89 / 453
パーシモンの町パート9
しおりを挟む私は、キュンウサギに抱きついた。なんてフサフサして気持ちがいいのだろうか。赤い大きな瞳も見ているだけで、心が浄化されてしまう。そして、モコモコの長い耳・・・とても気持ちがいい。このままずっとキュンウサギを抱いたまま、この山で、過ごしたいと思ってしまった。
「完全にキュンウサギの虜になってるぜ」
「そうみたいですわ。しばらくは、あのまましといてあげましょう」
「そうだな。私たちは、氷河石を探しましょう」
3人は、私を放置して、氷河石を探すことにした。コチンコチン山の山頂には、大きな洞穴があった。カチンカチン山と同じである。だから、洞穴に氷河石が、あるに違いないと、3人は確信した。
3人は洞穴に入り、氷河石を探すことにした。洞穴は、カチンカチンの山と同じように、とても大きな空洞になっていた。そして、洞穴の中央には、大きいな氷の台座があった。そこはウサクイーンの寝床である。氷の台座の中心に、青く輝く小さな氷の結晶が転がっていた。
「あれが氷河石だろう」
「そうですわ」
トールさんは、台座に転がっている氷河石を、拾って帰ることにした。しかし、トールさんが、氷河石に触れると・・・
私は、キュンウサギを抱きしめながら、至福の時を過ごしていた。あれから何時経過したのだろう。さすがの私も、このままでは、いけないと思い、キュンウサギとしばしの別れを、覚悟したのであった。
私は、キュンウサギの魅了に、かかっていたわけではない。ウサクイーンからキュンウサギに戻ったキュンウサギは、まだ魅了の魔力が戻っていなかったので、私は、魅力にかからずに済んだのであった。
周りを見渡すと、誰もいない。みんなは、どこに行ったのだろうか・・・ふと目をやると、ウサクイーンの氷のティアラが落ちている。氷のティアラはとても美しく光り輝いていた。
「あのティアラ貰おうかな」
私は、ティアラが気に入ってたので、拾って頭に乗せることにした。自分で言うのもおかしいが、とても似合っている。私は、ティアラをつけて、とても気分が良くなり、ウキウキであった。
いやいや、そんなことをしている場合ではなかった。ロキさん達を、探さないといけない。私は、近くにある洞穴が、怪しいと思って、そこへ入ることにした。
洞穴に入ると、そこはかなり大きな空洞になっていて、中央に大きな氷の台座があった。そして、台座の近くで、コチンコチンに凍っている3人を見つけたのであった。
一体、何が起こったのであろうか。私は探索魔法で周りを探ったが、何も感知することはできなかった。それなら、この洞穴に、何かトラップがあるのかもしれない・・・と思い、私は慎重に周りを観察するが、怪しいトラップを見つけることはできなかった。
私は3人に近寄って、周りを調べるが、特に怪しい物ははない。ただ、氷の台座に、綺麗に輝く氷の結晶が落ちていた。これが氷河石だろう。
3人は、氷の彫刻のように、とても綺麗で美しく凍りついてた。このまま芸術作品として、置いておいてもいいだろう。
「早く溶かせ、ルシス」
なぜか、トールさんの悲痛な叫びが、聞こえた気がした。
私は、状態異常の解除魔法を使って、3人の氷化を、解除することにした。かなり高度な氷化だが、すぐに溶けるだろう。
私は、その間に氷河石を拾うことにした。これで、無事に氷河石をゲットできるのである。
「ルシス、危ないぞ」
氷化の溶けたトールさんが、大声で叫ぶ。私はトールさんが、叫ぶより前に、氷河石を触ってしまった。
「ルシス・・・・・・」
「ルシス大丈夫なのか」
「どういうことですか」
「俺たちは、氷河石を触ったら氷化されてしまったのだ。そして、触った俺だけでなく、周りにいたロキもポロンも氷化されたんだ」
「そうなのですか。でも私は触っても大丈夫でした」
「どうなっているのだ」
「それよりも、ルシスちゃんが、頭に付けているのは、ウサクイーンのティアラですね。とても可愛くて似合っていますわ」
「ありがとうです。私もすごく気に入っています」
「もしかしら、そのティアラをつけていると、氷化しないのかもしれない」
「そうだな。それしか考えられないな」
私は、偶然付けたティアラのおかげで、氷化を防ぐことができたのであった。しかし、ティアラをつけないと、氷化を防げないとしたら、バルカンはどうやって、氷河石を使うのであろうか。何か特別な方法があるのであろうか。
私は、氷河石を拾って、収納ボックスにしまった。
「これで、氷河石は、ゲットできたよな。マグマ石はどうする」
「明日、サラちゃんを召喚して、確認することにしよう」
「そうだな。それしかないな」
私たちは、サラちゃんが、マグマ石を、全部食べていないことを願い、パーシモンの町へ戻ることにした。
パーシモンの町に、戻った私たちは、イフリートの機嫌を取るために、飲み屋街に行くことにした。そして、イフリートに、美味しいお酒を、飲ませてあげると伝えたら、嬉しそうに、姿を表して、上機嫌になり鼻歌を歌っていた。
その日は、イフリートに好きなだけ、お酒を飲ましてあげて、楽しい夜を過ごしたのであった。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる