近戦は不利なので、遠距離での魔法、弓での防衛に備えた。

 一方、3陣営は、プリストン陣営を取り囲むような陣形をとる。数的優位なので、3方向から一気にプリストンを仕留めるつもりだ。


 「始まりましたわ。でもポロンはまだ倒れているわ・・・そのまま倒れた状態で終わってくれたらいいのに」


 その時・・・・



 広場に大きな爆炎が現れて、広場は炎で包まれたのであった。


 「何が起こったの???」

 「ポロンは大丈夫なの・・・」

 
 広場を包み込んだ、大きな炎は、キャンプファイヤーのように、燃え上がり、会場全体を熱気で、覆い尽くすのであった。


 しばらくすると、炎はおさまり、広場の状態を確認することができるようになった。


 「炎がおさまりましたわ。ポロンは大丈夫なの」


 観客席では、突然広場に爆炎が現れて、広場が炎の海と化したので、何か事件が起こったのではないかと、悲鳴の声が飛んでいた。

 広場の炎がおさまり、広場を見てみると、参加者たちが、全員白目をむいて、気を失っていた。そして広場の中央には、お腹をおさえながら、小さな火の玉と、会話をしているポロンさんがいた。


 「イフリート、少しやりすぎたのではないの」



 
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